最近読んだ本、どこで手に入れた? 米図書館会員・非会員別の書籍調達傾向
2012/06/27 12:10
アメリカの調査機関【Pew Research Center】は2012年6月22日、アメリカの図書館や本好きな人、そして電子書籍に関する調査結果【Libraries, patrons, and e-books】を公開した。今回はその中から、図書館会員であるか否かなどによる、読むための本の調達ルートについて見ていくことにする。
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今調査は2011年11月16日から12月21日において、アメリカ合衆国国内で生計を立てている16歳以上の男女に、RDD方式で選ばれた電話番号に対する電話による口頭インタビュー形式(英語・スペイン語を利用)で行われたもので、有効回答数は2986人。固定電話は1526人、携帯電話は1460人(うち固定電話を持たない人は677人)。インターネット利用者は2571人。統計結果には国勢調査の数字に基づいてウェイトバックがかけられている。
紙媒体にせよ電子書籍にせよ、本を読みたい場合、通常はその本を「買う」か「借りる」の2通りの手段で手元に収めるしかない。そこで過去一年間に形態(紙、電子、音声)を問わず本を調達(手にしたという意味。購入・借用双方を意味する)した人に、一番最後・直近で手にしたのはどのような手法によるものかを聞いたのが次のグラフ。ちなみにこの「一番最近に-」という問いは、「よくある傾向」を推定する際にしばしば使われる設問方式である。
↑ 一番最近調達した本の調達ルート(過去一年間に本を読んだ人限定)(米、2011年12月)
約半数は「購入」、残り半数は借用その他。友達など知人から借り入れたのは24%で、図書館からは14%。案外図書館経由での借り入れが多い。なお原文によれば、世帯年収が7万5000ドル以上の裕福な世帯では、購入性向が59%と、平均値よりも高い値を示しているとのこと(購入するか否かを判断する場合、金額面での躊躇があまり無いと考えれば道理は通る)。
これを書籍に関係しそうな要件で回答者を区分、再計算した上でグラフ化したのが次以降の図。まずは電子書籍リーダーとタブレット機。
↑ 一番最近調達した本の調達ルート(過去一年間に本を読んだ人限定)(電子書籍リーダーのあるなし)(米、2011年12月)
↑ 一番最近調達した本の調達ルート(過去一年間に本を読んだ人限定)(タブレット機のあるなし)(米、2011年12月)
タブレット機は専用アプリを稼働させて電子書籍リーダーとして使われることが多々あるが、やはり電子書籍リーダーそのもののほうが購入性向は高い。この値を、購読ハードルが低い電子書籍を最後に購読した人が「買った」と回答している率が高いだけ、と評価する人もいるだろう。しかし紙であろうとデジタルであろうと書籍には違いなく、対価を支払って手に入れたのならば立派な購入に他ならない(このあたりの分析は同じ調査データで、以前に【「この本読みたい」その時、買う? 借りる? 米講読時調達手段】で詳しく行っている)。
肝心の図書館会員・非会員別ではあるが、やはり図書館から本を借り入れられる立場にある会員は、圧倒的に「図書館からの借り入れ」が多い。
↑ 一番最近調達した本の調達ルート(過去一年間に本を読んだ人限定)(図書館会員であるか否か)(米、2011年12月)
原文にはいくつかの事例があり、興味深い調達性向が見受けられる。
・新しいジャンルや著者と遭遇した際、自分にとって良いモノか否かを確かめるために、電子書籍を借り入れる。お気に入りになりそうな質を持つものなら、購入する。借り入れ期間では読み切れないからだ(※電子書籍による借り入れの場合、一定時間が経過するとデータは自動消去する仕組み)。
・図書館は自分にとって書庫のようなもの。自分自身で本を買うのは、何度も何度も繰り返し読み返したくなるものに限る。
紙媒体としての書籍をお試し版として読み、収納や運搬に便利な電子書籍をまとめ買いする。あるいは紙の本を借りて試読し、よいモノならば購入に一歩踏み出す。無論この事例がすべてではないが、電子書籍と紙の書籍、購読と借り入れが上手い具合に働き、良い作品が世に広まり購入されていく形が作られている。
電子書籍と紙媒体、そして図書館との関係について、色々と可能性を見いだせそうな思いを起こさせる話ではある。
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