輸入量トップは中国で5.71兆立方フィート…世界各国の天然ガス生産・輸出入量(最新)

2025/02/03 02:43

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2025-0121【アメリカ合衆国のエネルギー情報局(EIA:Energy Information Administration)】【公開データベース】には、主要エネルギー資源の各国における生産量や輸出入量など数多くのデータが収録されている。今サイトではこのデータベースの値を基に、「原油(石油)」「天然ガス」「石炭」の主要3資源の最新状況などを逐次確認し、確認している。今回は現時点における最新の天然ガス関連の動向に関して、いくつかの切り口から状況をまとめていくことにする。

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天然ガスの生産量、消費量…


天然ガスの特性などは【原油は92.5%が中東から、LNGは66.0%がオーストラリアから…日本の化石エネルギー資源輸入先の推移(エネルギー白書)(最新)】で詳しく説明しているが、輸出国と輸入国の間が陸続きの場合はその多くがパイプラインで、海をへだてた場合はLNGに転換された上で輸出入が行われる。LNGとは「Liquefied Natural Gas」つまり液化天然ガスの略で、天然ガスを運びやすく・貯蔵しやすくするため、凝縮して液化させたもの。1959年にはじめて生産され、天然ガスの大規模な海上輸送を可能とした画期的な手法であり、天然ガスの利用を促進させるものとなった。

昨今では天然ガスは環境負荷が小さいこと、埋蔵量が原油と比べて多いこと、そして【世界の天然ガス埋蔵量の急増(JOGMEC)】のレポートにもあるように、技術の進歩によってこれまで「採掘困難、採算が取れない」とされてきた「非在来型ガス」(例えばシェールガス…泥岩の一種である頁岩(シェール)に含まれる天然ガス)の多くが採掘可能となり、「確認埋蔵量」(現在の技術で経済的に採掘できる量。採掘そのものは可能でも採算が取れないものはカウントされない)が増加していることなどから、大いに注目を集めている。

それではまず天然ガス埋蔵量トップ10。EIAでは天然ガスに関して、採掘可能量では2020年分まで世界各国のデータを収録していた(現在では採掘可能量そのものの掲載を取りやめている)。そこで2020年を含む5年間の推移グラフを作成した。

↑ 天然ガス埋蔵量トップ10(採掘可能量、兆立方フィート)
↑ 天然ガス埋蔵量トップ10(採掘可能量、兆立方フィート)

トルクメニスタンの場所。外務省レポートより抜粋トップはロシア、次いでやや下がってイランやカタール、さらに下がってアメリカ合衆国、トルクメニスタン、サウジアラビア、中国が続く。この上位陣は長年変わりがない。

あまり聞きなれない国名として目にとまるのがトルクメニスタン。同国は位置的にはイランやアフガニスタンと国境を接しているが、(今件データでは領域外だが)2009年から2010年にあたり3倍近くの増加が確認されている。これは天然ガスそのものが突然増殖したのではなく、採掘可能な量が増えたことを意味する。同国では元々天然ガスを豊富に有していたが、昨今ではロシアだけでなくその他の周辺国(特に中国)との関係を深め、天然ガスの積極的な採掘・輸出を行っている(【外務省のトルクメニスタンのレポート】)。この積極的な開発意欲が、埋蔵量≒採掘可能量を増加させたと考えられる。

また今データは国単位での区分だが、仮に地域別で再構築すれば、ロシアの次に中東地域が位置する。原油同様にこの地域での埋蔵資源の豊富さを裏付けることになる。

次いで年間の生産量、そしてその生産量上位の国において同国の消費量を重ねたもの。エネルギー政策は国によってまちまちなため、消費量の大きさがエネルギー関連の技術の先端性を意味するものではないことに注意しなければならない。なお生産量・消費量ともに2023年分までが収録されている。

↑ 天然ガス生産量トップ10(兆立方フィート)
↑ 天然ガス生産量トップ10(兆立方フィート)

↑ 天然ガス生産量トップ10(2023年)におけるその国の消費量(兆立方フィート)
↑ 天然ガス生産量トップ10(2023年)における、その国の消費量(兆立方フィート)

埋蔵量トップのロシアは生産量では2位に後退。代わりにトップにはアメリカ合衆国が入っている。このままでは早晩アメリカ合衆国の埋蔵分が底を突いてしまうのではないかとの懸念もあるが、先のレポート「世界の天然ガス埋蔵量の急増」にもある通り、「非従来型天然ガス」の開発が進んでおり(アメリカ合衆国の場合はいわゆるシェールガス)、これが需要を大いにカバーしている。また、このタイプのガスにより国内需要分のかなりを充足できる状況となりつつあり、同国のエネルギー政策に変化が生じていることにも注目したい(原油関連記事でも言及の通り)。

あくまでも天然ガスのみ、しかも単純計算ではあるが、上記10か国において生産量から消費量を引いた結果をグラフ化したのが次の図。単純試算ではあるが、プラスならば天然ガスが余っている、マイナスならば足りない計算になる。

↑ 天然ガス生産量トップ10(2023年)におけるその国の天然ガス過不足単純試算(生産量−消費量、兆立方フィート)
↑ 天然ガス生産量トップ10(2023年)における、その国の天然ガス過不足単純試算(生産量−消費量、兆立方フィート)

ロシアがヨーロッパ各国にガスを輸出している事情、中国が外交的良識を無視してまでガス田に執着する理由、アメリカ合衆国のエネルギー政策の変化、アルジェリアの外交的立ち位置の向上が透けて見えてくる数字ではある。なおサウジアラビアが綺麗な形でプラスマイナスゼロを示しているが、完全に国内消費で充足するように生産量を調整しているのか、何らかの計算上の問題なのかまでは確認できなかった。

天然ガス、輸入と輸出


天然ガスを消費するにあたり国内生産量でまかないきれなければ、他国から調達しなければならない。逆に国内消費量以上の生産がおこなえる国では、無理に上限までの生産をしなくてもよく、余った分を貯蔵したり輸出したりすることも可能となる(ただし一度採掘したものを貯蔵するのには限界がある。【カントリーリスクと「自国内での発電」扱いと】を参照のこと)。そこで輸出・輸入量についてまとめたのが次のグラフ。

↑ 天然ガス輸入量トップ10(兆立方フィート)
↑ 天然ガス輸入量トップ10(兆立方フィート)

↑ 天然ガス輸出量トップ10(兆立方フィート)
↑ 天然ガス輸出量トップ10(兆立方フィート)

輸出量は、埋蔵量では最大・生産量では第2位を誇るロシアがトップ。原油同様に天然ガスの価格もまた、ロシアの財政を大きく左右しうる要因であるのが分かる。ロシアによるウクライナへの侵略戦争においては、輸出先のヨーロッパ諸国に対する有効な切り札として用いられている(直接切るのではなく、大きなプレッシャーとして、存在するだけで意義がある類の札)。そしてアメリカ合衆国、カタール、ノルウェー、さらにはオーストラリア、カナダが続く。アメリカ合衆国の大幅な増加ぶりは、言うまでもなくシェールガスによるもの。

一方輸入国ではグラフの範囲外だが、生産も大量に行っているアメリカ合衆国が、2010年時点ではトップだった。ところが2011年以降はそのアメリカ合衆国を追い抜く形で、日本がトップについていた。これはいうまでもなく、先の東日本大震災による電力事情・エネルギー政策の激変・迷走に伴い、天然ガスを用いた火力発電所の需要が急上昇したからに他ならない。カントリーリスクの点では間違いなくマイナスであり、憂慮すべき事態ともいえる。

そして昨今では中国が経済成長に合わせる形で輸入量を急速に増やし、2018年以降はトップについている。生産は増加しているが、消費量の増加度合いがそれを上回るスピードであるため、足りない分を輸入で補っている状態に違いない。

そして日本、アメリカ合衆国、ドイツが続く。アメリカ合衆国はシェールガスの生産により輸出量を大幅に増やしているが、それでもなお大量の輸入を継続している。



上記にある通り天然ガスは環境負荷が小さいことや扱いやすいこと、技術の進歩で運搬が容易になり、採掘量も増加しつつあることから、注目を集めている。特に日本では震災以降、火力発電所の燃料として石炭とともに需要が急増していた。

天然ガスとて商品には違いなく、タダでは輸入できない。そして常に100%安全確実に必要量が輸入できる保証は無い。さらに自国での埋蔵・生産量と照らし合わせて考えてみれば、いかに細い綱をわたっている状態なのか、理解できよう。


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