高齢者の心の支えは配偶者と子供(高齢社会白書)(最新)
2020/09/07 05:18
内閣府は2020年7月31日、2020年版の高齢社会白書を発表した。日本の高齢化の現状や将来予想をまとめたもので、日本の社会情勢を推し量る重要な資料を多数盛り込んだ、注視すべき白書の一つである。今回はその記述内容をトリガーとして「高齢者にとって心の支えとなる人物」について見ていくことにする(【高齢社会白書一覧ページ】)。
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今件は直近白書では掲載されていなかったものの、過去の白書で解説されており、その一次データとなる内閣府の「高齢者の生活と意識に関する国際比較調査」の2010年版を参照したもの。同調査は5年おきに実施されており、現時点では2015年版が最新となるが、その版では該当項目の調査が行われておらず、今回確認する2010年版の値が最新となる。
該当調査は60歳以上の男女を対象にしている。日本において高齢者の心の支えになる人物を挙げてもらったものだが、高回答率を示したのは「配偶者・パートナー」と「子供」。この2項目のみ過半数を超えている。
↑ 心の支えとなっている人(日本、複数回答、60歳以上対象)(2010年)
ドラマや漫画の描写、さらには実体験で「老夫婦が孫を可愛がる」情景はよく見かけるが、「孫」との回答は2割にも満たない。愛おしく思う対象ではあるものの、心の支えとはまた違った感覚のようだ。
同じ質問を主要5か国、具体的には日本以外に韓国・アメリカ合衆国・ドイツ・スウェーデンにおいて行い、その回答を併記したのが次のグラフ。
心の支えとなっている人(60歳以上、複数回答、項目視点)(2010年)
「配偶者・パートナー」と「子供」が大きな支えになるとの点ではどの国でも同じだが、例えば韓国ではそれ以外への依存心が非常に低い、逆にアメリカ合衆国は他の人達も大いに心の支えになるなど、国ごとの違いがはっきりと表れており興味深い。特にアメリカ合衆国ではもっとも支えになっているのが「子供」、次いで「親しい友人・知人」であり、その次に「配偶者・パートナー」がついている。日本はスウェーデンのパターンに近いが、配偶者・子供以外の回答率が低めに抑えられている。
このグラフの表記の仕方を変えてみると、各国における各対象人物に向けた依存の度合いがはっきりと見えてくる。
↑ 心の支えとなっている人(60歳以上、複数回答、国別)(2010年)
ある意味もっとも身近な存在である「配偶者・パートナー」はアメリカ合衆国が一番低く、逆に「子供」は一番高い。その他にもアメリカ合衆国は「配偶者・パートナー」以外の全項目で対象国内では最高値を示しており、心の支えの対象にする人が「身近にいる人全部」的な感が強いのがあらためて確認できる。韓国はその逆で「ごく身近な身内以外は当てにならない」との思いがあるようだ。日本はスウェーデンのパターンに近いが、上記の通り、配偶者や子供以外の回答率が低めとなっているのがあらためて確認できる。
どれだけ自分の周囲の人物が当てになるかは、個々の周辺環境以外に、各国の国レベルでの社会福祉制度、社会的慣習、宗教的な概念など多様な項目で判断される。どの国の状態がよい悪いとの判断はできないが、「心の支えとして認識できるほど、普段から親密な付き合いをする習慣がある」と考えれば、アメリカ合衆国のような「年を取っても心の支えとなる人が多方面に存在する」という状態は、うらやましい話なのかもしれない。
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