1人あたりではカナダ、アメリカ合衆国、韓国、日本、フランスの順…主要国の電力消費量の実情(最新)

2021/11/30 03:16

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2021-1107先に【トップは中国95.3億トンで全世界の28.4%、次いで米国49.2億トン…世界の二酸化炭素排出量比率(最新)】で主要国と世界全体の二酸化炭素の排出量の状況を精査したが、記事執筆の際に関連する事項として、主要国の電力消費状況を確認した。その一次データとなる国際エネルギー機関(IEA:International Energy Agency)が発行している調査資料「Key World Energy Statistics」について、【分析記事一覧ページ】で確認したところ、最新版の「Key World Energy Statistics 2021」(KWES)が公開されていることが判明した。そこで今回は「KWES 2021版」とし、最新データを基に主要国(当方で任意選択)の電力消費量を確認し、状況の把握を行うことにする。

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一人あたりと国全体


まずは各国一人あたりの電力消費量。「日本の7935kWh/人・年ってどれくらいなのだろうか?」と思う人も多いかもしれない。これは通常の世帯が一年間で消費する電力を、世帯人数分で割った電力量と考えればほぼ間違いがない(ちなみにこれは年ベースなので、約21.7kWh/人・日となる。単純に人口で割っただけなので、実際には民間・企業・工場などの消費電力まですべてまとめて平均化してあることに注意)。【60年あまりにわたる電気料金の推移(最新)】や、手元にある電気料金の領収書の束と見比べてみると、理解度も深まるはず。

↑ 主要国の一人あたりの電力消費量(kWh/人)
↑ 主要国の一人あたりの電力消費量(kWh/人)

カナダの電力消費量が多いのは、同国が自然資源に恵まれており、電力料金が極めて安価なため。特に水資源に恵まれ、発電量全体のうち水力発電が占める割合が半数を超えている(【中国は66.5%が石炭、フランスは71.0%が原子力、日本は35.7%が天然ガス…主要国の電源別発電電力量の構成実情(最新)】参照のこと)。余剰エネルギーを他国に輸出できる余裕があるほどだ。そのお隣のアメリカ合衆国の電力消費量が多いのはいわずもがな(工業の発展を電力消費が支えている。「エネルギーは国力」を体現した国といえる)。逆に中国やインドは人口そのものが極めて多いのと、都市化・電化エリアの国全体に占める割合が「他国と比べて」少なく、必然的に「一人あたりの」電力消費量も小さなものとなる。

また直近数年における経年変化をみると、新興国における増加が著しい。これはそれらの国の経済・生活水準が向上することで、必然的に消費電力が増加したのを起因としている。

これを国単位で見ると、様相は一変する。国の並びをあえて一つ目のグラフと同じにし、国全体の電力消費量を直近3年間となる2017年から2019年、そして20年前の1999年分とを併記した上で作成したのが次のグラフ。1999年の値は一部の国では空白となっている。

↑ 主要国の国別電力消費量(億kWh)(1999年、2017-2019年)
↑ 主要国の国別電力消費量(億kWh)(1999年、2017-2019年)

・直近では電力消費大「国」は中国、アメリカ合衆国、インド、日本、ロシア。

・電力消費量は中期的には伸びる傾向にある。1999年との比較では多くの国で増加。しかし伸び率は国それぞれで、カナダや日本、イギリスなどのようにほとんど動きが無い国もある。景気動向の横ばい化に加え、省エネ化などの技術革新も大きな要因。

・中国の伸びは極めて著しい(20年で6倍以上、直近年の前年比でも4.6%増)。インドがそれに続く伸び。

などの特徴が挙げられる。

消費量変化を確認してみる


次に示すのは最新データとなる2019年分を前回年2018年分と比較し、その変移を計算してグラフ化したもの。

↑ 主要国の国別電力消費量(前年比)(2019年)
↑↑ 主要国の国別電力消費量(前年比)(2019年)

中国の伸びが著しい。インドやブラジル、ロシアも伸びている。一方、日本は2011年において震災の影響で主要国中最大の下げ幅を示し(マイナス6.2%)、2012年でも引き続きマイナス(マイナス1.4%)を呈したが、その後は小幅な上下の動きを繰り返している。2019年ではマイナスとなった。

今件取り上げた対象国の中では、直近分の2019年に限らず、中国やインドにおいて近代化に伴う電力消費量の増加が著しい。直近10年に限り、気になる国に厳選した上で電力消費量の推移を次のグラフに記したが、他国がほぼ横ばいなのに対し、インドが増加、中国がそれ以上に急カーブを描いて増加しているのがはっきりとつかみ取れる。

↑ 主要国の国別電力消費量(億kWh)(2010-2019年)
↑ 主要国の国別電力消費量(億kWh)(2010-2019年)

そしてこれら4つのグラフを見比べることで、例えば

「国単位で電力消費量を考えるのはナンセンス。人口が多いから消費量も多いのは仕方がない」

「世界規模で電力問題を考える場合には、結局電力をどれだけ使うかが問題。施策を同じくする、国単位の消費で考察すべき」

「一人あたりの消費量が現時点で少ない中国で、すでに全体ではこのレベルに達しているのなら、アメリカ合衆国やカナダのような消費水準に達したらどのような事態が発生するのだろうか?」

など色々な考えが頭に思い浮かぶ。今後ますます重要視される国際的なエネルギー問題において、今回の各表が、問題を解くカギの一つとなるに違いない。


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