米教師が見た、デジタル技術の浸透で変わった生徒達の学習スタイル

2012/11/22 07:00

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パソコン操作をする子供アメリカの調査機関【Pew Research Center】は2012年11月1日、インターネット検索が子供達にどのような影響を与えているのかについて、教師の立場から見た調査結果【How Teens Do Research in the Digital World】を発表した。教師の立場からではあるが、生徒とインターネット検索との関係が垣間見られる興味深い報告書となっている。今回はその中から、インターネット検索に限らずデジタル技術全体の浸透で、生徒達の学習スタイルにどのような変化が生じたと「教師が認識しているか」について、見ていくことにする。



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今調査は2012年3月7日から4月23日にかけて2462人のアメリカ在住の教師に対し、インターネット経由で行われている(2万2590人の教師に電子メールを用いてウェブ上で回答するよう依頼を行い、2462人が回答している)。全アメリカの教師の分布に即したウェイトバックは行われていないが、極力偏りなくデータを取得するよう、地域、教師自身の教鞭期間をはじめとした各種パラメータ、地理的状況、学校の種類などにおいて配慮がなされている。

先に【米教師のほぼすべてが実感する「インターネットで生徒は新しい検索・情報の活用技術を身に着けた」】で記したように、アメリカの教師たちは検索エンジンの利用普及で、生徒達が情報検索の面で大きな便益を受けていると認識している。

↑ インターネット検索に関する分析に対する見解
↑ インターネット検索に関する分析に対する見解(再録)

それでは検索に限らず、デジタル技術(≒インターネット)の浸透で、生徒たちは学習面でどのような絵強を受けているのだろうか。7つの分析を提示し、それに同意するか反対するかで答えてもらったのが次のグラフ。

↑ デジタル技術の浸透が生徒の学習に与えた影響に関する分析への見解
↑ デジタル技術の浸透が生徒の学習に与えた影響に関する分析への見解

インターネットの特性の一つである「不特定多数の人への情報拡散の可能性」は、生徒達にとっては「成し得たもの」の披露の場が広まったことに直結する。これまでならせいぜい学校内や学校周辺、そして賞を獲得すればその賞周りの展示でのお披露目位が関の山だったのが、インターネットを使うことで全世界に向けて発信できる。例えば【青いザリガニ、マジですぜ】のように、珍しい成果を披露することで、全世界に注目される可能性もある。

情報の発信・受信の幅が広がることによる利点以外にも、デジタルメディアの表現力の豊かさで生徒が便益を受けているとする意見は多数に及ぶ。またそれをきっかけに、生徒自身の潜在力が掘り起こされたり、協調性が増したとの意見にも肯定者は多い。

一方であまりにもの魅力、機能の高さから、その機能自身に振り回されるがごとく没頭してしまい、学問自身を怠ってしまうリスクへの懸念も目に留まる。大人とて否定はできまい。

この「デジタル技術による生徒の学習への影響」だが、教師の立ち位置やそこから連なる生徒の状態により、小さからぬ違いが見えてくる。

↑ デジタル技術の浸透が生徒の学習に与えた影響に関する分析への見解(教師の属性別)(「強く同意」の回答率)(一部)
↑ デジタル技術の浸透が生徒の学習に与えた影響に関する分析への見解(教師の属性別)(「強く同意」の回答率)(一部)

学習のモチベーションを高めさせてくれたとの意見には、中学教師や低所得層の生徒を受け持つ教師、美術音楽教師が高い値を示している。中学・低所得は生徒が普段あまり触れる機会の無いデジタルツールに触れることで、意欲的に勉強をするようになる場面を多分に見ているからだろうし、美術音楽はマルチメディア機能をフルに活かせるからと考えれば道理が通る。科学教師もそれに近い効用を得られるはずだが、回答率は低め。

またこれも含め、数学・科学教師は全般的にデジタル技術による恩恵を、生徒が受けているという回答率は低めに出ている。自分が担当する科目において、生徒が得られる恩恵はさほど多くないからだと思われる。直上にもある通り、特に科学部門においては映像を充実させることで、科学への興味関心のきっかけともなりうる。それだけに、今後のコンテンツの充実次第で大きな値の変化が期待できよう。



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