東日本大震災における犠牲者の「年齢特性」
2012/09/18 07:00
厚生労働省は2012年9月6日、2011年の人口動態統計(確定数)の概況を発表しているが、これには人口動向を多方面の切り口から見たデータが盛り込まれた統計資料だけでなく、震災周りの値をも盛り込まれている。今回はその中から、2011年3月に発生した東日本大地震・震災における死亡者について、その年齢上の動向・特性を確認していくことにする(【発表リリース】)。
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今回挙げた数字は市区町村に届け出られた死亡届などを基に作成された人口動態調査死亡票に、東日本大震災による死亡であると考えられる記載が確認できたもの。つまりまだ死亡届が出されていない、あるいは行方不明者などは該当しない(【2012年8月3日時点で(PDF)】届け出のあった行方不明者数は2903人・未届け者は不明)。
先日【東日本大震災における犠牲者数】でも解説したが、調査期間(2011年中)において震災起因で死亡が確認された人数は1万8877人。そのうち大半を、他の統計などで「被災三県」と表することがある岩手県・宮城県・福島県で占めている。グラフを生成しても、その異様さが一目で分かる。
↑ 東日本大震災による死亡者数(人口動態調査より。死亡届等が基。同震災による死亡と考えられる記載があったもの)(再録)
またその記事でも指摘しているが、死亡者の年齢構成は全国のそれと比べ、高齢者に偏っていることが確認できる。
↑ 東日本大震災による死亡者数(人口動態調査より。死亡届等が基。同震災による死亡と考えられる記載があったもの)(全体に占める比率・年齢階層別、全国)(再録)
これについて特に犠牲者が多かった被災三県(岩手・宮城・福島)について、もう少し詳しく見ていくのが今回の主旨。
まず被災三県では元々高齢者が多かったのではないか、だから全体に占める高齢者被害の比率も高いのは当然ではないか、とする疑念に対し、全国・該当三県の年齢階層別人口比率を求めた結果が次のグラフ。直近の国勢調査(2010年分)から【統計表一覧】をあたり、そこから「人口等基本集計(男女・年齢・配偶関係,世帯の構成,住居の状態など)」「全国結果」「4-3 年齢(5歳階級),出生の月(4区分),男女別人口(総数及び日本人)-全国※,全国市部,全国郡部,都道府県,20大都市」のファイルを選択。そこで具体的な値を取得する。
↑ 平成22年国勢調査人口等基本集計に基づいた全国・被災三県の世代別人口構成比(全体比)
【アトラクターズ・ラボ、東日本大地震(東北地方太平洋沖地震)被災地域の各種不動産データを公開】でも指摘されていた話ではあるが、被災三県は全国平均と比べ、20-40代の比率が低く、70代以降の比率が大きい。特に岩手県・福島県でその傾向が顕著に表れている。確かに該当三県では高齢者の比率が高い。
さらにこの値を元に、「各県の該当世代の総人口のうち、何%が犠牲となったのか」について換算したのが次のグラフ。元々津波による死亡者が甚大な値を示していた宮城県が、対人口比率でも高い値を見せている。
↑ 東日本大震災による死亡者数比率(死亡者数は人口動態調査より。死亡届等が基。同震災による死亡と考えられる記載があったもの)(元人口は2010年国勢調査より)(個々属性の人口に対する比率)
例えば宮城県では70歳以上の少なくとも1%超の人が、今般震災(津波含む)で命を落とした計算になる。グラフのカーブ具合には県ごとに違いがあるものの、押しなべて「高齢ほど高い比率」を示している。人口そのものの構成比のように30代・60代がボリュームゾーンということはない。元々高齢者の数が多いのは事実だが、「高齢者数そのものが多いから、高齢者の犠牲者数も多くなる。各世代ごとの犠牲者比率にはさほど変化はないはずだ」という意見があるとしたら、それは的外れな意見ということになる。
以前の別記事でも呈しているが、今般震災における犠牲者の3/4以上は津波を直接・間接起因としている。元データには「死因別・年齢階層別実数」は収録されていないため想像でしかないが、さまざまな理由で避難できなかった、しきれなかった人が、高齢者の「数」には多く含まれていると考えられる。今後の震災・津波対策においては、この「高齢者の避難」に対する十分な考察も求められよう。
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