「災害時の自動対応なら月200円以上払っても良い」…高齢者向けタブレット機サービスの支払意思額(2012年版情報通信白書より)
2012/07/29 06:40
2012年7月17日に総務省が発表した【情報通信白書】の2012年版(【発表リリース】)では、構成要素の一部として以前【インターネット機器としてのモバイル機器とパソコンの所属世帯年収別利用率(2011年分データ反映版)】などで記事にした「通信利用動向調査」の結果を元にしている。その一方、他にも多彩な資料を元に注目すべきデータを多数収録している。今回はその中から、タブレット機による高齢者向けサービスに対する支払意思額を、複数の視線から見ていくことにする(【該当ページ:第1部 特集 ICTが導く震災復興・日本再生の道筋 第2節 「スマートフォン・エコノミー」-スマートフォン等の普及がもたらすICT産業構造・利用者行動の変化-(3)高齢者のタブレット端末利用の可能性】)。
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今調査項目は高齢者(60歳以上)1559人、および60歳以上の親と別居中・親にタブレットパソコン(PC)をプレゼントしようという意向が少しでもある30-40代の子供826人に対し、インターネット経由で行ったもの。また別途、パソコンをほとんど使っていないがタブレット端末に少しでも興味がある60歳以上に対し、郵送調査を行った結果(353人)が含まれている場合もある。どの母体を対象としているかは、随時各項目で記述する(【調査要件詳細】)。
以前別記事で伝えたが、パソコンを使っている高齢者自身はタブレット機によるサービス利用意向そのものは強い。しかし有料サービスとなると、ごく一部を除き利用には躊躇するようすがうかがえる。
↑ タブレット端末で統合的に提供されるサービスの利用意向(60歳以上・PC利用者)(再録)
それでは具体的に、どの程度の額なら支払っても良いと考えているだろうか。次のグラフは各サービスの包括的な基本利用料金の、支払い希望金額を意味している。例えば高齢者・パソコン利用者における「スーパー・コンビニなどからの配送」は98円となっているが、平均して月額98円の基本料金ならば、「スーパー・コンビニなどからの配送」サービスを利用しても良いと考えている(個々の実配送における料金は別換算)。
↑ タブレット機による高齢者向けサービスの支払意志額(円/月)
「高齢者(パソコン利用者)」はすでにパソコンが利用できることもあり、代替手段があるので、各サービスに対する評価はいくぶん厳しい=安めの設定となっている。ところがパソコンで痛い目に会っている、あるいは難儀を覚えている項目では、逆に他の回答属性よりも高い金額を設定しているところが興味深い。高い価格は(高齢者向けの配慮がなされていることに期待し)、それだけの価値があると判断していることになる。
また、「高齢者(パソコン未利用者)」と「親にプレゼントしたい子供」を比較すると、誰もがイメージしやすい項目ではほぼ同じ対価設定をしているのが分かる。他方「健康管理」「スーパーやコンビニなどからの配送」「振込・年金手続きなどを自宅で」は「高齢者(パソコン未利用者)」の値の低さが目に留まるが、これについて白書側では「未利用者が具体的な利用シーンをイメージできないので、対価そのものを想定できないのではないか」と推定している。見たことも聞いたことも考えたこともない、便宜性が分からない対象に「いくらまでなら払えるか」と尋ねられても、答えようがないというのは、至極もっともである。
なおこれらのサービスは未来技術でも将来可能性のあるサービスでもなく、現在のパソコンで実現可能なレベルのもの(例えば「詐欺やウイルスがほとんどない」は専用の端末の用意・インターネットへの自由アクセスを制限することで、実現が可能となる)。また、ICT(情報通信技術)に長けた高齢者なら、いくつかはすでに利用しているかもしれない。
もっとも、パソコンをある程度使いこなし、サービスへの利用も可能な高齢者ではなく、あまりICTに馴染みのない層にこそ、これらのサービスを利用することで、便益を受けてほしいという思惑が(メーカーや行政側において)大きいのもまた事実。グラフ中の青色の棒よりは、赤色の棒の動向に注目する必要があるのは言うまでもない。
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