メールの多様化、漢字の書き取り正確さの低下、手紙やはがきの利用減退…10年で変わる、情報手段の多様化による変化
2012/10/18 07:00
文化庁は2012年9月20日、毎年実施している【国語に関する世論調査】の2011年度版(概要)を発表した。それによると、この10年間で携帯電話や電子メールの普及に伴い、漢字を正確に書く力が衰えたと考えている人は2割強も増加したことが明らかになった。手紙やはがきをあまり利用しなくなったと思う人は1割強、手で字を書くことが面倒くさく感じるようになった人は約1割増加している(【発表リリース、PDF】)。
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今調査は2012年2月から3月にかけて日本全国の16歳以上の男女に対して個別面接調査方式にて行われたもので、有効回答数は2069人。男女比率・世代比率は未公開。
以前【携帯電話の普及率推移(2012年版)】などでお伝えしたが、この10年間に携帯電話の普及率はほぼ倍増し「完全普及」に等しい域に達している。パソコンの世帯別普及率も2/3に届くようになった。
↑ 携帯電話・自動車電話契約数と契約数を元にした普及率(毎年年末現在、2012年は3月末)(再録)
これら普及率が急上昇中の携帯電話やパソコンを用いたインターネット・電子メールの活用で、情報交換手段が多様化したことにより、読み書きやコミュニケーションにはどのような変化が生じているだろうか。回答者が思い当たるか否かを答えてもらったのが次のグラフ。
↑ 携帯電話・電子メールなどの普及による情報交換手段の多様化が影響を与えている日常生活について、思い当たることがあるか否か(ある人)
この10年間にインターネット、そして携帯電話が人々の生活に浸透し、欠かせないものとなり、意思の疎通がそれらを用いて行われるようになったこと。そしてそれに伴い、従来の意思疎通の手段があまり用いられなくなった状況を、各回答者が認識していることが分かる(今件回答はあくまでも各回答者が「そう思っている」であり、実際に個々で数えたわけではないことに注意)。
漢字変換機能の多用による「漢字の正確な執筆能力の低下」、便利な電子メールの多様による「手紙やはがきの利用敬遠」(年賀状が良い事例)、そして「手で字を書くことが面倒くさく感じるようになった」など、思い当たる節がある人も少なくないはずだ。
コミュニケーションツールとしての携帯電話をはじめとするモバイル端末は、音声を使った口頭でのやりとりよりも、電子メールなどでのデジタルな情報交換の方が浸透しつつある。「大した用もないのに携帯電話をかけるようになった」「友達と常に携帯電話で連絡を取り合わないではいられなくなった」は10年間でもあまり増加していないのも、コミュニケーションのデジタル化の進行によるものと考えられる。
やや気になるのは「電車の中など公共の場所でも自分だけの世界をつくれるようになった」。2011年度の回答率が16.6%と低いとはいえ、2001年度から比べると2倍をはるかに超える値を示している。ただ実際に、通勤電車内での携帯電話の利用スタイルを見ると、この回答率も理解できなくはない。そしてスマートフォンの普及でモバイル端末の魅力がますますアップする現状を見るに、この傾向はさらに強まるに違いない。
■関連記事:
【パソコンの世帯主年齢階層別普及率(2012年分データ反映版)】
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