「高齢世帯ほどお金持ち」は当然?…世帯主の年齢階層別貯蓄額推移(高齢社会白書)(最新)
2023/12/13 02:41
内閣府は2023年6月20日付で、日本の高齢化社会の現状を各公的調査などの結果を絡めて解説した白書「高齢社会白書」の最新版となる2023年版を発表した。今回はその白書の中から、「年齢階層別の貯蓄額の違い」などについて確認をしていくことにする。ある意味で言葉通りの「世代間格差」の現状を知ることができる結果となっている(【高齢社会白書一覧ページ】)。
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中年層で増える負債、定年退職で増える貯蓄
一般的には年上の人ほど働いている(いた)累計時間は長くなり、貯蓄する機会も多くなる。例えば毎月同じ額だけ貯蓄をして引き出していなければ、3か月後より3年後の方が貯蓄額は増える。世帯主の年齢で区切った上で、各年齢階層ごとの貯蓄額を見ても、貯蓄は歳が上になるに連れて増えていくのは道理ではある。
↑ 貯蓄・負債、世帯年収、持家率(二人以上世帯、1世帯あたり、高齢社会白書(2023年版)、世帯主の年齢階層別)
30-40代で負債が大きな値を示すのは、【29歳以下で増えるローンでの住宅購入、40代までは純貯蓄額マイナス…年齢階層別の収入や負債の推移(最新)】などで解説している通り、住宅ローンの負担によるもの。同じタイミングで増えている「持家率」も、それを裏付けている。50代に入ればローン完済組が増えるために全体平均としての負債額は減り、さらに世帯年収も増えるため、金銭的なプレッシャーは減少していく。
60代に至ると定年退職組が出てくるために世帯年収は減るものの、退職金などの上乗せで貯蓄額は増加する。持家率も9割を超え、家賃による家計への負担も極少化される。単純な貯蓄額の差異に加え、持家率の高さが、高齢層の金銭的余裕の裏付けとなる。
高貯蓄額層が多い高齢層
全般的には高齢世帯ほど金銭的に余裕があるように見える。しかしこれは全体平均としての値。実際には多様な世帯が存在し、貯蓄が100万円に満たない世帯もあれば、4000万円を超す世帯もある。そこで二人以上世帯のうち「全世帯」、そして「世帯主65歳以上に限定した世帯母体」(=原則的に定年退職後の世帯主がいる世帯)それぞれで、貯蓄の現在高分布を確認したのが次のグラフ。
↑ 貯蓄現在高階層別世帯分布(二人以上世帯、高齢社会白書(2023年版))
↑ 貯蓄現在高階層別世帯分布(二人以上世帯、高齢社会白書(2023年版))(面グラフ)
ちなみに二人以上世帯の全世帯での平均値は1880万円・中央値は1104万円。世帯主の年齢が65歳以上の世帯では平均値2376万円・中央値1588万円。
やはりひと目で、「世帯主65歳以上に限定した世帯母体」の分布において「4000万円以上」世帯の比率が高いのが確認できる。これは退職金による上乗せによるところが大きい。面グラフにすると、高齢世帯母体で貯蓄額が多い世帯が、全体よりも多い傾向にあることがはっきりとわかる。具体的には1400万円以上で「全世帯」と「世帯主65歳以上に限定した世帯母体」の値の大小がほぼ逆転し、2000万円を超えた時点で差が一段と大きくなる。
貯蓄を費やして生活していく高齢層
高齢層の方が平均的な貯蓄額だけでなく、高額貯蓄層の率が高い。これは前述の通り「経年蓄積」によるものであり、同時に【年金生活をしているお年寄り世帯のお金】などで示されている通り、年金だけでは不足する生活費のための取り崩し用の蓄財に他ならない。
また公的年金や恩給を受給している高齢者世帯では、その多くで収入源が公的年金のみとなっている。そのため、事前の備えが前提となる世帯も多い。貯金などの取り崩しは収入ではない。
↑ 高齢者世帯の家計・収入面(円)(2022年)(再録)
↑ 公的年金・恩給を受給している高齢者世帯における公的年金・恩給の総所得に占める割合別・世帯数の構成比率(高齢社会白書(2023年版))
一方で、若年層の貯蓄が少なく、金銭的に余裕が無いのもまた事実。特に40代まではローンもかさみ、家賃負担も大きい。その上可処分所得の漸減などもあり、50代までは貯蓄性向が高いとの調査結果も別調査(【「アリ」「キリギリス」どちらを選ぶ? 全体では「キリギリス」優勢だが…(最新)】)で見い出すことができる。
↑ 将来に備えるか、毎日の生活を充実させて楽しむか(年齢階層別)(2022年)(再録)
お金に関する(特に消費関連)アプローチにおいては、各年齢階層の事情への現状の確認と、それに基づいた十分な配慮が求められる。各年齢階層のお財布事情、将来に向けた金銭感覚は「数十年前」と「現在」では大きく異なることに留意しなければ、大きな空振りに終わることは容易に想像できよう。無い袖は振れないものである。
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