前年度比マイナス9.7%…新聞業の売上高動向(最新)
2023/11/01 02:47
当サイトでは大きく2つのルートから日本の新聞業界の動向を俯瞰的に推し量り、解説記事を展開している。一つが半年ペースで更新される日本ABC協会発表の主要新聞社の販売動向。もう一つが日本新聞協会が年ペースで更新する、新聞業界全体の各種指標。そのうち後者において、業界全体の売上と従業員に関するデータの更新(2022年度分の反映)が確認された。そこで今回は売上全体の推移を中期的な視点から眺めていくことにする。
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中期的に総額は漸減、2022年度では前年度から1割近い下げ
データ取得元は【新聞の総売上高の推移】。ここから新聞業全体(日本新聞協会が把握している範囲)の売上高、およびその部門別額の移り変わりをグラフ化する。元データでは2002年度で「暦年」(各年12月末区切り)から「年度」(各年3月末区切り)に変更しており、この変更を無視してグラフ化すると2002年前後で不具合が生じかねないので、年度切り替えを果たした2002年度以降のみをグラフ作成の範囲とした。
↑ 新聞業の総売上高(内訳別、億円)
2004-2005年度に総額で一時盛り上がりを見せているが(2011年度もわずかだが増加はしている)、それを除けば総じて減少傾向にある。特に赤茶色部分「広告収入」の減り方が急激なものであるのが分かる。
青色部分の販売収入(要は新聞そのものを販売したことによる売上)は大した減り方ではないが、やはり減少を続けている。大手5紙が概して少しずつだが確実に売上を落としていること(【朝日新聞は2010年から減少加速化…新聞の販売部数などの推移(2021年後期まで)(最新)】)と合わせて考えると、感覚的には一致する。
直近の2022年度は前年度比で販売収入、広告収入、そして総売上が減少。その他収入は増加を示している。今件元資料では単純に「その他」のみの表記だが、具体的には情報処理サービスやイベント業務、不動産賃貸業務などを指すと経済産業省の「特定サービス産業実態調査」などの資料にある。要は新聞業においては副業的な立ち位置。しかし金額の観点ではすでに広告収入を超えているのが現状である。
売上高前年度比で部門別のすう勢を確認
これらの数字を元に、変化が分かりやすいように「前年度比」を算出したのが次のグラフ。2005年度以降、特に2007年度以降にわたり「広告収入」の減少ぶりが著しいことが再確認できる。ひとえに金融危機、そしてリーマンショックの影響によるところが大きい。またこの減少ぶりは、同時期に発生・進行している、広告発注側による「新聞の広告媒体としての価値観の見直し」も一因にあると見られる。
↑ 新聞業の総売上高(内訳別、前年度比)
2022年度の販売収入は前年度比でマイナス19.5%、広告収入はマイナス3.5%。販売収入≒部数は大きく減少したが、広告収入は小規模な減少にとどまっている。広告単価を吊り上げられるほど広告出稿依頼が来るようになったのか、単純に広告スペースが増えたのかまでは分からないが、悪い話ではない。もっとも、前年度比マイナスであることに違いはないのだが。
今世紀に入ってから、特に2005年前後からの広告費の急激な減少は明らかで、これが新聞業界全体の頭痛のタネとなっている。これはインターネットなど媒体としてのライバルの増加による競争激化に伴う単価引き下げ、発行部数低下に伴う媒体力の低下、そして内容そのものの(品)質の問題など、想定できる要因は複数考えられる。しかも、どの項目も多かれ少なかれ的外れではなさそう。
そして一方、鉄壁的存在ともいえた「販売収入」、つまり新聞そのものの売上も、毎年確実に減少している。前年度比を計算できる2003年度以降では、販売収入が前年度比プラスとなったことは一度もない。特に今年度の前年度比で1割以上の減少は、値が確認できる2003年度以降において初めての話である。
「販売収入」も「広告収入」も多分に販売部数と深い関係がある。売上の増加には部数拡大が不可欠ではあるのだが、現状ではそれも難しそうだ。
ちなみに5月に【企業が払う新聞広告費と広告費相場の変化】で、新聞広告費の推移を確認した。
↑ 新聞広告費(億円)(再録)
これは各企業が新聞掲載のために支払った金額。新聞社が受け取った、つまり売上額との間には大きな差異がある(グラフの年数区切りが年度・年で異なるので単純比較はできないが、大体3-4割の差異が確認できる)。これは姉妹サイトで解説している【広告業界や代理店の仕組みが分かるステキなレジュメ】などで概要を触れている通り、広告代理店の手数料やその他諸経費などが、この差異に該当すると見てよいだろう。
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