コロナ禍で延びた通話あたりの時間…携帯・固定電話の1日あたりの通話回数と1通話の通話時間(最新)

2024/03/18 02:44

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2024-0312総務省が2024年2月29日に発表した、2022年度(2022年4月1日-2023年3月31日)における固定電話や携帯電話などによる音声通信の利用状況に関する調査結果【通信量からみた我が国の音声通信利用状況-令和4年度における利用状況-】の各値を基に、日本における電話を使った通話の動向を複数の切り口から確認した。今回はそれらとは別の視点から、音声通話の現状と、そこに至るまでの変遷を見ていくことにする。具体的には加入電話(いわゆる固定電話)と携帯電話に限定した、通信回数や通信時間の推移である。

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「通信量からみた我が国の通信利用状況」では直近2022年度分を含め数年分の音声通信における「1契約1日あたりの通信回数」「1通信あたり通信時間」が記載されている。報告書単体では数年分までしかさかのぼれないが、報告書のバックナンバーを探り、同一様式の値が確認できる過去の分までデータを抽出し、グラフを作成する。

まずは「1契約1日あたり通信回数」。要は1契約単位で、1日あたり何回音声通話が行われているか。もっとも古い記録の1994年度では加入電話が3.9回、携帯電話が2.3回。それが何度かの上下を見せながら漸減し、直近の2022年度ではそれぞれ0.8回・0.5回にまで減ってしまう。

↑ 1契約1日あたり通信回数(種類別)
↑ 1契約1日あたり通信回数(種類別)

【電話による通話回数の推移】では携帯電話・PHSの全体としての通話利用回数が減りつつあると言及したが、1契約あたりではすでに今世紀に入ってから減少を続けている。要は1契約あたりの回数は減り続けたものの、契約数そのものの増加により、かつて総通信回数は増えていたことになる。また契約数が増えて1人2台持ちの事例も増加し、その分1契約単位での回数が減ったのも一因(2台の携帯電話を「同時に」使う人は滅多にいない)。さらに今世紀に入ってからはインターネットの普及で電子メールやSMS、各ソーシャルメディアやチャットツールに意思疎通手段が移りつつあるのも大きな要因。

1通信、つまり1回の通話による時間の長さはどうだろうか。通話単位、さらには1日単位での通信時間を算出したのが次のグラフ。

↑ 1通信あたり通信時間(種類別、分:秒)
↑ 1通信あたり通信時間(種類別、分:秒)

1契約1日あたり通信時間(種類別、分:秒)
1契約1日あたり通信時間(種類別、分:秒)

携帯電話・PHSの1通信あたりの通信時間では上下を繰り返しながら漸増、2008年度以降はほぼ横ばい化し、2014年度からは再び増加の動きを示している。

通信時間が伸びている理由は今報告書では明らかにされていないが、固定電話の契約数は相変わらず減っていることから、固定電話で長時間通話利用をするスタイルの人も、携帯電話にシフトした結果の可能性がある。また、先行記事で言及の通り、PHSの契約数も2014年初頭をピークに急速に減少中であり(現状ではゼロに)、PHSは音声通話の安さがセールスポイントだったことを併せ考えると、むしろ固定電話よりPHSの利用者が携帯電話に移行した結果だと考えた方がスマートに思える。

2020年度では加入電話、携帯電話・PHSともに1通信あたりの通信時間が前年度比で大きく延びており、特に加入電話では久々の前年度比でのプラスとなった。これは新型コロナウイルスの流行で在宅時間が延び、単純な(短時間で済む)連絡だけでなく、通常のコミュニケーションを電話の通話で行う人が増えたからだと思われる。翌年の2021年度では加入電話こそ前年度比で減ったものの、携帯電話・PHSでは増加。直近年度の2022年度では前年度比で減少したが、これは2020年度・2021年度で大きく延びたことの反動だろう。

携帯電話・PHSの1通信あたりの時間などは増加を見せているが、1契約1日あたりの通信時間は減少中。固定電話は1通信あたりも1契約1日あたりも通信時間の減少に歯止めがかからない状態。この状況に関して報告書では特に説明は無い。これらのデータからの推測ではあるが、携帯電話・PHSの動向については、長時間音声通話をしている人は利用し続けているが、短時間で済ませていた人は意思疎通の手段を音声通話から電子メールやSMSのような非音声の手段に切り替えているのだろう。長時間利用している人が残っているので1通信あたり通信時間は延びるが、音声通話をする人自身は減っているので1契約1日あたり通信時間は減少していく次第ではある。

なお今件は音声通話関連のデータのみの収録のため、電子メール・SMS・ソーシャルメディアなど非音声によるコミュニケーションの頻度・量の増減を今グラフに重ねることはできない。しかし各サービスの普及や利用率の高まりは、他調査で山ほど裏付けられている。人々のコミュニケーションそのものが減っているのではなく、固定電話・携帯電話の音声通話による減退とともに連動する形で、携帯電話(やパソコンなど)のデジタルコミュニケーションの増加が起きているのは間違いない。

質や様態の変化は別として、人は相変わらず他の人とのコミュニケーションを、つながりの確認を欲する生き物であることに変わりはないようだ。


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