スマホの利用進む、mixi Touch比率13.1%へ増加…mixi動向(2012年3月)
2012/05/12 19:30

【ミクシィ(2121)】は2012年5月11日、2011年度第4四半期(2012年1月-3月)及び通期における決算短信を発表すると共に通期決算説明会を開催、資料の公開を行った。その資料などから、以前2011年12月末時点の状況をお伝えした、同社が運営するSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)【mixi】の会員数などの動向が明らかになった。今回はそれらの資料からグラフを再構築・構成し、「可能な範囲で」「継続データについて」mixiの現状を眺め見ることにする(【発表リリース一覧ページ】)。
スポンサードリンク
●スマートフォンの浸透さらに進む
資料によれば2012年3月時点でのmixiの主要データは次の通り。提示された資料は2012年度第4四半期(2012年1月-3月)のもので、基本的に2012年3月末のデータが提示されている。
……1512万人
・登録ユーザー数
……2711万人
・月間ページビュー数
モバイル……155.0億
パソコン……24.0億
Touch(スマートフォン)……27.0億
計……206.0億
月間滞在時間のデータは非公開を継続中。ページビューの減少傾向、月間ログインユーザー数の成長鈍化についてリリースでは、直接的には「1ページの情報量が多いスマートフォンへのユーザー移行が増えた」「スマートフォンでは一部アプリの利用において、ページビューに反映されない」「ユーザー利便性を優先したインターフェイスの変更で、(誤操作や迷いのための別ページ視聴が起きにくく)ページビューが減退している」と説明している。実際問題としてスマートフォン向けのTouchのページビュー数は確実に増加傾向にある。
ビジネス的な視点での対応策・今後の施策として資料では「ページビューに依存しないビジネスモデルへの転換を図る」、具体的には広告ビジネス面では「時節のイベントに絡んだタイアップ広告の強化」「ゲームやコマースなど消費行動の積極的な後押し」「通常コンテンツと収益発生コンテンツとの相互連動性による相乗効果」などを通じ、ソーシャルメディアとしてのmixiを母体とした多方面からのプロデュースを推進していくと言及している。特に昨今ではアプリ課金による売上が増加しており、さらなる注力が予想される。
今後のmixiの注力点として、大きく分けると「既存利用者にこれまで以上にmixiを活用して、さらなる消費をしてもらう(課金ユーザーの増加や現実物品の購入の促進)」「スマートフォンの利用拡大という現実を踏まえ、適切な収益を挙げられる商品の開発」の二つが、資料からはうかがえる。さらに現実の地域社会や同輩・同級生など「リアル面で関連性の強い他会員とのつながり」だけでなく、「趣味趣向上のゆるやかな(、概してネット上のみでの)」つながりを強化させ、さらにそこからmixi外との連動性を強化し、新たな会員の加入に期待するとしている。
スマートフォン利用者数の増加については、スマートフォン向けに最適化されたmixiこと「mixi Touch」のログインユーザー数増加が、それを裏付けるひとつのデータとなる(ただし今回からデータ計測方法が変わり、mixi Touchに加えて公式アプリ経由も合算した値が公開されていることに注意。グラフ上の値は遡って再計算されたものとのことだが、2011年6月以前は公開されておらず、これまでのTouchのみとの値とでは連続性が得られず、グラフからは除外した)。

↑ mixi Touch+公式アプリログインユーザー数(万人)
留意すべきはアクセス周りの数字一覧のうち、上位二つの項目。ユーザー数が2711万人なのに対し月間ログインユーザー数が1512万人、つまり差し引き1199万人(44.2%)が2012年3月において「ユーザー登録をしているにも関わらず、一か月の間一度もログインしなかった」ということになる。三か月ほど前のデータ(1103万人・42.1%)と比べて割合も人数も増加しており、非常に気になるところだ。
「システムの整理統合改変やインターフェイスの改善でページビューが減る」「1画面当たりの情報量が少ない一般携帯電話(いわゆるフィーチャーフォン)から、情報量の多いスマートフォンへ利用者が移行することで、総表示ページ数が減退する」との指摘は以前からのものだが、現在のmixiではその状況がリアルタイムかつダイナミックに進行している。また、以前【国内主要ソーシャルメディアのアクセス機器傾向】でも外部調査機関の調査結果として「携帯電話・スマートフォン向けの画面構造上、同じようなアクセス・巡回でも、パソコンより携帯の方がページビュー数が増えてしまう」との技術的解説をしている。この逆の現象(つまりスマートフォンの方がパソコンに近いため)が、今mixiで起きている次第。
他方、前回は具体的数字は提示されず資料ではグラフのみの掲載だった各種コミュニケーション機能(ボイス投稿、チェック投稿など)の総投稿数・利用率に関するデータは、今回はグラフすら掲載されず、具体的な動向がつかめなくなった。前四半期では横ばい、あるいはやや減退の動きを見せていたため、今後の動向が気になるところではあったが、未公開化されてしまったのでは精査のしようも無い。もっとも決算資料本編では次期の方針について「ボイスや日記などのコミュニケーションを行うHOMEエリアの活性化だけでなく、コミュニティやゲームなどのコンテンツを設置したTOWNエリア(インタレスト領域)においてコンテンツを強化・拡大することで、ユーザーを集客してまいります」とあり、ボイス機能をはじめとした各種コミュニケーション機能の相対的優先順位は下げられてしまっているのかもしれない。
さて以前の記事と同様に、直近のmixiにおけるパソコン(PC)・モバイル経由の月間PV(ページビュー)、及び会員数の推移をグラフ化したのが次の図。今回の資料でも月次ベースの会員数推移が非公開となっている(3月末時点のは上記の通り)。そこで可能な範囲で数字を入力し、グラフ生成を行う。

↑ mixiのユーザー数、ページビュー数(パソコン+Touch経由とモバイル経由)推移
グラフからは、2009年秋のmixiアプリ導入をトリガーとし、大きくページビュー数が飛躍した様子が確認できる。また2011年後半期以降は概してページビュー数が横ばいから、微量ながらも減退する方向に見て取れる。これは前述の通り「仕様の変更」「一般携帯電話からスマートフォンへの移行が急速に進んでいる」のが要因。単純に同一環境下における減退ではないことに注意する必要がある。
●「PV視点で」mixiがモバイルSNSであることに変わりなし。そして躍進するスマートフォン
次のグラフはPVにおけるPC・モバイルの比率。前回試験的に「Touch」の値が確認できる2010年5月(ただし5月末スタートのため、同月は実績ゼロ)以降に限り、「モバイル」「PC」「Touch」の三区分化した推移グラフを試験的に作成したところ、「PCとTouchを合わせたものより状況が把握しやすい」との反応がいくつか寄せられたため、今回以降はPC+Touch合算、別分けの双方のグラフを生成する。

↑ PVから見たmixiのモバイル・PC率推移

↑ PVから見たmixiのモバイル・PC・Touch率推移
アプリを先行導入したことで2009年9月-10月はパソコンがやや押し返したものの、モバイル版導入後の2009年11月以降は逆に押し戻され、むしろモバイルの数値増加が加速しているのが見て取れる。そして2010年中盤以降は再びパソコンの比率増加が少しずつ進んでいるが、これが実質的にはデスクトップ・ノートなどのパソコンそのものではなく、スマートフォン経由によるTouch利用者の比率増加によるものであるのが明確化されている。
スマートフォンはどちらかといえばパソコンよりもモバイルと分類される以上、mixiはページビューの上ではモバイルSNSであるという状況に変わりは無い、どころかさらに特化しつつあると見てよい。
ちなみに直近データをこの「モバイル」「パソコン」「mixi Touch」の区分で詳しい数字を盛り込んでグラフ化すると次の通りとなる。

↑ 2012年3月時点での、モバイル・パソコン・mixi TouchのPV比率
「モバイル」「パソコン」ともに大きく数は減少。代わりに「Touch」が数・比率共に大きく伸びを見せている。「モバイル」「パソコン」のシェアを「Touch」が大きく奪った形である。またパソコン用画面をスマートフォンで見る人は多分に想定できるが、mixi Touchをパソコンで使うのは意味がないことを考慮すると、モバイル率は約9割に達していると見てよい。
なお「パソコンと携帯電話、スマートフォンでは閲覧スタイルが違うのだから、同列で比較してもモバイルが上になって当然」という意見を承っている。それは重々承知した上で、「ページビュー」という一つの「物差し」の上での比較であることを、改めて記しておく。
●世代構成分布
「決算説明会資料には他にも多数の興味深いデータが掲載されている。そのうちmixi会員の年齢階層比率をグラフ化し、その傾向を眺めてみる」のが定例の一連の記事でのパターン。関連データは以前「登録者ベース」だったものが、しばらく前から「月間ログインユーザーベース」に変更となり、かつ「全ユーザー」のみの公開で「モバイルユーザー」に限定した数字は非公開となってしまった。モバイル利用者の動向も大いに気になるため、情報が開示されないのは非常に残念な話ではある。
もちろん「登録者ベース」と比べると「現時点での利用者」という性質が強くなるため、「mixi全体の」との視点としては多少ぼやけた形となることに留意して欲しい。まずは直近の値について。

↑ mixi会員の年齢階層別比率
2012年3月末時点でも最多階層が20-24歳であることに違いはない。
これを前回・前々回、つまり3か月前・6か月前のデータと比較すると、別の動きが見えてくる(あくまでもアクティブユーザーの階層比であることに注意)。

↑ mixi会員の年齢階層別比率(全ユーザー)
今回のグラフからは、
・20代-30代前半の減少
・40代以降は微増か横ばい
の傾向が確認できる。全体として、現在比率的に中枢にある「年齢的中堅層」は少しずつその比率を減らし、若年層・高齢層が漸増、年齢階層のバランスが調整されつつあるように見える。
また同時に以前から指摘している「利用継続者がそのまま歳を取ることによる所属年齢階層のスライド化」「ソーシャルメディアが社会全体に認知・利用されたことによる、中堅層の新規利用者」を起因とする中堅層(40代前後)の増加、そして携帯電話・スマートフォンを初めて所有するようになった若年層が、mixiへの入会を「モバイル端末を持つ時のスタンダード・スタイル」として認識している状況が推測できる。
これらの動向については、機会をあらためて、もう少し別の切り口でも精査してみることにしよう。
スポンサードリンク
