生活意識は全体と比べややゆとり…高齢者の生活意識の変化(最新)

2024/07/27 02:45

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2024-0721先に【6割近くが「厳しい」意識…生活意識の変化実情(最新)】において、厚生労働省が毎年実施し結果を発表している【国民生活基礎調査】の結果をもとに「生活意識の状況」の変化について状況の精査を行った。今項目では他に「高齢者世帯」「児童のいる世帯」など、世帯条件を限定した設問もあり、こちらも経年データを取得確認できる。そこで今回は「高齢者世帯」にスポットライトをあてて、生活意識の変化を見ていくことにする。

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今調査の調査要件および注意事項は、「国民生活基礎調査」に関する先行記事【世帯平均人数は2.23人…平均世帯人数と世帯数の推移(最新)】で解説しているので、そちらを参考のこと。

今回精査する「生活意識の状況」は毎年調査が行われており、複数年の調査結果の値を取得できる。これは生活意識について「大変苦しい」「やや苦しい」「普通」「ややゆとりがある」「大変ゆとりがある」の5選択肢から1つを選んでもらい、その回答を集計したもの。そのうち高齢者世帯(65歳以上の人のみで構成するか、またはこれに18歳未満の未婚の人が加わった世帯)における各年の結果を抽出し、グラフ化したのが次の図。

なお2001年以降は概要報告書に具体的値が掲載されているが、それ以前は詳細データを収録している総務省統計局の公開データベースe-Statから値を取得し算出している。またグラフについては全体構成比の変化の他に、個々の項目の動きを把握しやすいよう、構成比棒グラフ以外に折れ線グラフも併記する。なお2020年は新型コロナウイルス流行の影響で調査そのものが実施されておらず、回答値も存在しない。

↑ 生活意識別世帯数の構成割合(積み上げグラフ、高齢者世帯)
↑ 生活意識別世帯数の構成割合(積み上げグラフ、高齢者世帯)

↑ 生活意識別世帯数の構成割合(折れ線グラフ、高齢者世帯)
↑ 生活意識別世帯数の構成割合(折れ線グラフ、高齢者世帯)

昔から現在に近づくに連れて「苦しい派」(「大変苦しい」「やや苦しい」の合計)が増加していたのは全体値における動向と同じだが、「普通」の減少が2005年前後でほぼ止まり、最近ではむしろ微増の動きすら見られたのが「全体値」との大きな違い。全体値では「大変苦しい」「やや苦しい」「普通」の値が互いに近づきあう雰囲気すらあるが、高齢者世帯に限ればその動きは顕著なものではない。時代の流れとともに生活への厳しさが積み増しされる点では変わりないが、「全体」と比べて非常にペースはゆるやかといえる。

2014年は「苦しい派」が大きく上昇している。消費税率の引き上げは高齢者世帯の景況感には大きく作用したようだ。それ以降では「苦しい派」がいくぶんの減少を見せているのも全体値と変わらない。直近の2023年ではロシアによるウクライナへの侵略戦争で生じた世界的な資源高騰による物価高、特に食料品や、電気代・ガス代・ガソリン代のようなインフラ関係の大幅な値上がりが、生活意識への認識を厳しいものとさせたようだ。

この状況を分かりやすくするため、全体・高齢者世帯ともに「苦しい派」の動きを見たのが次のグラフ。

↑ 生活意識別世帯数の構成割合(「大変苦しい」+「やや苦しい」、全体値と高齢者世帯)
↑ 生活意識別世帯数の構成割合(「大変苦しい」+「やや苦しい」、全体値と高齢者世帯)

1997年と2005-2006年にはほとんど差異が無い状態になったものの、それ以外の期間ではおおよそ5%ポイント前後の違いが生じている。ただ、2014年以降はいくぶん差異が小さくなったように見え、直近2023年では差はほとんどゼロ(実際には0.6%ポイント)となっている。

ただし一つ前のグラフを見返し、「苦しい派」のみで動きを見ると、2005年で約半数に達した後は大きな動きは無かったものの、内部では確実に「大変苦しい」が増加していたのが分かる。「苦しい派」の中でも「大変苦しい」が増加していたこと、それが「苦しい派」を底上げしていたのが、2014年ぐらいまでの高齢者におけるトレンドといえる。そして2015年以降は逆に「大変苦しい」の減少が「苦しい派」の値を下げる要因となっていることも事実ではある。



今件データは「世帯が調査日時点での暮らしの状況を総合的にみてどう感じているかの意識」を選択肢から選んでもらったもの。回答者一人一人の主観によるところが大きい。例えばエンゲル係数や可処分所得の推移のような具体的な数字の変化ではないため、その点を留意しておく必要がある。つまり心理的影響が多分にある。

また、2014年の時のように、調査直前に経済的な事象が生じると、イレギュラー的な影響が数字に反映されることがある。それこそ該当年は毎月同様の調査を行い、その平均値を年ベースの値とすれば、ぶれも小さくなるのだろうが、それは不条理でしかない。単年での動きもさることながら、数年単位での変動にこそ、注視をすべきだろう。

その上で、高齢者世帯においては全体平均と比べ、生活に余裕があるか否かの点ではやや余裕がある状態が続いている。この実情は把握しておいても損はあるまい。


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