世帯平均所得は524.2万円…世帯あたりの平均所得金額推移(最新)
2024/07/26 02:29
厚生労働省は2024年7月5日に、平成5年版(2023年版)の「国民生活基礎調査の概況」を発表した。この調査は国民生活の基本事項を調べ、各行政の企画や運用に必要な資料を収集する目的で行われているが、日本における市民生活の実情を把握できる多彩なデータが盛り込まれている。今回はその中から「世帯単位での平均所得金額」を確認し、その動向について精査していくことにする(【発表ページ:令和5年 国民生活基礎調査の概況】)。
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平均所得は524.2万円、平均所得以下の世帯は62.2%
今調査の調査要件および注意事項は、先行記事の【世帯平均人数は2.23人…平均世帯人数と世帯数の推移(最新)】にて説明している。そちらを参考のこと。
早速だが次のグラフは、2022年までの各年における世帯所得の平均額推移を示した図。全世帯の他に、高齢者世帯(65歳以上の人のみ、あるいはそれに18歳未満の未婚の人が加わったもの。例えば高齢世帯に18歳以上の人が加わり、稼ぎ頭がいそうな世帯は該当しない)、児童あり世帯(18歳未満の未婚の人がいる世帯)別の動向もまとめてグラフに盛り込んでいる。なお今件の直近分は報告書の題名が「2023年版」ではあるが、聞き取り時には当然2023年は終了していないため、2022年の1年間分に関して調査が行われており、2022年分の回答値が最新となっていることに注意。また、2020年実施予定だった2019年分は、新型コロナウイルス流行の影響で調査そのものが実施されなかったため、値が存在しない。
↑ 1世帯あたり平均所得金額(世帯構造別、万円)
直近では全世帯平均の所得金額(世帯全体の金額。年金や保険も含む)は524万2000円。児童がいる世帯では働き盛りの世帯主がいる場合が多く、配偶者もパートなどで家計を支えている事例も多々あり、平均所得は高めに推移しており、2022年分では812万6000円となる。一方高齢者世帯では年金による所得が多分を占め、304万9000円となっている。
また経年による変化を見ると、全世帯と高齢者世帯では取得可能なデータの期間において20世紀末に最大額を記録し、あとは漸減。2022年における全世帯の524万2000円は、最大値を示した1994年の664万2000円よりは140万円も少ない。一方で児童のいる世帯では最大額は2020年の813万5000円で、直近2022年はそれより少ない812万6000円にとどまっている。
なお【1950年と比べて9.20倍…過去70年あまりにわたる消費者物価の推移(最新)】でも示した通り、この40年近くの間は消費者物価指数にさほど大きな変動はなく、額面を修正して実態を考察する必要はない(そのままの額面で受け止めて問題はない)。つまり全体で均して考えると額面通り、生活は少しずつ厳しさを増していたと考えてよい。そしてここ4、5年で、いくぶん改善したという感じだろうか。
↑ 消費者物価指数(全国、持家の帰属家賃を除く総合、年次、1950年の値を1.00とした時)(2024年分は直近月の値)(再録)
ただし全世帯に関しては平均所得金額が低めの高齢者世帯の割合が増加しているため、それが平均値を引き下げる要因となっていることも指摘しておく。
直近の2022年分について、額面区分別構成世帯率は次の通り。平均額は524万2000円だが中央値は405万円。平均値以下に多くの世帯が収まっているのが見て取れる。平均所得金額以下の世帯比率は6割を超えていること、そして低所得世帯数の多さ、高所得層によって平均所得がかさ上げされているようすが把握できる。
↑ 所得金額階層別・世帯数相対度数分布(2022年分・2023年調査)
世帯平均所得は他の調査でもいくつか値が出ているが、今「国民生活基礎調査の概況」で精査を行う場合は、平均額だけでなく中央値も併用することが望まれる。単純に平均所得だけで勘案すると、世間全体としての実情からのずれが生じかねないからである。同時に、あくまでも全世帯を対象にした値であり、単身世帯や高齢者世帯のような所得金額が元々低い世帯も含まれており、その世帯数の割合が大きく影響することも忘れてはならない。
世帯の種類別に現状を見てみると
一方、昨今において全体値としての平均所得が減少傾向にある理由の一つに挙げられるのが、低所得世帯となりやすい高齢者世帯数の増加。上記折れ線グラフの通り、児童あり世帯や高齢者世帯それぞれのみでは21世紀に入ってから横ばいを維持しているのにもかかわらず、全世帯の平均額は漸減している(2012年ぐらいからは一時的に盛り返しを見せたが)。これは主に年金生活をしており所得が低い高齢者世帯の、全体に占める割合が増加しているからに他ならない。高齢者世帯の増加傾向はすでに【お一人な高齢者、女性は男性の1.81倍…高齢者世帯数の推移(最新)】で示した通り。
そこで補完情報として3つほどの世帯形態を挙げ、直近年分の世帯数分布を見ていくことにする。まずは母子世帯と高齢者世帯「以外」の世帯による動向。取得データの関係から、1000万円以上の区分がやや粗くなっている。
↑ 所得金額階層別・世帯数相対度数分布(母子世帯・高齢者世帯以外)(2022年分・2023年調査)
所得のばらつきがやや大きく、平均額以下の割合も低め。平均所得は656.0万円、中央値は559万円となっている。
続いて「標準4人世帯」における値。これは【総務省による定義では】「夫婦と子供2人の4人で構成される世帯のうち、有業者が世帯主1人だけの世帯に限定したもの」とある。今件でも同じものと見てよいだろう。つまりは「子供2人持ちの専業主婦がいる世帯における動向」と見ればよい。
↑ 所得金額階層別・世帯数相対度数分布(標準4人世帯)(2022年分・2023年調査)
平均所得は887.4万円、中央値は795万円。他のグラフと比べてボリュームゾーンがやや右にシフトしているようすがうかがえる。切り口を変えれば世帯主のみの就労でこのレベルの所得を確保しないと、子供2人世帯において兼業しなくても済む状況は難しいとも見ることもできよう。
最後は「母子世帯」(死別・離別・未婚(いわゆる婚外子、非嫡出子)などで、現に配偶者のいない(配偶者が長期間生死不明の場合も含む)65歳未満の女性と、20歳未満のその子(養子含む)のみで構成している世帯)。ただし今調査では母子世帯の実数は少なく、統計の上ではぶれが生じている可能性が少なからずあることを書き添えておく。
↑ 所得金額階層別・世帯数相対度数分布(母子世帯)(2022年分・2023年調査)
男性より女性の方が平均的な就業対価は低めであることに加え、育児も同時に必要なケースが多々あることから(少なくとも祖父母は同居していない)時間も多分に拘束されるため、所得水準は極めて低い。平均所得は全世帯平均の6割程度にとどまっている。多くは望まずしてその立場にあることを考えれば、世帯数そのものは少数であるとはいえ、社会全体によるサポートが強く求められるところではある。
※追記:(2015年公開版から)
一般的には「所得」と「収入」は同義語として用いられる場合もあるが、「所得」は税法上は「収入」から経費や控除を引いて、課税額を判断するための算定額を意味する。国民生活基礎調査では用語の説明中で今回取り扱った「所得」に関して「稼働所得」「公的年金・恩給」「財産所得」「年金以外の社会保障給付金」「仕送り・企業年金・個人年金・その他の所得」と分類し、さらに「稼働所得」は「雇用者所得」「事業所得」「農耕・畜産所得」「家内労働所得」と区分している。
そのうち「雇用者所得」は「世帯員が勤め先から支払いを受けた給料・賃金・賞与の合計金額をいい、税金や社会保険料を含む。なお、給料などの支払いに代えて行われた現物支給(有価証券や食事の支給など)は時価で見積もった額に換算して含めた」と説明されており、税引き前の額面を意味している。サラリーマンの場合は給与明細を見れば分かる通り、あらかじめ控除として税金や社会保険料の額が引かれて上で手取り収入として渡されるため、実質的には今件の「所得」は収入に近しい。また「事業所得」は「世帯員が事業(農耕・畜産事業を除く)によって得た収入から仕入原価や必要経費(税金、社会保険料を除く。以下同じ)を差し引いた金額をいう」とあり、こちらは所得そのままを意味する。
一方、税法上ではサラリーマンなどが受け取る給与に該当する給与所得は、収入金額から給与所得控除額を引いた額が相当。またいわゆる「可処分所得」は実収入から税金、社会保険料などの非消費支出を差し引いた額で、俗にいう手取り(収入)を意味する。
国民生活基礎調査で雇用者所得が実質的に収入に近い値で算出されているのは、税金や社会保険料は経費ではなく、他の稼働様態ならば所得から改めて支払うことになるため。なお今記事でかつては一部収入と所得を混在した表記がなれていたが、2015年に公開した記事以降、正しい、国民生活基礎調査にて表記されている言い回しに統一した。
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