タブレットやスマートフォンのニュースにおける米広告事情

2012/11/04 07:00

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ニュース記事の広告2012年10月1日にアメリカの調査機関である【Pew Research Center】が発表した、同国におけるモバイル端末とニュースに関する報告書【Future of Mobile News】だが、普及著しいモバイルメディアと、利用者の行動様式、とりわけニュース取得関連の動きを知ることが出来る。今回はその中からモバイル端末(タブレット機やスマートフォン)によるニュース閲覧者と、その記事に付随して掲載されている広告との関係について見ていくことにする。



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今調査の最新部分は2012年6月29日から8月8日にかけて、RDD方式で選ばれたアメリカ国内に住む18歳以上のに対して行われたもので、有効回答数は9513人(2012年の国勢調査を元にしたウェイトバック済み)。インターネットを使った回答だが、当事者が接続環境を所有していない場合は調査会社から端末と接続環境が提供される。また、調査母体のうちスマートフォン・タブレット機のいずれも保有していない人4875人は、保有・非保有の設問時点で回答を終了させられている。なおタブレット保有者は2013人(21.2%)、スマートフォン保有者は3947人(41.5%)(双方の重複あり)に達している。

先に【米スマートフォン・タブレット機所有者の利用スタイルの違い】で記した通り、モバイル機、今件ではタブレット機・スマートフォンの保有者では、週一以上で自前の端末を使ってニュースを取得している人(ニュース取得者)は6割を超えている。

↑ 週一以上利用者率(タブレット・スマートフォン個々の保有者限定)
↑ 週一以上利用者率(タブレット・スマートフォン個々の保有者限定)(再録)

このニュース取得者に「記事ページに掲載されている広告についてどのようなリアクションをしているか」を尋ね、「しばしばしている」「時々している」人の割合をグラフ化したのが次の図。ちなみに「広告に気が付く」「広告をクリックする」「クリックした」の順にプロセスは進むので、「クリックした広告先で買い物をする」人は当然「広告をクリック」しているし、その前提となる「広告に気が付」いてもいる。

↑ 広告周りで次の行為をしばしば、あるいは時々するか(週一以上で個々の端末からニュースを取得する人限定)
↑ 広告周りで次の行為をしばしば、あるいは時々するか(週一以上で個々の端末からニュースを取得する人限定)

「時々」以上の頻度、つまり日常的にそれなりに広告に気が付く人は約半数。しかし広告をクリックする人は5-6%に過ぎず、クリックした先のサイトで実際に購入行為をする人は1%を切る。数字的にはややタブレットの方が優位にあるが、誤差の範囲ともいえる。

これらの値は「しばしば」「時々」の範ちゅうで肯定したものなので、「まれに」「たまに」の機会で気が付く・クリックする・買物するを合わせればもう少し数字は上乗せされるだろう。しかしそれらの元々低頻度の区分で値を上乗せしたとしても、実際の広告効果の算定にはあまり影響は無い。

報告書では「タブレット機とスマートフォンでは画面サイズや広告面積に大きな違いがあるにも関わらず、広告周りの値にはほとんど変化が無い」「今やネット広告は低クリック率を維持している。得てして1%未満、手法を誤ると0.02-0.04%でしかない場合すらありうる。だから(今件結果が低いように見えても)タブレット機の広告は非常に有効な手法である」としている。

一方、クリック率が高くとも、インターネット媒体への広告を好む人は多くはない。次のグラフはおおよその媒体(を保有し、それ)と紙媒体すべてでニュースを取得している人に対し、どの媒体のニュースに付随する広告が好きかを聞いたもの。デスクトップ・ノートパソコン上で展開する広告が好きな人が一番多く19%、次いで紙媒体の広告が18%と続いている。

↑ どの機種の広告をもっとも好んで見るか(全手段でニュースを取得する人限定)
↑ どの機種の広告をもっとも好んで見るか(全手段でニュースを取得する人限定)

タブレット機は5%でしかない。タブレット機上の広告とて基本はパソコン上で展開されるものと同じであり、単にアクセス環境や画面全体比が異なるだけ。むしろ表現能力という点ではデスクトップなどのパソコンの方が上。それでもクリック率がタブレット機の方が高いのは、開放感のある状態(屋外や自分の部屋などで)視聴しているためについ気軽に見てしまう、クリックしてしまう他、意図せずにクリックしてしまった可能性を示唆している。他方、「どの広告も好きでない」とする意見は46%と5割近い。

モバイル端末上の広告はあまり好かれていないように見えるが、他方でモバイル端末の利用者は買い物好きという結果も出ている。タブレット機保有者の36%は少なくも週一以上でそのタブレット機経由で買い物をし、スマートフォン保有者の25%すら上回っている。

広告は嫌われやすいが、その端末経由での買い物は頻繁に行われている(≒好かれている)。この二つの事実をいかに上手く結びつけて、読者も広告主も掲載媒体もハッピーになれる仕組み・仕掛けを作っていくか。今後のタブレット上でのニュース展開の収益構造における改善を検討する際に、求められる知恵といえよう。



ちなみに「週一以上でニュースを読むタブレットユーザーのうち6%は、有料記事を取得したことがある」。見方を変えれば、タブレットでニュースを読む人が17人居て、ようやく「有料記事を購読している」人に巡り合える計算となる(しかも全ニュースを有料登録しているわけではない)。母数が大きければ、あるいは比率を引き上げるだけの特殊事情・魅力があれば話は別だが、有料記事による売り上げでニュース配信の財務面を支えるのは難しそうである。



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