事情は人それぞれ多種多様…インターネットを利用しない理由(2011年分反映版)
2012/06/27 06:50
2012年5月30日総務省では、平成23年(2011年)調査における通信利用動向調査の結果を発表した(【発表ページ】)。日本でのインターネット、携帯電話などのような、情報通信にまつわる各種調査結果を反映した白書的な資料で、毎年7月頃に発表される予定の【情報通信白書】のベースにもなる、同省の情報通信統計としては注目すべき内容といえる。現時点では概要、及び統計データのe-Statへの収録のみで報告書の類は完成していないが、今回はそのデータから「世帯レベルでインターネットを利用しない理由」をグラフ化してみることにする。
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調査概要や調査対象母集団数は2012年6月12日付で公開した記事【光回線浸透継続の一方で意外なモノの伸びも-自宅パソコンのネット接続回線の種類(2011年分反映版)】の通り。そちらで確認してほしい。
今調査結果においては、過去一年間に世帯構成員全員が(単身者は本人自身のみ)、パソコンだけでなく携帯電話やゲーム機まで含め、自宅だけでなく外出先も合わせ、インターネットを利用していない世帯は12.9%に登っている。
↑ 過去一年間において世帯構成員全員がインターネットを利用していない世帯(2011年末)
世帯主年齢が50代まではほとんどゼロに近く、60代を過ぎると急激に増加する。これは元々高齢者ほどインターネットを避ける・必要としない人が多いのに加え、50代を超えたあたりから、世帯主の歳が上になるほど世帯構成人数が減少する(子供が独立する、配偶者に先立たれるなど)のが原因である。
直上で半ば答えを語っているようなものだが、それではなぜこれらの世帯構成員たちはインターネットを利用していない、しないのだろうか。複数回答で聞いたところ、最多回答項目は「利用する必要が無い」で、7割を超えていた。
↑ インターネットを利用しない理由(世帯単位、複数回答、構成員全員がインターネットを過去1年間で利用していない世帯対象)
次いで多いのは「インターネットを良く知らない」で35.4%。さらに「パソコンなどの機器の操作が難しい」17.8%・「接続方法がわからない」の13.4%と続く。これらをまとめなおすと、
・情報不足……「インターネットを良く知らない」「必要な情報が無い」
・技術的利用ハードルが高い……「パソコンなどの機器の操作が難しい」「接続方法がわからない」
・経済的問題……「通信料金が高い」「通信環境未整備」「パソコンなどの機器が高い」
の4項目に大別できる。最多回答項目の「利用する必要が無い」は本人の判断によるものなので、個人・世帯の意思は尊重されるべきである。とはいえ、本人やその他世帯構成員がインターネットのことを熟知した上で「必要ない」と判断しているのなら良いのだが、便宜性を十分認識していない状態で「必要性を感じない」可能性もある。もしそうなら、もったいなさを覚える。
その他項目は多かれ少なかれ超えられるハードルではある。情報不足は啓蒙を強化すればよいし、技術的ハードルはノウハウを持つ人のサポートやハードの上での改善、経済的問題はサービス提供側の努力や代替手段の登場で解決できうる問題(例えば携帯電話によるインターネットアクセスは、「環境整備」「コスト」「操作の難しさ」などをクリアしうる手法である)。
これを世帯主の世代別に見たのが次のグラフ。
↑ インターネットを利用しない理由(世帯単位、複数回答、構成員全員がインターネットを過去1年間で利用していない世帯対象)(世帯主世代別)(一部)
赤い矢印は若年層世帯が目立って多い項目。利用必要性を覚えない以外に、経済的な面でのハードルが邪魔をする事例が多いことがわかる。一方高齢者は必要性を覚えない、あるいは知らない項目で値が高い。以前【お年寄りのネット嫌い その理由は?】でも触れたが、本当に「必要性が無い」と思っている以外に、「深く調べれば便利そうだが、今から覚える労苦と得られる利便性を比較すると、必要性は無いと判断できる」、さらには「多かれ少なかれ興味はあるものの、インターネットを理解できるような場・機会が無く、諦めている感」もありそうだ。
インターフェイスの問題(例えばタッチパネル方式の機器は高齢者では操作しにくい)もあるが、高齢者世帯へのインターネット普及率は公的機関や地域全体が一丸となって工夫と努力をすることで、それなりに改善できそうな雰囲気ではある。そして高齢者のインターネットへのアクセスが可能となれば、本人はもちろん周辺領域にも少なからぬ便益をもたらしそうだ。
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