上辺だけの言葉、「舌先三寸」か「口先三寸」か
2012/10/24 07:00


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今調査は2012年2月から3月にかけて日本全国の16歳以上の男女に対して個別面接調査方式にて行われたもので、有効回答数は2069人。男女比率・世代比率は未公開。
複数の単語の組み合わせで新しい意味を持たせた定型語を「慣用句」と呼んでいる。半ば比ゆ的な表現でもあり、体の部位を含んでいるものも多い。例えば「手がかかる」「ほおを染める」「骨が折れる」「腹が立つ」などが好例(「骨が折れる」を個々の構成単語の意味そのままにとらえ、「骨折した」と読み取るのは間違い)。
今項目では5つの情景・状況を呈し、それに合った慣用句と、誤用法として使われることが多い言い回しを併記し、どちらを使うか(など)について尋ねている。例えば冒頭でも触れた「本心で無い、上辺だけの巧みな言葉」の場合、本来の慣用句「舌先三寸」の他、誤表記の「口先三寸」も選択肢として用意してある。

↑ どちらの言い方を使うか(個々の意味)(択一、○は本来の意味)
今5項目では「舌先三寸」「二つ返事」の2項目が、「正しい表記」よりも「間違った表記」の回答率が高い。それぞれ「口先三寸」「一つ返事」を使っている人の方が多いことになる。「食指が動く」「のべつまくなし」「物議を醸す」は幸いにも正答利用者の方が多いが、それでも2-3割は間違った使い方をしている。
全般的に高齢者の方が正しい使い道をしている人が多い……と考えてしまいがちだが、少なくとも今件5項目に関しては一概にそうとも言えない。むしろ高齢者の方が間違った使い道をしている項目が多い。例えばもっとも正答率の低い「舌先三寸」で見ると、誤表記「口先三寸」と答えた人は歳を重ねるにつれて増えていく。

↑ 世代別「本心で無い上辺だけの巧みな言葉」の回答傾向
慣用句そのものは最近の生まれでは無く、昔からのものであり、意外な結果といえる。リリースでは結果のみで原因(の推測)は無いが、訂正を受ける機会が与えられずに誤用法に慣れてしまったのかもしれない。

元々「のべつまくなし」は「芝居で幕を引かずに、演技を続け」たところから来たことばであり(goo辞書より)、「述べつ」「幕」「無し」で構成される。「述べつく間無し」「のべつ隅無し」から想定される「のべつくまなし」ではない。ましてや「野別熊無し」でもない。
慣用句は極力その由来・成り立ちを理解した上で覚え、使うようにすれば、このような誤用法は最小限に抑えることができる。機会をとらえ、積極的に学び、後に恥をかいたり損をすることのないようにしたいものだ。
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