本屋の場所、大きさ別・雑誌やコミックの売上全体に占める割合(2015年)(最新)
2015/10/30 05:36


スポンサードリンク
大規模化は多様化…店舗規模別構成比
最初に出版物の区分を確認しておく。元資料には2014年のデータ区分として「雑誌」「コミック」「文庫」「新書」「児童書」「学参」「実用書」「文芸」「ビジネス」「専門書」「総記」の11種類が用意されている。このうち書店規模別で大きな違いが確認できる「専門書」、そして売上全体の6割強を占める「雑誌」「コミック」「文庫」の3項目、合わせて4項目を単独で抽出。残りを全部まとめて(本当の意味での)「その他」に再集計する。
まずは店舗の規模別。

↑ 店舗規模別、分類別売上高構成比(一部、2014年)
「一部」とグラフ題名にあるのは、上記説明の通り、出版物の区分をある程度まとめているため。個人経営の小規模書店のイメージ通り、「雑誌」「コミック」「文庫」の3項目は書店規模が小さいほど売上全体に占める割合が大きい。店舗面積が大きくなると他分野の、そしてその多くは回転率が低い出版物も配せるが、小規模店舗ではそれらを置く満足なスペースを確保するのは難しい実情が、グラフ上で再現されている。
また書店規模が大きくなるにつれて「専門書」(紫部分)の売上比率が伸びているのも注目に値する。501坪以上では実に1割強に達している。これは「雑誌」「新書」などとは逆の性質、つまり「賞味期限」が比較的長い、単価が高め、一度その書店で取り扱っていることが認知されれば定期購入してもらえる可能性が高い、「広く浅く」取り扱っていないと集客・販売効果は限りなく小さくなる……などがあり、これらを活かすには面積の大きさが求められるからと考えて良い。いわゆるスケールメリットと呼ばれるものである。
無論、個人経営の小型店舗で同じようなことを実施しようとすると、その本屋は特定出版物の専門店となり、普通の本屋へ足を運ぶ客は寄り付かなくなる。例えば絵画関連の本屋、歴史書を中心にした本屋など、東京の神保町などにはよく見られるスタイルの本屋ではある。
立地別では大きな違いは無い?
一方立地別では、売上額上はそれほど大きな違いは無いように見える。

↑ 店舗立地別、分類別売上高構成比(一部、2014年)
「ビジネス街」の店舗ではあまり「雑誌」は売れていない。一方で「専門書」は5.1%と、立地区分別で高めの値を示している。仕事上での利用需要を考えれば、これは当然の値といえる。「商店街」が一番高値を示しているのは意外ではあるのだが。
ちなみに「ビジネス街」での「ビジネス書」の割合は、6.5%となっており、実の所「専門書」よりも大きな割合を示している。立地区分別では一応最多比率ではあるものの、それでも1割に満たない。「広く浅く」「初心者向け」の傾向が強い「ビジネス書」は、該当する職種・業種の人達自身への需要はそれほど多くはないのだろう。
また郊外店舗では雑誌やコミック比率が高い。これは大型店が多く多種多様な種類を取り揃えているのに加え、駅から遠く雑誌を調達する場として重宝されていることによるものだろう。

そして【『出版物販売額の実態』と電子書籍の件】で触れている通り、電子書籍の問題もある。市場規模ではすでに(推定だが)「駅売店」の規模を超え、「書店」「コンビニ」「インターネット」に次ぐ位置にある(物理的な商品のやり取りをしない「電子書籍」を同列に扱ってよいのか否かという「そもそも論」的な問題もあるが。もっとも欧米では同列扱いされているのが実情である)。
小さな売り場の本屋に、大面積を誇る大型書店やインターネット通販の書籍コーナーと同じサービスを求めるのには無理がある。面積以外に立地や周辺環境などさまざまな条件、置かれている状況を十分把握した上で、品揃えの最適化とサービスの提供をすることが求められる。それは何も書店に限ったことではなく、小売全般に言えることではあるのだが。
■関連記事:
【書籍をどこで買う? トップは大型書店、そしてネット書店】
【「セブン-イレブンは街の本屋」コンビニが本屋さんを名乗る時代】
【「書店はネット通販には勝てない、瞬間物質転送器でもあれば話は別だが」との話で思い浮かんだこと】
※各グラフで最新年度以外の数字が表記されていませんが、これは資料提供側の指示によるものです。何卒ご理解ください
(C)日販 営業推進室 店舗サービスグループ「出版物販売額の実態2015」
スポンサードリンク
