中国は63.7%が石炭、フランスは67.1%が原子力、日本は39.1%が天然ガス…主要国の電源別発電電力量の構成実情(最新)

2023/09/02 02:40

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2023-0822電気は色々な形に変換しやすいエネルギーとして重宝され、現代社会には欠かせない存在。それゆえに国家レベルの視点で「自国内で原材料を算出できるか否か」「輸出でまかなえるものか否か」「工業構造や政治上との関連性、リスクの高低」など、多様な影響を受けやすい状況下でも、極力安定供給を継続すべく、最大限の努力が払われねばならないものでもある(人間における食事、あるいは血流のようなものだ)。視点を変えれば、電気の電源別発電電力量構成を確認することで、個々の国の経済・政治体系がすけて見えてくる。今回は主要国における、電源別の発電電力量の構成を視覚化し、その実情を推し量ることにした。

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今件記事に関して一次資料となるものはIEA(国際エネルギー機関:International Energy Agency)が毎年発行している「Data and Statistics」。しかしこれは有料(しかも高額)資料なため、今サイトの趣旨「第三者が容易に取得できる資料を基に記事を構成する(=検証しやすい)」に反することから、これを用いることができない。これを元に探したところ、日本原子力文化財団などが発行している【「原子力・エネルギー」図面集】の最新版などにおいて該当データを見つけることができた。早速この値を用い、グラフを作成する。

今グラフは電気の発電様式を主要な発電方法、具体的には石炭・石油・天然ガス・原子力・水力・その他に区分し、それぞれの発電「量」(瞬間時の能力を示した「能力」ではない)を総計電力量比で示したもの。なお2020年分から「その他」から分離する形で「太陽光・風力」の項目が新設されている。

↑ 主要国の電源別発電電力量の構成(2020年)
↑ 主要国の電源別発電電力量の構成(2020年)

特徴を箇条書きにすると

・カナダ、ブラジルは水力発電の比率が高い。自然をフルに活用できる環境を有効に活かしている。特にブラジルは63.8%が水力で占められている。

・イタリアには原子力が無い。国策による結果。

・ロシア、イギリス、イタリアなど欧州地域は天然ガスに寄るところが大きい。

・中国やインドなどの新興国では石炭傾注度が高い。

・フランスでは7割近くを原子力に頼っている。

・日本の原子力は3.8%。

などが挙げられる。

各国のエネルギー事情は【各国エネルギー政策が見えてくる・世界主要国のエネルギー源(最新)】などでも解説しているが、

・イタリアは1987年に脱原発政策が国民投票で決定してから、原発ゼロを貫いている。現在では方針転換を二度繰り返し、結局原発ゼロは継続。

・フランスはエネルギー面でも独立独歩的な政策を現実のものとするため、他国に関与されにくい原発を促進している。一時的に大きな方針転換が行われる可能性が出てきたが、現在ではその動きも沈静化している。

・中国は電力の6割強を石炭から得ているが、これは石炭が安価で経済性に優れているから。ただし環境面での負担も大きいものと考えられる。

などがある。それらが電力量構成にそのまま反映されている。また欧州情勢で話題となった、西欧諸国とロシアとの間におけるパイプライン供給でのガスをめぐる駆け引きや、ブラジルのダム建設問題なども、このグラフを見ながら考察し直すと、なるほど感を覚えることができる。

ちなみに石油のほとんどを輸入に頼っている日本だが、電力発電用としての比率は今回取り上げた国の中ではイタリアに次ぐ大きな値を示している。これは2011年3月に発生した震災とその後の政情的混乱により原発の稼動が止められ、不足した電力を火力発電所で補うための結果によるものである。

↑ 主要国の電源別発電電力量の構成(一部、前年比、ppt)(2020年)
↑ 主要国の電源別発電電力量の構成(一部、前年比、ppt)(2020年)

これは今回直近となった2020年の値と、前回年の2019年の値を比較したものだが(項目構成が変更になった「太陽光・風力」「その他」は除外している)、いずれの国でも石炭が減少し、天然ガスが増えている。特に日本では天然ガスの増え方が大きなものとなっているが、これは「原子力」の減少分を補うためのものと読み取ることができる(2020年は2019年と比べて原発の設備利用率が21.4%から15.5%に減少している。原子力産業新聞 【2020年の原子力発電設備利用率は15.5%】 より)。

当然のことながら電気そのものは目に見えることはなく、コンセントにも「原材料は●×です」と書かれているわけではない。発電の原材料で電気の質に違いが生じるわけでもない。インフラがしっかりと安定的に整備されている中で日々を過ごせる、「当然のように繰り返される日常」、そのインフラを絶えず支えている関係者に感謝をしつつ、電気が作られた「素」に思いを馳せることをお勧めしたい。


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