トップはセブンの5兆1490億円…コンビニ御三家の売上高などの検証(最新)
2023/12/25 02:37
多様な商品だけでなく多彩なサービスを展開し、地域社会を支え、21世紀の「よろずや」的な立ち位置を確かなものとしつつあるコンビニエンスストア。日本では売上高の上でセブン-イレブン・ジャパン、ファミリーマート、ローソンが上位を占めているが、今サイトではこの3コンビニを「コンビニ御三家」と呼んでいる。今回はローソンが発表した【統合報告書2023】などを基に、この「コンビニ御三家」を中心としたコンビニの売上高動向を精査していくことにする。
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伸びる売上、進む寡占化
まずは売上高推移。2000年以降について、上位4チェーン店とそれ以外の合計を積み上げグラフと、コンビニ業界全体の売上に占める比率計算をしたものが次のグラフ。セブン-イレブン・ジャパンがトップを占めている状態は、少なくともグラフの対象となる2000年以降変化は無い。
↑ コンビニ業界全体に占める上位チェーンの売上高(ローソン統合報告書より、兆円)
↑ コンビニ業界全体に占める上位チェーンの売上高(ローソン統合報告書より、業界全体に占める比率)
各社とも順調に売上高を伸ばしているが、これは主に店舗数そのものの拡大によるもの。1店舗単位の売上が急激に増加したのではなく、売上を上げる店舗数の拡大政策(吸収や他企業店舗からの転換含む)により、全体としての売上が積み増しされた形となっている。そして上位チェーンによる業界全体のシェアは引き続き拡大する傾向にある。
2016年にはサークルKサンクスの領域が無くなり、ファミリーマートが大きく伸びている。これはグラフの注意書きにある通り、両社が経営統合を果たした結果。そしてそのファミリーマートがここ数年伸び悩んでいるのは、収益性の低い店舗を前倒して閉店し、収益性の期待できる地域への店舗展開を推進しているのが原因だと思われる(同社ではビルド&スクラップの推進と呼んでいる)。
2020年では御三家ともに、そしてコンビニ全体としても前年から売上高を落としているが、これはいうまでもなく新型コロナウイルスの流行で客足が遠のいたのが主要因。2021年以降は少しずつ持ち直し、少なくともコンビニ総額では、2022年でようやく流行前の2019年の値に肩を並べる形となった。
上位チェーンのシェアは前世紀末は約75%程度だったものが、直近年では87.3%へと大きな拡大ぶりを示している。これは大手チェーンが売上を伸ばしている他に、それ以外のコンビニの業績が今一つなことが要因。スケールメリットによる業績の効果的な拡大、あるいは寡占化、と表現してもよい。無論上記のファミリーマートとサークルKサンクスの事例のように、大手がそれ以外のコンビニを吸収合併しているのも一要因。
なお2012年では「上位以外のコンビニ合計」が一時的に売上総額・シェアともに大きな増加を示している。これは大本のデータである「商業動態統計調査」において、「コンビニ」のカテゴリに該当する店舗領域を拡大した結果、上位チェーン以外に該当するコンビニの数が増加した結果による可能性が高い。同調査の一次データで確認すると「平成24年1月分に調査対象事業所の見直しを行った」との注意書きがあるのが、その裏付けでもある。もっともその見直しによる底上げがなされても、その後は再び売上・シェアともに漸減しており、寡占状態が継続・強化される状況に違いはない。
増加していたコンビニ店舗数
続いて店舗数。実のところコンビニの場合は(それ以外の小売店の大部分も同様)単純に店舗数だけで展開状況のよし悪しを断じることは難しい。地域性、集中性などチェーン店によって特性・独自の戦略があり、単に数が多ければよいものではない。また、コンビニの開店・閉店の頻度の高さ、さらに特定地域に存在するコンビニ数が同じでも、時期によりその中身は大きく変容している場合もある(例えばローソン100が通常のローソンに転換されるなど)。この「店舗数」は、あくまでも比較材料の一つとして考えてほしい。
なおこちらについてはローソンの統合報告書ではなく、コンビニ全体の店舗数は経済産業省の商業動態統計の値を、各コンビニの店舗数は各社が毎月発表している公開値を用いている(毎年2月時点の値を取得)。
↑ コンビニ業界全体に占める上位チェーンの店舗数(各年2月末時点)
↑ コンビニ業界全体に占める上位チェーンの店舗数(業界全体に占める比率)(各年2月末時点)
売上の部分で「上位チェーンによる業界全体のシェアは拡大する傾向」と解説したが、それが店舗数動向からも見て取れる。上位チェーンはそれぞれ順調に店舗数を増やしている。そしてファミリーマートの2010年以降の数年における伸びは【関西地区のam/pmもファミリーマートに転換へ】で解説の通り2010年以降段階的に行われたam/pmの吸収合併、2016年以降の伸びはサークルKサンクスとの経営統合によるところが大きい。同社ではそれ以降も急速な拡大戦略を継続中で、2014年の時点では1万店舗を突破し、日本のコンビニチェーン店ではセブン-イレブン、ローソンに続き3社目の「万店コンビニ」となった。
他方それ以外のコンビニは伸び悩んでおり、さらに上記の例にある通り、一部は大手に吸収合併し、結果として売上同様店舗数の点でも寡占化が進んでいることになる。そして非コンビニ業界全体における店舗数は、2017年以降ほぼ変わらない状態にある。おそらくはこの店舗数で商圏的には飽和状態なのだろう。
売上ではすでにファミリーマートとサークルKサンクスの統合が行われ、2016年の時点でローソンを抜いている。店舗数でも2018年にはそれまで2位だったローソンを超える形となった。ローソンでもセーブオンとのメガフランチャイズ契約によるローソンへの転換、ポプラとの共同事業契約締結による一部ポプラのローソンへの転換など積極的な店舗数の拡大を推し進めているが、ファミリーマートの値には届いていない。
以上、売上高と店舗数の2つの視点から、「コンビニ御三家」の動向を確認した。全体的にはコンビニ業界は社会の要請を受ける形で市場規模を拡大する一方、緩やかな動きながらも上位チェーン店によって寡占統合化が進んでいるのが分かる。
今後コンビニは震災の影響や高齢層の利用拡大に伴う利用者性向の変化(買物弱者問題、多様なサービスへの対応など)に合わせてさらに様態を進化させ、地域を支える社会拠点として、より大きな期待に応え続けることになる。一部では類似業態のスーパーやドラッグストアとの融合店舗なども登場しており、「コンビニ」なる言葉の定義の領域すら拡大する勢いを見せつつある。
その上、人が集まる特徴を活かし、顧客サービスの担い手として、駅や病院、学校などの公共機関への進出・既存店舗からの代替による店舗進出も著しい。また、新型コロナウイルスの流行に伴い、身近な場所にある何でも屋的なコンビニの存在意義がさらに高まったことは多くの人が認めることだろう。
それらの動きに伴い、売上の拡大と寡占化など、一連の動きはますます加速していくに違いない。
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