売上で課金が広告を抜く、登録ユーザー数非開示へ…mixi動向(2012年6月)

2012/08/04 12:00

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【ミクシィ(2121)】は2012年8月3日、2012年度第1四半期(2012年4月-6月)における四半期決算短信を発表すると共に同決算説明会を開催、資料の公開を行った。その資料などから、以前【mixiの現状(2012年3月末時点)】でもお伝えした、同社が運営するSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)【mixi】の会員数などの動向が「一部」明らかになった。今回はそれらの資料からグラフを再構築・構成し、「可能な範囲で」「継続データについて」mixiの現状を眺め見ることにする(【発表リリース一覧ページ】)。



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スマートフォン浸透進む、そして登録ユーザーの非開示化へ
資料によれば2012年6月時点でのmixiの主要データは次の通り。提示された資料は2012年度第1四半期(2012年4月-6月)のもので、基本的に2012年6月末のデータが提示されている。

・月間ログインユーザー数(月1以上でログインしたユーザー数、MAU)
 ……1453万人
・登録ユーザー数
 ……非開示
・月間ページビュー数(2012年6月分)
 モバイル(フィーチャーフォン)……110.0億
 パソコン……20.2億
   Touch(スマートフォン)……27.0億
  計……157.2億

月間滞在時間のデータは非公開を継続中。さらに今回、太赤文字で記したように、「登録ユーザー数が非開示化」された。前四半期の情報開示時にミクシィと一部報道との間で「やり取り」があった際、この値にもいくつかの指摘がなされていたのは事実だが、【mixiのユーザー数と「アクティブ」ユーザー数推移(2012年3月分対応版)】などにもある通り、ソーシャルメディアの現状を推し量る一つの指針として欠かせないデータにも違いない。継続性を破棄し、データの非開示化がなされるのは、極めて残念でならない。

なおページビューの減少傾向、月間ログインユーザー数の成長鈍化についてリリースでは、直接的には「1ページの情報量が多いスマートフォンへのユーザー移行」「スマートフォンでは一部アプリの利用において、ページビューに反映されない」「ユーザー利便性を優先したインターフェイスの変更で、(誤操作や迷いのための別ページ視聴が起きにくく)ページビューが減退している」と説明している。後述するようにスマートフォン(向けのTouchの)ページビュー数は確実に増加している。

ビジネス的な視点での対応策・今後の施策として資料では「外注から内製化を推し進めコストを下げる」「初心者ユーザーへのアプローチの強化」「内製チームの機能単位でのユニット化と各ユニット内での収益化の取り組み」「フィーチャーフォンからスマートフォンへの注力スライド」「アプリ、特に課金周りの事業強化」などを上げている。

気になるのは前四半期までしばらくの間強調されていた、「ソーシャルメディアとしてのmixiを母体とした多方面からのプロデュース」「デジタルとリアルの相互作用」項目が「ユニット」の一構成要素としてのみ登場し、優先順位が押し下げられた感があること。同時に注力されていた「アプリ課金による売上」が数字の上で堅調さを見せたこともあり、しばらくはこの点にリソースを重配置したものと考えられる(実際、第1四半期の営業成績の堅調さは、課金アプリの伸びが支えている)。

スマートフォン利用者数の増加については、スマートフォン向けに最適化されたmixiこと「mixi Touch」のログインユーザー数増加が、それを裏付けるひとつのデータとなる。なお今回資料では単に「スマートフォンMAU(Monthly Active Users。月一回以上利用した人を意味する)」と掲載されている。

↑ mixi Touch+公式アプリログインユーザー数(万人)
↑ mixi Touch+公式アプリログインユーザー数(万人)

今回四半期短信では上記にある通り、登録ユーザー数が非開示となったため、「ユーザー登録をしているにも関わらず、一か月の間一度もログインしなかった」人の数が計算できなくなってしまった。毎四半期ごとにこの値を算出し、mixiの動向を鑑みる材料の一つとしていただけに、繰り返しになるが、残念でならない。もっとも月間ログインユーザー数も去年春以降は横ばい、今年に入ってからは漸減傾向にあることが確認できる。

直上のグラフの解説にもある通り、「システムの整理統合改変やインターフェイスの改善でページビューが減る」「1画面当たりの情報量が少ない一般携帯電話(いわゆるフィーチャーフォン)から、情報量の多いスマートフォンへ利用者が移行することで、総表示ページ数が減退する」との指摘は以前からのものだが、現在のmixiではその状況がリアルタイムかつダイナミックに進行している。また、以前【国内主要ソーシャルメディアのアクセス機器傾向】でも外部調査機関の調査結果として「携帯電話・スマートフォン向けの画面構造上、同じようなアクセス・巡回でも、パソコンより携帯の方がページビュー数が増えてしまう」との技術的解説をしている。この逆の現象(スマートフォンの方がパソコンに近いため)が、今mixiで起きている。

さて以前の記事と同様に、直近のmixiにおけるパソコン(PC+(Touch=スマートフォン))・モバイル(フィーチャーフォン)経由の月間PV(ページビュー)、及び会員数の推移をグラフ化したのが次の図。今回の資料でも月次ベースの会員数推移が非公開となっている(6月末時点のは上記の通り)。そこで可能な範囲で数字を入力し、グラフ生成を行う。

↑mixiのユーザー数、ページビュー数など(パソコン経由とモバイル経由)推移
↑ mixiのユーザー数、ページビュー数など(パソコン経由とモバイル経由)推移

グラフからは、2009年秋のmixiアプリ導入をトリガーとし、大きくモバイルのページビュー数が飛躍した様子が確認できる。また2011年後半期以降は概してページビュー数が横ばいから、減退する方向に見て取れる。これは前述の通り「仕様の変更」「一般携帯電話からスマートフォンへの移行が急速に進んでいる」のが要因。単純に同一環境下における減退ではないことに注意する必要がある。

また営業成績の面から見ると、今四半期で課金売上が広告売上を追い抜いており、(どちらが先か、起因かは別として)収益構造とページビューの変化が同時に起きていることが認識できる。

↑ミクシィ全体の売上高・四半期単位(億円)
↑ ミクシィ全体の売上高・四半期単位(億円)

「PV視点で」mixiがモバイルSNSであることに変わりなし。そして躍進するスマートフォン
次のグラフはページビューにおけるPC・モバイル・Touch(=スマートフォン)の比率。Tocuhは2010年5月導入(ただし5月末スタートなので、同月は実績ゼロ)のため、それ以降に限定したグラフも併記した。それ以前はもちろん、それ以降もパソコン用サイトをスマートフォン経由で閲覧する事例は少なからずあることを、考慮しておかねばならない。

↑ PVから見たmixiのモバイル・PC・Touch率推移
↑ PVから見たmixiのモバイル・PC・Touch率推移

↑ PVから見たmixiのモバイル・PC・Touch率推移(2010年5月-)
↑ PVから見たmixiのモバイル・PC・Touch率推移(2010年5月-)

アプリを先行導入したことで2009年9月-10月はパソコンがやや押し返したものの、モバイル版導入後の2009年11月以降は逆に押し戻され、むしろモバイルの数値増加が加速しているのが見て取れる。

また、スマートフォン専用アプリのTouchが導入された以降は、確実にスマートフォン利用者によるページビュー数が増加。パソコンの減退分を補完してあまりほどの勢いを見せている(無論、パソコン・フィーチャーフォン・スマートフォンそれぞれで視聴スタイルは異なるため、同じページビュー数でも横一列に並べるのは多少無理がある。あくまでも単純に数字化した上での比較に過ぎない)。

ちなみに直近データをこの「モバイル」「パソコン」「mixi Touch」の区分で詳しい数字を盛り込んでグラフ化すると次の通りとなる。

↑ 2012年6月時点での、モバイル・パソコン・mixi TouchのPV比率
↑ 2012年6月時点での、モバイル・パソコン・mixi TouchのPV比率

↑ 2012年3月時点での、モバイル・パソコン・mixi TouchのPV比率
↑ 2012年3月時点での、モバイル・パソコン・mixi TouchのPV比率(再録)

「モバイル」「パソコン」ともに大きく数は減少。代わりに「Touch(スマートフォン)」が比率の上で大きく伸びを見せている。「モバイル」「パソコン」のシェアを「Touch」が大きく奪った形である。またパソコン用画面をスマートフォンで見る人は多分に想定できるが、mixi Touchをパソコンで使うのは意味がないことを考慮すると、スマートフォンとフィーチャーフォンを合わせたモバイル率は、約9割に達していると見てよい。

なお、スマートフォンに限ると「MAU」が増えているのに、ページビュー数がほぼ横ばいの動きを示している点。これはスマートフォン経由の利用者の多分が、日記機能など従来のソーシャルメディアとしての使い方ではなく、ゲームをはじめとしたアプリを多用しているものと考えられる。アプリの利用はページビュー数にカウントされない場合が多いからだ。

世代構成分布
「決算説明会資料には他にも多数の興味深いデータが掲載されている。そのうちmixi会員の年齢階層比率をグラフ化し、その傾向を眺めてみる」のが定例の一連の記事でのパターン。関連データは以前「登録者ベース」だったものが、しばらく前から「月間ログインユーザー(MAU)ベース」に変更となり、かつ「全ユーザー」のみの公開で「モバイルユーザー」に限定した数字は非公開となってしまった。モバイル利用者の動向も大いに気になるため、情報が開示されないのは非常に残念な話ではある。

もちろん「登録者ベース」と比べると「現時点での利用者」という性質が強くなるため、「mixi全体の」との視点としては多少ぼやけた形となることに留意して欲しい(視点を変え「現在利用している人たちにおいて」としてなら精度は高いことになる)。まずは直近の値について。

↑ mixi会員の年齢階層別比率
↑ mixi会員の年齢階層別比率

2012年6月末時点でも最多階層が20-24歳であることに違いはない。

これを前回・前々回、つまり3か月前・6か月前のデータと比較すると、別の動きが見えてくる(あくまでもアクティブユーザーの階層比であることに注意)。

↑ mixi会員の年齢階層別比率(全ユーザー)
↑ mixi会員の年齢階層別比率(全ユーザー)

今回のグラフからは、

・10代半ばの増加
・20代-30代前半の減少
・40代以降は横ばい

の傾向が確認できる。全体として、現在比率的に中枢にある「年齢的中堅層」は少しずつその比率を減らし、若年層・高齢層が漸増し、年齢階層のバランスが調整されつつあるように見える。特に現時点では「初心者ユーザーへのアプローチの強化」を指針の一つとして挙げており、10代、中でも15-17歳層の増加は喜ぶべき話といえる。

これら世代別会員数の動向については、機会をあらためて、もう少し別の切り口でも精査してみることにしよう。



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