震災の影響はありやなしや…映画館での映画鑑賞本数の変化
2012/06/28 06:45
gooリサーチは2012年6月15日、映画館での映画鑑賞に関する調査結果を発表した。それによると調査母体中においては、「直近1年間」と「その前年」とを比較した場合、映画館での映画鑑賞本数が減った人は3割近くであることが分かった。増えた人は約1割に留まっている。一方「テレビなども含め、鑑賞形態を問わない」映画鑑賞本数は増えた・減った人がほぼ変わらなかった。映画そのものではなく、映画館での映画鑑賞性向が減少しているようすがうかがえる(【発表リリース】)。
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今調査は2012年5月23日から28日にかけてインターネット経由で行われたもので、有効回答数は3189人。男女比はほぼ1対1、世代構成比は10代から70代まで10年区切りでほぼ均等割り当て。
以前【過去一年間の映画館での映画観賞者4割強、若年層ほど多い傾向】でも記したように、今調査母体では過去一年間の映画館での映画鑑賞者(本数は問わず)は45.3%という値が出ている。
↑ 過去一年間に映画館で映画を鑑賞したか(再録)
そこで気になるのは、「過去一年間」と「それより前の一年間」と比較した場合、映画の鑑賞本数にどのような変化が生じているかについて。「映画館の鑑賞に限定した場合」と、「自宅などでの視聴も含めた映画鑑賞全体」それぞれを聞いた結果が次のグラフ。
↑ 「直近一年以内」と「その前年」とでの(映画館での)映画の鑑賞本数変化
映画鑑賞全体で見れば、減った人・増えた人がほぼ同数で、鑑賞本数全体には大きな変化は生じていない(もちろん増えた人は個々1、2本で、減った人は10本近く、という可能性もあるが)。ところが映画館のみで見ると、増えた人は1割に留まっているのに対し、減った人は3割近く。映画視聴者の視聴性向が減退していることは明らか。
そこで「直近1年間の映画館での映画鑑賞本数」別に、その前の年と比べて「映画館での」鑑賞本数の増減を聞いた結果が次のグラフ。きれいに「多く見ている人ほど、直近一年間ではその前の年と比べて鑑賞本数が増えている」ことがわかる形のグラフが出来上がった。
↑ 直近一年間の「映画館での映画鑑賞本数」別・「直近一年以内」と「その前年」とでの「映画館での」映画の鑑賞本数変化
↑ 直近一年間の「映画館での映画鑑賞本数」(択一)
しかしながらヘビーな映画鑑賞者はごく少数。大多数、半数以上は「直近1年間で映画館に足を運んでいない」。しかも「変わらない」が60%、「減った」が40%なので、
・「直近1年以内」の「それよりさらに1年前」は映画館に足を運んでいたが、「直近1年以内」では映画館を訪れなくなった人は全体の21.9%(54.7%×40.0%))
という計算が成り立つ。つまり2割強もの人がこの1年で「前は映画館に行っていたけど、しばらく足を運んでないね」状態になったことを意味する。逆に「前は映画館に行かなかったけど、直近1年間で観たことはあるね」という人は最低で1.8%(11.9%×14.8%)。「2-4本」「5-11本」「12本以上」の層にもそれなりにいるだろうが、仮に全部の層の「増えた」人が「前は映画館に通っていなかった」としても10.3%(=1.8%+21.4%×21.1%+9.6%×30.4%+2.5%×44.4%)でしかない。
映画館に行かなくなった人が2割強。2011年がかぶさるということもあり、「やはり震災の自粛ムードや物理的影響が大きいのか」と想像してしまうのだが、実際に「減った」回答者にその理由を尋ねると、実情はまったく異なっている。
↑ 映画館での映画館少数が減った理由(「減った」回答者限定)(複数回答)
要は映画館に足を運んで鑑賞するまでの魅力を持つ映画が無かった、減ったのが最大原因。第二位の「足を運ぶのが面倒」もまた、足を運ばせるほどの魅力が無いと考えれば似たようなもの。その後には視聴スタイルの多様化に伴う「映画館での映画鑑賞」の相対的地位低下の様相が見て取れる。一方気になる「震災で映画を観る気になれない」はわずか5.1%。皆無というわけではないが主要因どころか「その他諸々」に含めても構わないほどの値でしかない。
無論項目上に現れない震災起因(震災後の混乱に伴う映画配給数の低下、映画館の休止、公開自粛など)もあると思われるが、いわゆる震災によるものとは別の理由で「映画館離れ」は進んでいることが理解できる。
後日機会を改めて【50年余りの間の映画館数の変化(2010年分まで対応版)】の2011年分対応版を記事化するが、2010年と比べれば各数字は大きく減退している。最初にそれを見た際には「震災の影響があまりにも大きい」との感想を持ったものだが、今件調査結果を見る限り、そうとも言い切れないのが正解のようだ。
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