米図書館会員率58%、図書館を「大切だ」と思う人は69%
2012/06/28 12:10
アメリカの調査機関【Pew Research Center】は2012年6月22日、アメリカの図書館や本好きな人、そして電子書籍に関する調査結果【Libraries, patrons, and e-books】を公開した。今回はその中から、図書館会員比率や、図書館の重要視度について見ていくことにする。
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今調査は2011年11月16日から12月21日において、アメリカ合衆国国内で生計を立てている16歳以上の男女に、RDD方式で選ばれた電話番号に対する電話による口頭インタビュー形式(英語・スペイン語を利用)で行われたもので、有効回答数は2986人。固定電話は1526人、携帯電話は1460人(うち固定電話を持たない人は677人)。インターネット利用者は2571人。統計結果には国勢調査の数字に基づいてウェイトバックがかけられている。
以前【新たな本との出会いのきっかけ、図書館会員はより大きな「耳」を持つ】で示した通り、図書館会員は本に関する情報収集意欲に長けている(あるいは逆で、本に深い関心を抱くからこそ図書館の会員となっているという考え方もある)。なお「図書館会員」とは「図書館の会員(貸し出し)カードを持っている人」。原文では「Library card holder」だが、分かりやすい表記に直している。
↑ 本に関する「おススメ情報」をどこから受けるか(米、2011年12月)(再録)
この「図書館会員」について、実際にはどれだけの人が該当するのかを確認したのが次のグラフ。全体(16歳以上)的には58%の人が該当している。大体5人に3人の割合である。
↑ 図書館会員比率(各属性別)(米、2011年12月)
性別では圧倒的に女性の方が多く、20ポイント近い差をつけている。これは多分に、子供のために本の借り入れを行う母親の取得が影響しているものと考えられる(一番右の「子供のあるなし」がそれを裏付けている)。世代別では若年層ほど高く、高齢層ほど低いが、差は絶対的なものでは無い。
一方、年収や学歴ではそれなりに大きな違いが見受けられる。全般的には高収入・高学歴ほど比率は高い。特に学歴は明確な差が出ており、「高卒未満」と「大卒以上」とでは2倍近くにも差が開いている。利用機会、必要性の差が会員比率に現れたと考えれば、道理は通る。
それでは図書館の重要性・役割に対する認識はどのようなものだろうか。「別に無くてもよい」という軽視した見方をしているのか、「自分たちにとって欠かせない、重要なものである」と考えているのか。
↑ 「図書館は重要」か否か(「とても重要」「やや重要」を「重要」、「あまり重要でない」「全く重要でない」を「重要でない」で区分し、そのうち「重要」回答者)(米、2011年12月)
会員であるか否か程明確な形ではないが、やはり利用性向の高い属性ほど、図書館への重要性を認識している動きを見せている。ただし世代別では若年層の重要認識度が低い(「勉強」との連動性によるものか、あるいは蔵書のラインアップの問題か)、世帯収入別の差異がほとんどない(高収入世帯は「仮に無くても自分で買えばよい」という選択肢を楽に選べるからか)などのイレギュラーな流も確認できる。逆に、高卒未満は「4割しか会員でない」にもかかわらず、6割が重要性を認識するなど、興味深い結果も出ている。
日本では図書館に関する類似の調査は、ほとんど見受けられない。3年おきに行われる社会教育調査の一部に確認できる程度である(【1年間で36冊・7回近く……図書館を利用する小学生、借りる冊数も通う回数も増加中】)。今後電子書籍の増加普及と共に、切り口次第ではむしろ図書館の重要性が増してくることを考えれば、図書館に関する調査をもっと積極的に行い、現状に即した変化を助ける材料を提供してほしいものだ。
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