電子書籍リーダー持ちも紙の書籍は結構読む、けれども……
2012/05/06 07:10
米国内大手の調査機関【Pew Research Center】は2012年4月4日に電子書籍をメインターゲットとした、同国の読書性向に関する調査報告書【The Rise of E-Reading】を公開した。ここにはモバイル端末、中でも電子書籍リーダーの登場・普及で大きな変化の最中にある、同国の読書の現状を把握できる貴重なデータが、多数盛り込まれている。今回はその中から「電子書籍リーダーやタブレット機保有者の、電子書籍と紙媒体の書籍それぞれに対する読書性向」についてチェックを入れることにする。
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調査要項の詳細は先行して掲載した解説記事【テクノロジーは読書のアプローチに…デジタル機器と米の読書性向との関係】で説明している。詳しくはそちらの記事で確認をしてほしい。
【去年の年末年始に大上昇…米電子書籍リーダーの保有率推移の詳細】などで触れているが、電子書籍リーダーの普及率は2割近くに達している。またタブレット機についても、ほぼ同率である。
↑ 電子書籍リーダー保有率(各属性内、米)(再録)
↑ タブレット機保有率(各属性内、米)(再録)
そこで「書籍」の種類別に、電子書籍リーダーなどの「(電子書籍が容易に読める、しかも機動力の高いこれらの)端末持ち」の読書性向を調べたのが今回の項目。まずは過去一年間における、購読経験のあるなしを尋ねたものだが、端末持ちは当然ながら電子書籍の購読経験率が、全体と比べてかなり高い。
↑ 過去1年間の読書性向(購読経験ありの割合、本の種類別)(米、2011年12月、16歳以上)
一方気になるのは、端末持ちでも9割が「過去一年間に紙媒体の書籍を読んでいる」と答えており、全体比率の93%とほぼ変わらない値を示していること。「電子書籍リーダー保有者が読書好きになる」ではなく「読書好きが電子書籍リーダーを積極的に購入する」という説を補完する材料にもなる。少なくとも端末を持っているからといって、紙媒体の書籍を完全に手放しているわけではない。
しかし一方で、「昨日」読んだ、つまり「日頃から良く」読んでいる媒体を聞いてみると、もう一つの側面が見えてくる。
↑ 「昨日」の読書の是非(購読経験ありの割合、本の種類別)(米、2011年12月、16歳以上)
全体では紙媒体が読まれた率は84%、ところが端末持ちは63%と大きな差異が生じている。他方で電子書籍の「端末持ち」と「全体」の差異(絶対値ではなく倍率)には大きな違いが無く、「端末持ちは紙媒体書籍”も”読むが、全体と比べて購読性向は低い」「端末持ちの電子書籍に対する読書頻度は、全体と比べて高め」であることが改めて分かる。
これは以前【読む機会はパソコンが上、しばしば読むのは…米媒体別電子書籍購読性向】でも示した通りで、「端末持ち」の自前端末での電子書籍性向は高めである。
↑ 電子書籍リーダーなとで電子書籍を読む場合の頻度(米、2011年11-12月、16歳以上、各端末保有者による回答)(再録)
「電子書籍リーダーで電子書籍を読みつつ、同時に紙媒体の書籍も読み通す」という無意味なことをする人は居ないため、電子書籍リーダーの利用が増えるにつれ、紙媒体の利用が減少していくと考えれば、「端末持ちも紙媒体の書籍は読むが、電子書籍への注力は全体と比べて高い」という状況も納得できる。
なおレポートでは具体的な数字の全容開示はされていないが、興味深い話も紹介されている。「端末持ち」の電子書籍購読者は、電子書籍購読者全体と比べて、パソコンや携帯電話を持っていてもその端末での電子書籍購読率が低いというものだ。
↑ 時折以上に該当端末で電子書籍を読む人の割合(それぞれ該当端末所有者全体に占める比率)(米、2011年12月、16歳以上)
やはり便利なツールが手元にあれば、そちらに注力が移るということなのだろう。
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