携帯電話でのインターネット利用率(2011年分反映版)
2012/06/14 06:55
総務省は2012年5月30日、平成23年(2011年)調査における通信利用動向調査を発表した(【発表ページ】)。日本におけるインターネットや携帯電話など、情報通信関連の各種調査結果を反映した調査結果で、毎年7月頃に発表される【情報通信白書】のベースにもなる、同省の情報通信統計としては非常に重要なものである。現時点では概要、及び統計データのe-Statへの収録のみで報告書の類は完成していないが、今回はそのデータから「携帯電話(PHSやスマートフォンなどを含む)における、インターネットの利用率」をグラフ化してみることにする。
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今調査(通信利用動向調査)は2012年1月-2月に、地域及び都市規模を層化基準とした層化二段抽出方式による無作為抽出で選ばれた、20歳以上の世帯主がいる世帯・構成員4万0592世帯に対して行われたもの。有効回答数は1万6580世帯・4万7158人(企業に対して行われたものは常用雇用者規模100人以上5140企業/有効回答数1905企業)。調査方法は郵送による調査票の配布および回収なので、各媒体の保有率は調査結果に影響を与えていない。
今回グラフ化したのは、「携帯電話を使った」「インターネットの利用率」。なお2011年分から「通信利用動向調査」の調査項目に変更が生じており、「個人ベースでの所有の有無回答が無くなった(パソコンやモバイル端末所有者は、それらを使ってインターネットを利用していると判断され、「該当端末利用によるインターネット利用者」として調査が行われている)」「区分に『スマートフォン』『タブレット型端末』が明記され、設問によってはスマートフォンと携帯電話は別途カウントされるものもある。タブレット型端末はノートパソコンに類するものとして、携帯電話の範ちゅうからは外されている(但し「モバイル端末」との表記の場合はタブレット機も含める場合もある)」などの動きが見られる。
まずは2011年末における全体・年齢階層別のグラフ。過去一年間に携帯電話(PDA、PHS、スマートフォン含む)を経由してインターネットにアクセスしたことがある人の割合。各属性全体に対してどの程度かを意味する。例えば6-12歳では13.2%なので、調査母体のうち6-12歳全体の中で、過去一年間に携帯電話などを使って一度でもインターネットにアクセスした人の割合は13.2%となる次第(インターネット利用に関して無回答者は計算から除外してある)。
↑ 携帯インターネットの利用率(2011年末)(過去1年間において、PHS・PDAも含む・スマートフォンも含む、全体比)
携帯電話そのものの利用率・インターネット全体の普及率同様に、20-30代がピークでその後定年退職前後までは緩やかな、そしてそれ以降(60歳以降)は急激な下り坂を描いているのが分かる。また、6-12歳が1/8ほどのみ、13-19歳も20歳以降と比べて少なめなのは、多くの人が自分の収入で端末を入手できない立場であること、そして保護者から端末の利用許可・本体そのものをもらっていないことなどが想定できる。
これをさらに過去の調査データ5年分を元に、その推移を示したのが次の図。
↑ 携帯インターネットの利用率推移(PHS・PDAも含む)(2011年以降はスマートフォンも含む)
20歳未満の利用率が幾分減っている。これは数年来の傾向で、子供が携帯電話を経由してインターネットにアクセスするリスクを勘案し、保護者が利用を差し止める動きが進んでいる結果によるものと思われる。昨年のデータで「ただし『6-12歳』は幼少時における携帯電話経由のネット接続に対するリスクを考慮した、保護者による措置が広まっているものとも判断できる。来年発表の2011年分以降も同じ動きを見せれば、それはほぼ確実といえる」としたが、この推論は正しかったことになる。
その他の世代も一部で(中堅層)2011年分は多少ながらも減少しているが、原因は不明。単なる統計上のぶれか、あるいは【光回線浸透継続の一方で意外なモノの伸びも-自宅パソコンのネット接続回線の種類(2011年分反映版)】にも示しているようにパソコン経由でのインターネットアクセス率は増加を続けているので、そちらに多少の偏りが生じたのかもしれない。
良い機会でもあるので、2011年末における「インターネット利用率」「携帯インターネットの利用率」を世代別に併記する。上記にある通り単純な保有率の開示は無くなったので、昨年のグラフの項目にあった「携帯電話(インターネットの利用の有無を問わない)の利用率」はグラフから外されていることに注意。
↑ 「インターネット利用率」「携帯インターネット(スマホ含む)の利用率」(2011年末)(個人、全体比)
6-12歳と13-19歳において、「携帯インターネット」と比べて「インターネット利用率」が突出しているのは、学校経由におけるパソコンのネット利用が多いため。20歳を超えると自前で携帯電話を取得してネットへアクセスできるようになるため、大きな差異は生じなくなる。
以前【60代が区分線!? 年齢階層別インターネット利用率】の後半部分でグラフ付きで解説したが、高齢層はこれまでの生活の中でインターネットや携帯電話に接した時間の割合が少ないため、必要性や信頼性の面でこれらを重要視しない傾向がある。あるいは単に、便宜性に気が付いていないだけなのかもしれない。
新世代メディアの展開を10年と仮定した時の、各年齢における「自分の人生全体における新世代メディアとの接触年数」(概念図)(再構築版)
また、覚えなければならないことが多く、利用までのハードルが高いのも普及・利用の低迷理由と考えられる(覚えること自身に難儀するし、「覚えるまでの時間」と「覚えてから楽になる時間」とどちらが長いか、寿命と兼ね合わせて考えると……という足し引きが頭の中で行われている)。
テレビや冷蔵庫、洗濯機などのように使いこなすまでに必要な習練時間が少なくて済み、気軽に利用できるインターネット機器や携帯電話が登場すれば、高齢者にも受け入れられ、普及率・利用率も向上していく可能性はある。その観点で考えれば、タブレット機は、インターネットを敬遠する高齢者に対して、何らかの突破点となる可能性を秘めている。一方現状では一般携帯電話(スマートフォンにあらず)がそれに近い役割を果たす動きを見せているが、スマートフォンやタブレット機はタッチパネルの問題など、高齢者のハードルとなる面も少なくない。
試行錯誤を繰り返しながら、より良い道への模索が続けられていく気配はある。来年はいかなる変化が見られるのか、来年の通信利用動向調査が楽しみでならない。
※2012.06.17. 数字の再計算とグラフの微調整を行いました
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