高齢者の人権問題、もっとも懸念視されているのは「悪徳商法」
2012/10/28 07:10
内閣府は2012年10月22日、人権擁護に関する世論調査の結果を発表した。それによると、日本における人権課題のうち高齢者を対象とした問題で関心を寄せている項目としては、「悪徳商法の被害が多いこと」と答える人がもっとも多く、回答率は過半数に達していることが分かった。次点の「経済的に自立が困難なこと」と合わせ、特に今世紀に入ってから認識が高まっている(【発表リリース】)。
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今調査は2012年8月23日から9月2日にかけて、20歳以上の日本国籍を有する人を対象とし、層化2段無作為抽出法で3000人を選択。それらの人に調査員による個別面接聴取法で尋ねたもので、有効回答数は1864人。男女比は841対1023、世代構成比は20代151・30代248・40代324・50代315・60代417・70歳以上409。
先に別記事で記したが、日本における人権問題が生じている、見受けられるとして認識・関心のある対象としては「障害者」とする人が最も多く、次いで「子供」「インターネットによる人権侵害」「高齢者」と続いている。
↑ 日本における人権課題について関心があるもの(複数回答)(再録)
今回はそれらのうち、今後人口構成比の変化から確実に増加を続けるであろう「高齢者」にスポットライトを当てる。人権問題の対象を高齢者に限定し、どのような問題が起きているかを調査母体全員に尋ねた結果が次のグラフ。「悪徳商法の被害が多いこと」への同意率がもっとも高く、過半数の50.6%に達していた。
↑ 日本の高齢者に関して現在どのような人権問題が起きていると思うか(複数回答)
次いで多いのが「経済的に自立が困難」「働く能力を発揮する機会が少ない」「高齢者が邪魔者扱いされ、つまはじきにされる」「病院での看護や養護施設において劣悪な処遇や虐待を受けること」と続き、ここまでが3割超えの回答率。いずれも報道などで実事件がよく伝えられており、世間一般の認識が高いのも納得が出来る。
また、例えば「経済的に自立が困難」と「働く能力を発揮する機会が少ない」、「高齢者が邪魔者扱いされ、つまはじきにされる」と「病院での看護や養護施設において劣悪な処遇や虐待を受けること」は少なからぬ関連性を持ち、今件問題の奥深さが認識される結果ともいえる。
これを男女別に見ると、概して女性の方が高い値を示している。
↑ 日本の高齢者に関して現在どのような人権問題が起きていると思うか(複数回答、男女別)
特に介護周りで男女の差異が大きく出ており、多分に介護を任せられることになる女性における認識の高さがうかがえる。
世代別に見ると概して中堅層で高い関心度が確認できる。
↑ 日本の高齢者に関して現在どのような人権問題が起きていると思うか(複数回答、世代別、上位)
若年層は問題そのものに触れる意識が少なく、見聞きしたとしてもあまり関心を寄せないのだろう。また高齢者は自分自身の問題となりうる話ではあるが、高い自覚意識はない。
一方、一番高い値を示すのは中堅層。これは高齢者を介護、あるいは同居している可能性が高く、「身近な人が被害を受ける可能性がある」との認識があるから、さらには「自分自身もそう遠くないうちに高齢者入りするが、その時には被害者になるかもしれない」という具体的な恐れによる結果と思われる。
最後に経年別だが、金銭周りの問題で近年になるに連れて値が上昇しているのがうかがえる。
↑ 日本の高齢者に関して現在どのような人権問題が起きていると思うか(複数回答、経年推移、上位)
特に今世紀に入ってから上位2項目「悪徳商法の被害が多いこと」「経済的に自立が困難」の増加が目に留まる。それだけ多くの事象が発生し、目に触れる機会が増加したゆえの動きと考えれば理解はできる。
一方で介護周りや「つまはじき」は直近の調査結果で大きく値を落としており、気になるところではある。問題そのものの減少というよりは、伝えられる話のウエイトが変化してきたこと(これらの問題に関する事件の報じられる機会が減っている)の方が、下げた原因としては納得がいく。
今件はあくまでも第三者による関心度のあるなしを示したものであり、実際の人権値問題の発生度・数を示したものでは無い。他方、例えば「悪徳商法の被害が多いこと」のように、社会情勢の変化に伴うものと思われるものもあり、注目すべき動きといえる。団塊の世代の退職により、退職金を手に入れた高齢者が増える昨今、本人自身も合わせ、十分啓蒙は行われねばなるまい。
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