新型コロナウイルスの流行で大きな増加…小中学生の長期欠席者数(最新)

2024/03/12 02:48

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2024-0307多くの子供にとって学校は楽しい場所であり、日常生活の多分を占める居場所でもあり、多くの経験を得る機会である。しかしながら病気やケガ、家庭内の事情で休まねばならない場合も生じてくる。また中にはさまざまな理由で通学そのものを望まず、長期にわたり欠席してしまう子供もいる。今回は多様な理由で長期にわたり学校(小中学校)を休んでしまう子供の状況、「理由別長期欠席児童生徒数」の推移を精査することにした。

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データ取得元は文部科学省発表の【学校基本調査】。ただし同省公式サイト内で発表している部分だけでは細かい点や過去のデータが確認できない。そこで総務省統計局の【e-Stat】から「学校基本調査」をたどり、「年次統計」、そして「統括表」の「理由別長期欠席児童生徒数」から、必要となるデータを用い、各種計算を行っていく。

また、2015年度分以降に関しては長期欠席児童生徒に関する調査が同省の別調査【児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査】に統合されたため、その調査の値を適用している。なお「児童生徒」とあるが、小学生に通う子供は児童、中学生は生徒と呼称している。

公開データには長期間欠席した児童数が記載されているが、その理由として「病気」「経済的理由」「不登校(以前は「学校ぎらい」の名称だった)」「その他」と大別されている。また、1959年以降の値が収録されているが、「長期欠席」の定義が1991年以降「通算30日以上欠席」に改められているため(それまでは50日以上)、その前後で明確には連続性は無い。そこで1991年以降のものについて時系列的にデータを取得し、グラフ化を行う。

まずは最新のものとして収録されている2022年度分について。なお全児童・生徒比では計算結果の表記上0.00%と表記されている項目もあるが(小数第二位までの表記)、具体的人数のグラフに表記している通り、人数がゼロではないので厳密にはゼロ%ではない。

↑ 小中学生の長期欠席者数(人)(2022年度)
↑ 小中学生の長期欠席者数(人)(2022年度)

↑ 小中学生の長期欠席者数(全児童・生徒比)(2022年度)
↑ 小中学生の長期欠席者数(全児童・生徒比)(2022年度)

中学生の長期欠席者、特に不登校率が高いのが気になる。6.05%といえば、30人学級なら2人近く不登校者がいる計算。小学生では比率としては少ないものの、絶対数となると10万人以上の不登校者が確認できる。前年度と比較すると他要因は増減さまざまだが、不登校は小中学生ともに増加しており、これが全体数をも底上げする形となっている。大いに気になる動きではある。

また、既存の区分では区分に当てはまらない「その他」の理由で長期欠席をしている例もここ数年で急激に増加していた。報告書の説明にはこの「その他」に該当するのは

上記「病気」「経済的理由」「不登校」のいずれにも該当しない理由により長期欠席した者。

・「その他」の具体例
 ア 保護者の教育に関する考え方、無理解・無関心、家族の介護、家事手伝いなどの家庭の事情から長期欠席している者
イ 外国での長期滞在、国内・外への旅行のため、長期欠席している者
ウ 連絡先が不明なまま長期欠席している者
エ 欠席理由が二つ以上あり(例えば「病気」と「不登校」)、主たる理由が特定できない者

とある(該当者が小中学生であることに注意)。長期欠席の問題が単純な区分では難しい現状を再確認できる。さらに2020年度以降に限れば「新型コロナウイルスの感染回避」も「その他」に含めているため、後述の通り前年度比で大きな増加を示す形となっていた。直近年度ではこの「新型コロナウイルスの感染回避」が大きく減ったため、結果として「その他」も前年度から減少したのだが。

続いてこれを「長期欠席」の定義変更後の1991年度以降について、その推移を折れ線グラフにしたのが次の図。

↑ 長期欠席児童生徒数(30日以上欠席、小学生)
↑ 長期欠席児童生徒数(30日以上欠席、小学生)

↑ 長期欠席児童生徒数(30日以上欠席、中学生)
↑ 長期欠席児童生徒数(30日以上欠席、中学生)

小学生は病気による長期欠席者が多かったものの、2000年度前後から少しずつ減少。一方で不登校者数は1998年度ぐらいまでは漸増していたが、それ以降は大きな変わりはなく、結果として両者の順位が入れ替わっている。中学生も1998年度前後から病気による長期欠席者は少しずつ減り、小学生とほぼ同じように不登校者は増加し、その後横ばい。また2013年度以降は不登校者の数は漸増していた。

そして2016年度から2017年度以降は不登校を理由とする長期欠席者の増え方は急となり、さらに中学生では2020年度以降、さらに加速がついたように見える。「その他」は小学生では前世紀末頃から増え、2020年度以降は小中学生ともに急増している(直近の2022年度では失速したが)。

これらの動きのうち、2020年度以降で「その他」の値がイレギュラー的な増加を示しているのは、前述の通り「新型コロナウイルスの感染回避」を合算しているから(直近2022年度では前年比でいくぶん落ちたのも、その値が減ったため)。ちなみに「新型コロナウイルスの感染回避」単独では、2022年度は小学生で16155人、中学生で7505人におよんでいる。

確認のため「児童生徒絶対数」ではなく、「各年の児童生徒数全体に占める比率」を算出してグラフ化したが、増減の傾向に違いは無かった。つまり児童生徒数そのものの変化で、欠席者数が急増したわけではないことが分かる。

↑ 長期欠席児童生徒数(30日以上欠席、小学生、小学校児童数に占める比率)
↑ 長期欠席児童生徒数(30日以上欠席、小学生、小学校児童数に占める比率)

↑ 長期欠席児童生徒数(30日以上欠席、中学生)(中学校生徒数に占める比率)
↑ 長期欠席児童生徒数(30日以上欠席、中学生)(中学校生徒数に占める比率)

病気や経済的理由はともかく「不登校」について、1998年度ぐらいをピークとし増加に歯止めがかかり、さらには少しずつ減っていたのは幸いだった。それゆえに、2013年度以降の有意な上昇は大いに気にかかるところではある。ただし「不登校」の解説には

何らかの心理的、情緒的、身体的、あるいは社会的要因・背景により、児童生徒が登校しないあるいはしたくともできない状況にある者(ただし、「病気」や「経済的理由」による者を除く)をいう。

とあり、「その他」の増加と併せ、子供の事情も以前より複雑な状況が生じているのかもしれない。あるいは社会的に、しかるべき事情が存在する場合には不登校を容認する雰囲気が形成されつつあるのだろうか。無論、2020年度以降は、明確な区分として「新型コロナウイルスの感染回避」が登場してもそこまでの認識はなく選びはしないが、何となく新型コロナウイルスの感染リスクを考慮して、長期欠席に至ってしまい、「不登校」にカウントされる人もいるのだろう。



ここからは余談だが、旧定義(50日以上で長期欠席と判断)による値も1998年までは計測されている。そこでそれをまとめたのが次のグラフ(1998年まで)。上記のグラフと連続性は無いことに注意してほしい。

↑ 長期欠席児童数(50日以上欠席、小学生、小学校児童数に占める比率)(1998年度まで)
↑ 長期欠席児童数(50日以上欠席、小学生、小学校児童数に占める比率)(1998年度まで)

↑ 長期欠席児童数(50日以上欠席、中学生、小学校児童数に占める比率)(1998年度まで)
↑ 長期欠席児童数(50日以上欠席、中学生、小学校児童数に占める比率)(1998年度まで)

医学の進歩や経済の発展により、病欠・経済的理由を起因とする長期欠席は漸減している。1980年後半から病欠者率が再び増加している原因は不明だが、公害病・病気に対して慎重になり、子供に無理をさせてまで登校させないようになったこと(子供の健康と学校への登校との優先順位の変化、無理に登校させることで他の子供にも風邪などの病気が感染しかねない「感染リスクに関する防疫関連の知識」の普及)、さらには子供の抵抗力の低下など、複数の要因が想定できる。

一方で気になるのが「不登校」率の上昇。本文の直近分までのグラフとあわせると、1970年後半-1980年前半以降、継続的な増加が確認できる。1998年度ぐらいまで続く不登校者の増加は、本文中グラフのはじまりにあたる1990年代初頭ではなく、この時期に始まったと見てよい。この上昇原因は不明だが、同じタイミングで、いわゆる「ゆとり教育」が始まったことが思い浮かばれる。「ゆとり教育」の段階的な進展時期と、勾配が急になる時期がほぼ一致するのは、偶然だろうか。

あるいは単に、経済の発展とともに選択肢に余裕ができたことによる、その悩みゆえによるものかもしれない。いずれにせよ、残念ながらこのデータだけでは確認をすることはかなわない。


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