コロナ禍の内食需要もカバーし、食品専門店への色合い強まる…コンビニの商品種類別売上の変化(最新)
2023/12/23 02:40
ローソンでは年に一度、同社および所属・周辺業界の状況を多方面から分析・解説したアニュアルレポート【統合報告書】を更新・公開している。そこで日本の大手コンビニでは売上で第3位に位置するローソンの公開データを通して、コンビニの商品種類別における売上の変化を精査していくことにした。
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食品コンビニ化への動き…売上高動向
ローソンのアニュアルレポートでは同社における商品群別の売上高構成比が掲載されている。昨今では「たばこ」の売上に注目が集まり、その動向に注視する必要があるため、「たばこ」を特別扱いし、一つの区分として計算する。ローソンでは決算が2月締めであることから、「2023年」の場合は2022年3月1日から2023年2月28日までのデータを意味している。なお今回も併せコンビニの売上動向を推し量る際に、ローソンのレポートをデータ取得元として用いたのは、大手コンビニではローソンだけが「たばこ」も含めた詳細な売上構成比を公開していたからに他ならない。
なおローソンの統合報告書では2018年発表分から詳細な売上構成比や金額に関して、チェーン全店ではなく単体の値への開示へと手法を変えている。そのためさかのぼれる2014年分以降は単体(ローソンとナチュラルローソンのみ。ローソン100などは含まず)の値で、それ以前はチェーン店全店での値となることから、一部のグラフでは2013年と2014年の間に小さからぬギャップが生じている。
まずは売上全体に占めるたばこも含めた、主要商品区分別の割合をグラフ化し、状況を確認する。
↑ 商品群別売上高構成比率(2013年まではチェーン全店・2014年以降は単体、ローソン)
2010年の売上構成比で「たばこ」は前年比でやや減少している。これは金額そのものは伸びているものの、伸び率は前年ほどではなく、他の分野の伸び具合に比べて大人しかったため、相対的に比率が落ちている次第。その年以外は2014年まで一様に「たばこ」の売上が占める比率は増加をしており、コンビニにとって「たばこ」は年々重要な商材として位置づけられていたのが分かる。また2010年の特異な動きとして「日配食品」が伸びているのが確認できるが、これは「ショップ九九」で該当項目商品が大いに伸びたのが原因。
震災直前となる2011年分(2010年3月-2011年2月)、そして震災時期を含む2012年(2011年3月-2012年2月)では多少の増減はあれど、中期的な動きに変わりは無い。食品販売の占める割合が大きく、「コンビニエンス・フードストア」と表しても問題はなさそう。また、【値上げによる家計のたばこ支出金額推移への影響を過去二回分と合わせて検証】でも触れているが、2010年10月に大規模なたばこの値上げが実施され、これを受けて2011年以降の「たばこ」売上・シェアは増大。2012年では全売上の1/4に達している。
2013年に入るとこれまでとはやや変わった動きも確認できる。「たばこ」の伸び、「加工食品(たばこ除く)」「非食品」の減少は相変わらずだが、「ファストフード」(※ローソンではカウンターフーズの他にお弁当や調理パンの類も「ファストフード」に該当させている点に注意)が大いに伸びを見せている。これはコンビニ関連の記事で繰り返し解説している中食需要の拡大と、それに伴う(あるいはそれを誘発した)フライヤー食品をはじめとした惣菜の積極的な展開によるもの。類似商品の「日配食品」(ベーカリー・デザート・アイスクリーム・生鮮食品など)は比率こそ落としているが、金額面では小さからず伸びており、中食需要に確実に応え、売上に反映しているのが確認できる。2013年から2014年にかけて複数の項目で値が大きく動いているのは、グラフ作成時の対象店が変わっているため。
2015年ではいくつかの大きな動きが起きている。まず「ファストフード」の大きな伸び。これはカウンターフーズの拡充に伴う躍進に加え、今ではごく当たり前の情景となったドリップコーヒー(ローソンの場合はMACHI cafe)の導入店舗が増え、好成績を上げたため。なおカウンターフーズのルーキー的存在のドーナツの本格導入は、ローソンでは2015年4月以降であるため、2015年時点では反映されていない。
直近となる2023年分(2022年3月-2023年2月)では、比率の上で日配食品や加工食品(たばこを除く)や非食品が減り、たばこは変わらず、ファストフードが増えている。ファストフードの増加は、人流の回復で観光需要などが増し、その分、ファストフードを買い求める人が増えたからかもしれない。
続いて金額ベースで、積み上げ型のグラフにしたのが次の図。こちらも2013年から2014年にかけて対象が変わっているため、不規則な動きが生じていることに注意。そして「たばこ」そのものは2014年から一時的に減少する時期もあったが、その後再び額は増加している。
↑ 商品群別売上高(2013年まではチェーン全店・2014年以降は単体、ローソン)(億円)
コンビニでお世話になっている人も多いであろう「ファストフード」だが、ローソンに限れば「夕食の一品」「単身者や高齢者の方にも、おかずを一品増やしたい主婦の方にも」と多様な方向性、ターゲットを見据え、ブランド化と商品開発を進めているレジ横フライ物や厨房で逐次調理される総菜・お弁当が堅調に推移している。直近の2023年では新型コロナウイルス流行の影響を大いに受けた2021年の値からは持ち直しを見せ、流行の影響が無かった2020年を超える値を示している。他方「日配食品」は内食需要拡大の恩恵を受け前年比2.7%のプラス。コンビニはますます人々の食生活を支える食品コンビニ化の様相を示しつつある。
そして「たばこ」だが、ローソンに限定すれば直近2023年では前年比プラス268億円(プラス4.5%)。値上げによる恩恵を受け、大きなプラス幅示す形となった。
各項目の前年比
各項目の進捗を把握しやすいのが、次に示す前年比のグラフ。なお2013年と2014年との間には連続性が無いために特異な値が出ているが、考察の上では無視をする。
↑ 商品群別売上高(2013年まではチェーン全店・2014年以降は単体、ローソン)(前年比)
「たばこ」のトレンド転換は事実上2013年から始まっていたことが分かる。日本全体におけるたばこの販売本数は漸減を続けていることから、それが影響したものと思われる。
一方で2017年以降のたばこの売上だが、前年比プラスを継続している(2021年もプラス0.7%とわずかだがプラス)。報告書ではこの現象について2017年では単に「たばこの売上が計画を上回る」とのみ、2018年では加熱式たばこの売上の堅調さを、そして2019年以降はたばこ税引上げによるたばこの値上げを理由に挙げている。他方、たばこ協会の定期報告では紙巻たばこ全体の売上は、前年同期比で10%内外の減少を示し続ている。
今件数字からでは断言はできないが、加熱式たばこの貢献以外に、自動販売機やたばこ販売店が紙巻たばこ全体の需要を上回るスピードで減少しており、その差をコンビニが吸収している可能性はある。
一方「ファストフード」は2012年以降大きく切り返しを見せている。2021年は大きく前年からマイナスを示してしまい、10年ぶりの前年比マイナスとなったが、新型コロナウイルスの流行で来店客数が14.2%も減少したのだから仕方がない。一方で「日配食品」が伸び続けていることから、内食需要の拡大の中で「ファストフード」の食品関連の需要が一部「日配食品」にシフトした可能性もある。直近年における「ファストフード」の堅調ぶりは、人流の回復による観光特需が多分な影響を与えているのだろう。
これらの食品関連の動向について同報告書では(あくまでローソン単体での話ではあるが)、
と解説されており、元々食品需要の拡大と生活のサポート役の強化を推し量る施策を実行していたが、新型コロナウイルスの流行による社会環境の変化で生じた食品需要の動きに、「日配食品」などが適切な対応をした成果が出たことが見て取れる。
たばこは儲かるのだろうか…粗利益動向
売上高の上昇が続いていた「たばこ」だが、【コンビニでは1日何箱たばこが売れているのかを計算してみる……(下)裏づけと「たばこが売れてハッピー」なのかを検証する】で解説している通り、他の商品と比べて「たばこ」の粗利益率は低い。言い換えれば「儲けが少ない」商品。お弁当とたばこで売上が同じ金額だった場合、利益はおおよそたばこがお弁当の1/3から1/4との計算になる。人件費を考えると、色々と頭の痛い話に違いない。
↑ 商品別総粗利益率(ローソン)
他のカテゴリの粗利益率が高いのに対し、たばこを含む「加工食品」は一段と低い値。最新のレポート中ではたばこの粗利益そのものに関する直接的言及は無いものの、2019年の報告書では「荒利益率の低いたばこの売上の増加が計画を上回り」との表現が確認されており、たばこの粗利益率が他商品と比べて低い実情がうかがえる。
実際、【国税・特別税・地方税あわせて1本あたり15.244円…たばこ税の推移(最新)】の通り、たばこの販売店マージンは10.0%であり、他商品と比べて段違いの低さとなっている。「儲け」の観点では「たばこは儲かりにくい」と評しても問題はあるまい。たばこはむしろ集客アイテムとしての価値、ついで買いによる客単価の底上げ、リピート率の高さが魅力なのだが、その力のピークはすでに過ぎていることは、昨今の状況、さらにはコンビニ業界の月次営業報告書などからも明らか。以前と比べて各コンビニ店でたばこのラインアップを増強したり、積極的な宣伝活動をしているのは、少しでもその減退の影響を薄めようとしていると考えれば、納得はできる。
データの継続性・蓄積性や情報公開度合いを考慮し、ローソンのデータを基に精査を行ったが、他のコンビニでも状況に大きな変化はないものと考えられる。
各コンビニとも商品単価の高いアイテムや、独自の付加価値を織り込むことで、粗利益率アップを模索している。ローソンの「ウチカフェスイーツ」に代表されるような自社ブランドによる甘味系新商品の大規模展開、「艦これ」「けものフレンズ」の関連商品のような他分野で人気のあるアイテムとの共同開発・イベントの実施などが好例である。くじ系の展開も盛んだが、これはマニア層の集客が容易なことと、客単価を大きく引き上げる効果があるからに他ならない(1回分で平均客単価以上の価格のくじもある)。
そして見通しが立ちにくい状況となった「たばこ」の代替品として、ローソンも含めコンビニ大手ではカウンターに設置した専用機器によるドリップコーヒーの販売を拡大している。さらに関連商品の積極開発やイートインコーナーの展開など、キャラクタアイテム、スイーツに続き、コンビニの集客・売上向上を支える大黒柱的存在としてドリップコーヒーを位置づけ、実際にコーヒー側もその期待に応える成果を上げている。
多数のサービスを集約し、地域社会に浸透した「よろずや」的存在感をますます強めつつあるコンビニ。新型コロナウイルスの流行という社会の大きな変化を経て、さらにその重要性を高めつつある。高齢化社会の到来や「買物困難者問題」など、小売業に関係のある問題への対応をも見せながら、各種コンビニの施策がどこまで功を奏するのか。流行のアンテナ的な立場をも持つコンビニ各社の動向に、今後とも注目していきたい。
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