日本は418.6兆円の黒字…主要国の対外純資産額(最新)
2024/01/01 02:50
個人ベースではほとんど影響を受けることはない、しかしながら知っておくと世の中の見方が随分と変わってくる情報は意外に多い。その一つが、国単位での資産額。これは概して債務と債権を相殺した、特定の国から他の国々に対する「対外純資産額」で示される。今値は各国の財務状況をかいま見れる切り口の一つとして、よく用いられている。今回はその値について確認をしていくことにする。
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対外純資産の大きい日本、マイナスが大きい米国
日本を含めた主要国の対外資産、対外負債、そしてそれらを合算した対外純資産額だが、これは財務省の【本邦対外資産負債残高内統計表一覧】から、【令和4年末現在本邦対外資産負債残高の概要】で直近のデータを得ることができる。ちなみに対外(該当国が他国に対する)純資産は「対外資産」と「対外負債」を差し引きすることで算出可能(あくまでも数字上の話)。そして「資産」「負債」については名著『金持ち父さん 貧乏父さん』の言葉を借りて簡単に説明すると、
・負債……「財布からお金を取っていくもの」
となる。今件ではさらに国単位で区分した際に「資産…海外に対して色々な形で貸し付けているもの」「負債…海外から色々な形で借り受けているもの」と考えればよい。
さて「令和4年末現在本邦対外資産負債残高の概要」の中から主に「参考3、4 主要国の対外純資産、為替相場の推移」の内容からグラフ化した、主要国の対外純資産、つまり対外資産と対外負債を相殺した純資産(マイナスならば純負債)のグラフが次の図。
↑ 主要国対外純資産(公的+民間、為替レートは年末IFSレートで算出、兆円)(2022年末)
相変わらずアメリカ合衆国のマイナスでの額の大きさが際立っている。また該当諸国内では日本がもっとも多く418.6兆円、次いでドイツが389.1兆円、中国が335.8兆円の順。ただし今件はあくまでも日本円に換算した上での比較であるため、為替レートの変動により大きな影響を受けることも覚えおく必要がある。
なお、これらは民間部門と公的部門を合わせたものの合計。日本に限ればその内訳は【令和4年末現在本邦対外資産負債残高】に記載されているが、大部分が民間による取得である。
何か不測の事態が生じた際、中央銀行や一般政府(公的部門)以外の、いわゆる民間部門の資産が公的部門と同様に国の意志で容易にコントロールできるとは限らない。二世代世帯における、「住宅を保有する親夫婦」と「同居する子供夫婦」の資産を合わせたようなものと考えればよい(親夫婦が子供夫婦の家計から勝手に使い込みをすることは許されない)。しかしながら住宅に居住する単位(=国単位)で資産を考える際には、今件は十分以上に役立つ指針となる。
GDP比で考えてみる
上記データを別の視線で考えることにする。具体的には今件資料の純資産額が、各国のGDP(国内総生産)のどれ程の割合なのか、その度合い。以前は上記資料にその値が併記されていたのだが、今回発表分には見当たらないので、独自に試算することにした。
各国の年ベースにおけるGDPは、IMF(国際通貨基金)のデータベースの中から、「World Economic Outlook Database」経由でGDPを選択して表示、該当国の該当年データを抽出した上で(米ドルベース)、各国の純資産額を算出した年数にあわせた為替レートで円に換算し、GDP比を算出していく。その手法で出来上がったのが次のグラフ。
↑ 主要国対外純資産GDP比(公的+民間、為替レートは年末IFSレートで算出)(2022年末)
香港が相当大きな値を示している。極端な表現だが、香港の場合ならばすべての債務・債権を清算した場合、香港が1年間に稼ぐ総生産額の4.9倍ほどを手にすることができる計算。
無論資産も負債もすぐに換金・償還されるわけではない。「相殺する」計算に深い意味合いは無い(古切手や古銭、美術品を山ほど抱えていても、大金が必要になった時にすぐに換金できるわけではないのと同じである)。他の値も併せ、その国の財政状態を概要的に知る程度のものでしかない、状況の改善を模索するための参考資料程度のものであることに留意しておくべき。同時に、概要的な状況を推し量る指針の一つとして、心に留め置いても損はない値であることも事実ではある。
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