「下流意識」の源はどこにでも…アメリカの階層意識による日常生活への満足度の違い

2012/08/31 07:00

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ランキングアメリカの調査機関【Pew Research Center】は2012年8月22日、アメリカにおける「中流階級意識」に関する調査報告書【The Lost Decade of the Middle Class】を発表した。今回はその中から、「上流意識」「中流意識」「下流意識」それぞれを持つ人における、昨今の日常生活についての満足度を見ていくことにする。



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今調査のうちPew Research Centerが調べた部分については、同社が2012年7月16日から26日にかけて、RDD方式で選ばれたアメリカ合衆国内に住む18歳以上の男女2508人に対して、電話の音声にて英語・スペイン語を用いて行われたもの。調査結果には国勢調査を基にしたウェイトバックがかけられている。

以前【アメリカの中流意識】でも伝えたように、全体では約半数の49%の人が「自分は中流階級にある」という意識を持っていた。「上流」は17%、「下流」は32%となる。

↑ 自分は上流・中流・下流のどの階層にいると思うか(米、2012年)
↑ 自分は上流・中流・下流のどの階層にいると思うか(米、2012年)(再録)

そして以前別記事で解説したように、この49%を占める「中流意識」保有者では、「家族との生活」の点で満足をしている人が8割近くに達している。

↑ 日常生活において次の点で満足しているか(米、2012年)(自分を「中流」と回答した人限定)
↑ 日常生活において次の点で満足しているか(米、2012年)(自分を「中流」と回答した人限定)(再録)

これを「上流意識保有者」「下流意識保有者」それぞれについて、同じような切り口で見ていくのが今件の話。まずは「上流意識保有者」。当然ながら満足度は極めて高い。

↑ 日常生活において次の点で満足しているか(米、2012年)(自分を「上流」と回答した人限定)
↑ 日常生活において次の点で満足しているか(米、2012年)(自分を「上流」と回答した人限定)

「家族との生活」「住宅環境」「教育環境」の3項目で3/4超、「家族との生活」では8割超で「満足」の回答が出ている。「中流意識」と比べても、濃い青の部分が多いのは一目瞭然。

一方で「家計財政環境」の点では「満足」は半数に届かない。以前【上流意識には相応の裏付けがある? …階層意識別に見る、米経済状況の変化】でも触れたが、「上流意識保有者」でも昨今の経済状態・お財布事情は厳しいということだ。

これが「下流意識保有者」になると状況は一変する。

↑ 日常生活において次の点で満足しているか(米、2012年)(自分を「下流」と回答した人限定)
↑ 日常生活において次の点で満足しているか(米、2012年)(自分を「下流」と回答した人限定)

「家族との生活」でも「満足」は6割足らず。「住宅」「教育」では不満派が2-3割に達し、「家計財政環境」に至っては「とても不満」だけで34%、「ちょっと不満」も合わせた不満派回答者が57%にも登る。

元々これらの項目で不満が多いからこそ、自らの立ち位置を「下流」と答えた点もある。今件のように細分化すると、日常生活のさまざまな、特にお金周りの点で不満を抱いている・抱かざるを得ない状況が、回答者自身を「下流」と判断させていることが把握できるというものだ。



参考までに、各階層の各項目における「満足」の回答率をひとまとめにしたのが次のグラフ。

↑ 日常生活において次の点で満足しているか(「満足」回答者率)(米、2012年)(自分がどの階層にいるかの認識別)
↑ 日常生活において次の点で満足しているか(「満足」回答者率)(米、2012年)(自分がどの階層にいるかの認識別)

「家族との生活」「住宅環境」では「上流」「中流」間の差異があまりないこと、「教育環境」「家計財政環境」では各階層ごとに大きな隔たりがあることなどが見て取れる。また、改めてお金周りの不満が高いことが分かる。「満足」「不満」は回答者の主観によるところも大きいとはいえ、色々と考えさせられる動きではある。



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