「持家無し」の人の間に広まる「マイホームはいらない」傾向(最新)
2024/04/01 02:37
「一国一城の主」との言い回しに代表される通り、世帯持ちにとって住宅保有は一つの夢である。しかしその取得価格は半端なものではなく、駄菓子屋で小銭と引き換えにお菓子を買うがごとく、気軽に購入できる類のものではない。大抵の世帯では一生に一度の買物となる。一方、住宅は保有せずに賃貸で済ますライフスタイルも増えているとの話もよく耳にする。そこで今回は金融広報中央委員会の「知るぽると」が毎年調査・結果の公開をしている、家計の金融行動に関する世論調査の公開データをもとに、「持家無しの人が住宅を調達しようとする意志と予定時期」について現状や経年変化を確認する(【家計の金融行動に関する世論調査】)。
スポンサードリンク
単身世帯に多い「持家はいらない」
世帯全体に占める持家率は増加する傾向にある。しかしこれは世帯主の平均年齢の上昇に伴うもので、特定世代(中年層以下の若年層)における持家率はむしろ減少傾向にある(【年齢階層別の持家と借家の割合(最新)】)。
今件調査の直近値(2023年)では、単身世帯は33.5%、二人以上世帯では68.9%が持家に住んでいると回答している。単身世帯の方が圧倒的に持家率が低い、逆にいえば借家住まいの人が多い。なお今件における「持家」とは「本人が購入した家屋マンション」「相続または贈与を受けた持家」のいずれかを意味する。
↑ 持家率(世帯種類別)(2023年)
それでは現在持家に住んでいない人、つまり借家住まいや親などの家に同居している人は、将来自家を取得する予定はあるのだろうか。自前で購入する以外に、親などから相続を受ける可能性もあるため、それも含めた回答をしてもらったのが次のグラフ。
↑ 非持家世帯における自家取得予定時期(2023年)
予算の都合や必要性も合わせて考えれば当然の話ではあるが、二人以上世帯の方が(現在非持家世帯でも)持家取得意思が強いのが分かる。また、単純計算で確率が2倍に増えることから、「持家は相続で譲り受ける予定」との意見も、二人以上世帯の方が多い…が、3倍以上の値は単純な確率論では説明ができない。「単身で生活している子供に対してではなく、夫婦で世帯を持つ子供にこそ、住宅を相続させたい」とする親側の意図がすけて見えてくる。
興味深いのは単身・二人以上世帯間で「相続予定・時期不明」と「目下考えていない」を合わせた比率に大きな違いが見られないこと(3.1%ポイント)。「取得予定無し」はノー、「何年以内」は明確なスケジュール付きのイエスのため、「取得できる・できない・しない」の差はあれど、「住宅取得について直近で深く考えたことは無い、考えていない」との人は単身・二人以上世帯ともに同程度の比率となる。
取得意欲の経年変化を見ると
これをデータが残っている2007年以降の推移でみると、特に持家の無い単身世帯で住宅取得意欲が減少しているのが確認できる。
↑ 非持家世帯における自家取得予定時期(単身世帯、2014年以降は30年以内・40年以内・40年超を統合)
↑ 非持家世帯における自家取得予定時期(二人以上世帯、2014年以降は30年以内・40年以内・40年超を統合)
「相続予定」「目下考えていない」は多少のばらつきがあれどそれぞれの世帯種類内ではあまり変わらず、具体的年数を決めて取得する意向の値が少しずつ減り、その分「取得予定無し」が増えているのが分かる。特に単身世帯の持家取得意向の減り方は著しく、2007年から2023年の間に「取得予定無し」の人が32.2%ポイントも増加している。
なお2020年の二人以上世帯において「3年以内」が大きく増えているが、これは住宅関連環境に大きな変化が生じたのではなく、新型コロナウイルス流行の影響で二人以上世帯向け調査の方法が変更された(従来は訪問依頼・訪問回収がメインだったが、2020年では郵送依頼・郵送回収のみとなった)のが影響しているものと考えられる。もちろん新型コロナウイルス流行により在宅勤務がメインとなり、自家取得の気持ちが強まった可能性も否定できないが。2021年以降もその傾向が継続しているのは、やはりさらに調査方法が2021年以降においてインターネットモニター調査法に変更されたからかもしれない。
相続による取得以外では、自宅は自前で手に入れるしかない。相場は比較的安定しているとはいえ、可処分所得の減少や雇用の安定度を考え、取得をあきらめる人が増えており、その実情・心境が反映されていると考えれば、今件グラフの動向も納得がいくものだ。
■関連記事:
【30代で住宅ローンの重荷が…二人以上世帯の貯蓄・負債・純貯蓄高(最新)】
【高齢者の7割強は「子の世話無しでいいから、財産は自分で使い切る」】
【60年あまりにわたる民間・公営賃貸住宅の家賃推移(最新)】
【賃貸住宅の空き家率推移(最新)】
【高齢者は63.0%が6年以上と長期居住傾向…賃貸住宅の平均居住年数(2021年6月発表分)(最新)】
スポンサードリンク