米国いわく「安定した職」が中流階級へのチケット

2012/09/23 12:10

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チケットアメリカの調査機関【Pew Research Center】は2012年8月31日、アメリカにおける「中流階級」「中流意識」に関する調査報告書【Public Says a Secure Job Is the Ticket to the Middle Class】を発表した。今回はその中から、「中流階級となるためにはどのような条件・環境が必要となるか」(と皆は思っているのか)について見ていくことにする。



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今調査のうち最新のものは2012年7月16日から26日にかけてアメリカ国内に住む18歳以上の男女に対して電話の音声(英語とスペイン語)によるインタビュー形式で行われたもので、有効回答数は2508人。固定電話による回答者は1505人で携帯電話は1003人。国勢調査の結果に基づいたウェイトバックがかけられている。

先日【アメリカの中流意識】などで解説したが、アメリカでは約半数の人が「自分は中流階級に居る」と自認している。

↑ 自分は上流・中流・下流のどの階層にいると思うか(米、2012年)
↑ 自分は上流・中流・下流のどの階層にいると思うか(米、2012年)(再録)

それでは見方を変え、「少なくとも中流階級・階層のポジションに位置するには、何が必要となるか」について聞いた結果が次のグラフ。それぞれの選択肢に対し、当てはまるか否かで答えてもらったものだが、もっとも高い回答率となったのは「安定した仕事」。これが86%に達していた。

↑ 「中流階級」と見なされるには何が必要か(米、2012年7月)
↑ 「中流階級」と見なされるには何が必要か(米、2012年7月)

「安定した仕事」とはそれなり(以上)の報酬に加え、解雇リスクをはじめとしたさまざまな危険性が低い環境で労働が続けられる仕事を意味する。もちろんその状況は収入面・精神的な安定にもつながっていく。中流階級として、表現を変えれば一般的で平穏無事な生活をしていくには、仕事が安定していないと始まらないとの考えは、非常に多くの人が共有していることが分かる。

次いで多いのは、そして「安定した仕事」と同様に過半数に達しているのは「健康保険」。日本のような(一応)国民皆保険制でないアメリカでは、無保険者の人も少なからずおり、当然事故や病気の際には出費で難儀することになる(【アメリカの医療費の実情......?】)。住宅や学歴、金融資産より、職はともあれ健康保険が上位に位置する点は、(日本では)意外に思う人も多いかもしれない。見方を変えれば、制度としてすでに備わっている日本の状況に感謝すべきといえる。

今件では興味深いことに、約20年前における同様の調査結果も併記されている。提示項目がやや異なるが、回答動向からは社会情勢・生活環境の変化が見て取れる。

↑ 「中流階級」と見なされるには何が必要か(米、1991年12月)
↑ 「中流階級」と見なされるには何が必要か(米、1991年12月)

「非肉体労働職就業」とは要するに「ホワイトカラーへの就職」を意味する。これについて報告書では「内容的には事実上、2012年調査における『安定した仕事』と同意と見なしてよい」と伝えている。そして「『中流階級』へのチケットとして、職の安定さへの願望がこれだけ強まった背景には、なかなか低下しない昨今の失業率の高さや、就業における若年層の冷遇状況があると推定される」と述べている。

失業率の高さや若年層の就職難は、社会構造上の大きな問題で、いわゆる「先進国病」の一つとされている。日本でも同様の傾向は確認されていることから、同じ調査をすれば、多分に似たような結果が出るに違いない。



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