上流意識には相応の裏付けがある? …階層意識別に見る、米経済状況の変化
2012/08/29 12:10
アメリカの調査機関【Pew Research Center】は2012年8月22日、アメリカにおける「中流階級意識」に関する調査報告書【The Lost Decade of the Middle Class】を発表した。今回はその中から、本人の階層・階級意識別に見た、経済状態の変化について確認していくことにする。
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今調査のうちPew Research Centerが調べた部分については、同社が2012年7月16日から26日にかけて、RDD方式で選ばれたアメリカ合衆国内に住む18歳以上の男女2508人に対して、電話の音声にて英語・スペイン語を用いて行われたもの。調査結果には国勢調査を基にしたウェイトバックがかけられている。
以前【アメリカの中流意識】でも伝えたように、全体では約半数の49%の人が「自分は中流階級にある」という意識を持っていた。「上流」は17%、「下流」は32%となる。
↑ 自分は上流・中流・下流のどの階層にいると思うか(米、2012年)(再録)
それではまず最初に、10年間における経済的な安定状態の変化。10年前と比べて現在の自分は経済的に安定しているか否かを尋ねたものだが、数的にはほぼ半数を占める「中流」が「安定」「不安定」を、やはりほぼ半分ずつという結果。
↑ 10年前と比べて今の自分は経済的に安定しているか(米、2012年)(自分がどの階層にいるかの認識別)
興味深いのは「上流」と「下流」でほぼ相反する結果が出ていること。「上流」回答者ほど「経済的に安定」と答えるのは当然の話だが、数字的に「下流」とほぼ正反対の結果が出ている。そして上記にある通り、「上流」回答者は「下流」回答者の半数ほどしかいないので、全調査母体的には「経済的に不安定化している」という意見が多数を占めることになる
将来に悲観的であるか否か。これはどの階層でもあまり変わらない。
↑ 10年前と比べて今の社会は「将来に対して悲観的」であるか「楽観的であるか」(米、2012年)(自分がどの階層にいるかの認識別)
興味深いのは楽観主義の持ち主が、どの階層でも同じ比率しかいないこと。「10年前とあまり変わらない」とする考えが上流ほど増え、その分悲観論の持ち主が減っている。現状は上流意識保有者ですら、難しい状況にあるということか。
最後は10年よりもう少し手前、【米リセッション2009年6月終了宣言・期間は戦後最大の長さと確認】でも解説した、2007年12月に始まったリセッション以前と比べた、自分の世帯の経済状態。これは上記の「10年前と比べて今の自分は経済的に安定しているか」と比べ、下流意識保有者の悪化認識が強いことが分かる。
↑ 2007年12月から始まったリセッション以前と比べ、自分の世帯の経済状況は良くなったか(米、2012年)(自分がどの階層にいるかの認識別)
経済的な安定感と、自分の世帯の懐具合の良し悪しは一概には比較できないが(不安定だが懐は温かい、という場合もある)、上流意識者でも「良くなった」という回答が42%しかなく、「悪くなった」が34%もいるあたり、リセッションからの個人・世帯ベースでの立ち直りはまだまだ歩みが遅いように見える。
ちなみに最後の問い「リセッション以前と比べた、自分の世帯の経済状態」で「悪くなった」と回答した人に、「それでは自分の世帯がリセッション前位に回復するまで、あと何年ぐらいかかるか」と聞いたところ、1-4年が3割近く、5-9年が2割強という結果となった。
↑ リセッション前に回復するまで、あと何年かかるか(リセッション前と比べて今の自分は経済状態が悪化したと回答した人) (米、2012年)(自分がどの階層にいるかの認識別)
中央値はいずれの階層も5年。各年数区分にも大きな違いはない。下流ほど復旧までにやや時間がかかるというところか。あと5年のうちに再びリセッションが起きないことを祈りたいものだ。
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【アメリカの中流意識】
【米リセッション2009年6月終了宣言・期間は戦後最大の長さと確認】
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