米世帯の年収推移

2012/09/03 06:45

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年収アメリカの調査機関【Pew Research Center】は2012年8月22日、アメリカ合衆国における「中流階級意識」に関する調査報告書【The Lost Decade of the Middle Class】を発表した。今回はその中から、約半世紀に渡る同国の世帯年収推移を見ていくことにする。



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今回参照するレポートのページは【Chapter 6: Census trends for Income and Demography】だが、データは【United States Census Bureau(米国勢調査局)】から直接取得する。

まずは同局のデータベース内から【Table F-3. Mean Income Received by Each Fifth and Top 5 Percent of Families】と、【Table H-5. Race and Hispanic Origin of Householder -- Households by Median and Mean Income】を取得。これらのファイルでは世帯を「五分位」(「所得の低い世帯から順に並べ、その上で全世帯を5等分にした結果」。【年収別・カップめんやインスタントラーメン、ハンバーガーへの支出額の違い(2011年分反映)】参照のこと)に区分した上で、さらには「上位5%」世帯における、それぞれの層の平均値が年ベースで記されている。当時の実額と、インフレを考慮して2010年におけるドルに換算した額の双方が記されているが、今回は後者を用いる。

データを取得したら、10年単位でのそれぞれの区分の平均額を算出。その上で、10年単位での変化を計算したのが次のグラフ。例えば1981-1990年の最高年収層(5/5)では14.8%という値が出ているが、これは「1971-1980年の最高年収層の平均年収(12万1684ドル)と、1981-1990年の最高年収層の平均年収(13万9720ドル)を比較すると、14.8%増加している」ことを意味する。

↑ 年収五分位における10年単位での平均年収推移(前期間比)(インフレ率考慮済み)
↑ 年収五分位における10年単位での平均年収推移(前期間比)(インフレ率考慮済み)

2001-2010年区分では2007年に始まる金融危機の関係で年収が落ち込んでおり、その前の区分と比べて平均年収の上昇率が落ちているが、それでもおしなべて「高年収区分ほど上昇率も大きい」という結果が出ている。1971-1980年では各年収区分で差はあまりなかったものの、1981年以降の各区分では比較的きれいな値で「高年収区分ほど上昇率も大きい」結果が出ているのが興味深い。

「10年単位では変移が分かりにくい」という話もあるかもしれないので、データが用意されている1966年以降の分について、インフレ率を考慮した上(2010年のドルに換算)で年ベースでの推移をグラフ化する。さらに1966年の値を1.0とした時、各年の年収が何倍に相当するかも併記する。

↑ 年収五分位における年収推移(ドル)(インフレ率考慮済み)
↑ 年収五分位における年収推移(ドル)(インフレ率考慮済み)

↑ 年収五分位における年収推移(インフレ率考慮済み)(1966年の値を1.0とした場合)
↑ 年収五分位における年収推移(インフレ率考慮済み)(1966年の値を1.0とした場合)

10年区分ではプラスになった2001-2010年においては、2007年以降の下落が大きなマイナス要因となったことが改めて確認できる。また、1980年前半まではどの区分もほぼ同じように年収が増加していたものの、それ以降は低年収層の年収はさほど変わらず、高年収層ほど年収の増加が著しいものとなっている。



各グラフの右側を見れば、金融危機以降の年収減退の大きさが改めて分かる。同じような年収が大きく減る現象は1980年前半、1990年前半にも起きているが、これは【米リセッション2009年6月終了宣言・期間は戦後最大の長さと確認】などで記した通り、過去のアメリカにおけるリセッション時期とほぼ一致する。

ただし、リセッション終了と共に回復を果たす年収のカーブにおいて、低所得層ほど戻り率が低くなっているのが気になる(一番最初のグラフもそれを裏付けている)。元記事のタイトルは「中級階層の失われた10年」とあるが、10年どころか30年が正解なのかもしれない。



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