アルバイト率約8割…大学生のアルバイト事情(最新)
2022/04/11 02:49
大学生の本業は学習であるが、同時に社会環境に慣れ社会人として大人の世界に足を踏み入れた際のトレーニングも欠かせない。その最たるものがアルバイト。これは就業実地訓練のようなもので、企業内のルールを守り上役の指図に従い労働に従事し、対価の受け取りを実体験する機会にもなる。今回は独立行政法人日本学生支援機構が2022年3月25日に発表した【「令和2年度学生生活調査」】など一連の調査結果を基に、その大学生のアルバイト事情を確認していくことにする。
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8割強は「アルバイトしなければ修学不可能、不自由」
今調査結果は2020年11月に大学院、大学学部および短期大学本科の学生(休学者および外国人留学生は除く、社会人学生は含む)の中から無作為抽出方法によって抽出された学生に対して調査票方式で調査されたもの。有効回答数は3万7591人。調査そのものは2年おきに行われており、現時点では2020年実施の結果が最新データである。
経年データのうち、アルバイト従業者率が調査項目に挙がっている2002年度以降について、状況の確認をしていく。まずは「大学昼間部の学生で、アルバイトをしている人の割合」をグラフ化したのが次の図。アルバイト従事者については「仕送りだけで学生生活は可能だが、生活に余裕が欲しいのでしている」との人と「仕送りだけでは学生生活の継続は無理(・不自由)。アルバイトで不足分を補てんしないと(、あるいは仕送りが無いので当然アルバイトなどで学費や生活費をまかなっている)」との人の区分もしてある。要はグラフ中で赤色と青色を合わせた値が、大学生のアルバイト従事率となる。
↑ アルバイト従事者率(大学昼間部)
アルバイトをしていない大学生の比率は、2008年度まではほとんど変化が無かった。また、仕送りだけでは生活ができないのでアルバイトをしている学生の比率は減少傾向にあり、生活上のゆとりを求めてアルバイトに従事する学生が増加する傾向があった。
ところが2008年度は前回調査比で学生の生活がより困難になる動き、「家庭給付だけで修学可能」が減る・「不自由・困難・給付無し」が増加する流れが見え、2010年度ではさらにその動きが強まり「不自由・困難・給付無し」派が「修学可能」派を超える形となった。しかし一方で「アルバイト非従事者」率も2010年度では大きな増加を示し、大学生の金銭事情で二極化が起きた。一連の動きは2007年夏から始まった金融危機・経済不況に、大学生のアルバイト事情も大きく影響を受けたと考えざるを得ない。
2012年度以降は再び「家庭給付だけで修学可能」は漸増し、「不自由・困難・給付無し」派は減る傾向が見受けられた。ところが直近2020年度では「家庭給付だけで修学可能」不自由・困難・給付無し」が減り、「アルバイト非従事者」が増えてしまっている。これは新型コロナウイルスの流行により、アルバイトをする機会そのものが減ってしまったことが原因と考えられる。
なお2020年度の「不自由・困難・給付無し」のうち、「不自由」は13.3%、「困難」は12.4%、「家庭給付無し」は5.8%となっている。
アルバイトの職種を探る
上記グラフでは「アルバイト従事者」とひとくくりにしているが、そのアルバイトの内容を大別すると、また違った実情が見えてくる。なお直近年となる2020年度発表データでは職種区分がより詳細に行われているが、経年推移動向を確認するため、ここでは「販売」「飲食業」「販売・飲食業を除く軽労働」をすべてまとめて「軽労働」で算出している。
↑ アルバイト従事者の学生数の割合(大学昼間部、職種別、授業期間中)
・軽労働の比率は年々増加傾向。2014年度-2016年度に減ったがその後は再び増加に。
・事務の比率は少しずつ減少。
・重労働や特殊技能などの職種も漸減(「特殊技能・その他」でひとくくりにしてあるので増加しているように見えるが、特殊技能に限れば2020年度は1.0%でしかない)
ファストフードやコンビニなど小売業での作業に代表される「軽労働」が大多数を占める状況に変わりはない。「頭をよく使うタイプのアルバイトが敬遠され、作業上のリスクも低く身体的な負担も少ない軽労働が好かれている」ようにも見える。無論、「軽労働」の供給が増えているのも一因だろう。2014年度以降はほぼ横ばいの動きを示していることから、7割強が天井なのかもしれないが。
他方、大学生のアルバイトの定番職種の一つであり花形だった「家庭教師」は、漸減傾向を示した後、おおよそ12-13%台でとどまっている。2010年度ではリーマンショックに代表される経済不況を受け、アルバイト事情に変化が生じたからか、「家庭教師」「事務」「重労働・危険作業」などでトレンドの転換を予見させる動きがあった。しかし2012年度以降は再びここ数年来の傾向に戻り、それらの職種は再びシェアを減らす方向に転じている。
また「その他」の値が増えている動きからは、これまでの職種区分には当てはまりにくいアルバイトの種類が増えていることがうかがえる。家庭教師、事務、販売、飲食業、その他軽労働、重労働・危険作業、特殊技能といったおおよそアルバイトの種類を包括できるスタイル「以外」に、どのようなものがあるのは想像が難しいが、今後さらに増えるのならば、留意が必要だろう。
ちなみに昼間部の大学生全体における週あたりの平均アルバイト時間は直近2020年度では9.52時間との結果が出ている(中央値を基準として無回答を除き加重平均で各値を算出している)。
アルバイトをしていない学生も含めて均しているので、週あたり9.52時間は少なく感じる人もいるかもしれない。
↑ 週間平均生活時間(大学昼間部、時間)(2020年11月における不特定な一週間を調査)
↑ 週間平均生活時間(大学昼間部、アルバイトなどの就労活動、時間)
国立大学生の方がアルバイト時間が短く、娯楽・交友の時間が長いなど、生活上でゆとりがあるように見受けられる。またバイト時間そのものは経年でほとんど変化は無かったが、直近年度では明らかな減少が確認できる。新型コロナウイルスの流行で、アルバイトをする機会そのものが失われてしまっているのだろう。
学生時代、特に大学生においては勉学そのもの以外の日常・社会生活も重要な「学びの場」であることに違いはない。だが、アルバイトにかまけて授業を軽視するようなことがないように気を付けてほしいものではあるし、アルバイトへの負担が大きく修学に難儀するようなケースが少なくなるような手立てが望まれるところではある。
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