諸外国の検索エンジン利用性向(2012年発表版)
2012/12/31 16:00
先日12月25日に掲載した【世界主要国のテレビ視聴時間(2012年発表版)】でも解説しているが、イギリスの情報通信庁は2012年12月14日までに、同庁の定期的発刊レポートである「International Communications Market Report」の最新版【International Communications Market Report 2012】をウェブ上に公開した。発信元がイギリスなのでイギリス中心の内容ではあるが、有意義なデータが多数盛り込まれ、精査の価値ある内容となっている。今回はその中から「欧米諸国を中心とした主要検索エンジンの利用性」を見て行くことにする。
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今やインターネットを利用する際に欠かせないサービスとなった「検索エンジン」だが、現時点ではGoolge・Yahoo、そして【Googleのシェアは約三分の二…アメリカにおける検索シェア】などでも触れているようにMSN/Windows Live/Bingが上位シェアを占めている。そこでその3項目に絞り、アクティブリーチ(接触率。この場合、集計対象期間である2012年8月の一か月以内に一度でも利用した人の比率)を算出したのが次のグラフ。自宅や勤務先を問わず、そしてブラウザ経由での使用以外に、アプリによる利用も含めた結果である。
↑ 主要検索エンジンの利用性向(2012年8月、自宅・勤務先経由、アプリ経由含む)
ご存じの通り他国事情と異なり日本では、ヤフーの方が利用性向が高い。これは多分に日本における特殊事情(ブランド志向の強さ。プロバイダYahoo! BBの普及率。対抗エンジンのGoogleと比べて多種多様なサービス(特にオークション)を提供している。サービス立ち上げに4年半の開きがあり(ヤフージャパンは1996年1月、Googleの日本でのサービス開始は2000年8月)、その間に多くの人が「検索エンジンはヤフー」という刷り込みを受けた。ヤフーは多くの他ポータルとも手を結んでいた。などなど……)による。ウェブサイトの検索回りの分析でも、「初心者はヤフーを使うことが多い」とする結果が出ているのも、この「検索エンジンはヤフー」という刷り込み効果によるところが大きい。居酒屋における注文での定例パターン「とりあえず、ビール」が「とりあえず、ヤフー」になったと考えれば分かりやすい。
その日本以外では主要国すべてにおいてGoogleが最優位の立場にある。そしてヤフーが続く……と、かつてなら続くところだが、昨今の欧米での報道に耳を傾ければ分かるように、昨今では米ヤフーをはじめとした各国のヤフーによるサービスの足踏み状態、MSN/WindowsLive/Bingの攻勢(シェアは減少しつつあるがいまだにトップを見せるインターネットエクスプローラーで、大抵の場合初期利用設定されているのは強い)もあり、ヤフー以上にMSN/WindowsLive/Bingの利用性向が高い国も多い。むしろヨーロッパ諸国ではヤフーは完全に三番手に甘んじている。
検索エンジンの利用は「何を使うか」では無く「何のために使うか」が一義的なもの。ヤフーでもGoogleでもMSN/WindowsLive/Bingでも、自分にとって一番使いやすく、求めていた結果が出やすいものを使い続ける。一回ごとに個々のサービスをローテーションで使う人は居ないだろう。この利用スタイルの構図は携帯電話会社のそれに似ているところがある(ナンバーポータビリティで企業間の行き来はしやすくなったが、操作系の類似間もあわせ、よほどのメリットでもない限り、容易に行き来をする人は少ない)。
【Yahoo! JAPAN、検索サービスでグーグルの検索エンジン・検索連動型広告配信システムの採用などを発表】で伝えているように、検索回りの基本ロジックについてGoogleのそれを採用したヤフージャパンだが、ツイッターのツイートをリアルタイムで検索できる「ヤフーリアルタイム検索」など独自のサービスも提供し、既存の各種連動サービスの充実化も継続している。日本では単なる「検索エンジン」ではなく「検索エンジンも含めたオールマイティなポータルサービス」として、引き続き圧倒的なシェアをヤフーは占めている。2010年後期の導入から2年が経過しても、シェア動向にほとんど動きが無いことからも、それは裏付けられる。
ヤフージャパンがGoogleのシステムを採用した際には「独自性が薄れる」と危惧する声もあった。しかし現状では逆に、むしろ「同じような結果が出るのなら、今まで使い慣れてきたヤフーのままで良い」「検索部分でほぼ同じ精度であれば、多種多様なサービスが付帯しているヤフーの方が良い」というプラスの面も少なからず見えている。
Googleにとっても自社エンジンの浸透、そして提供契約上のビジネスの点ではプラスになるため、この関係を破棄する大きな理由は見当たらない。ヤフー(ジャパン)が検索エンジンシェアで優位にあるという、世界的に見た日本の特異性は、何か大きな環境変化がない限り、しばらくの間継続するだろう。
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