全体約3割、50歳で生じる大きなギャップ…米電子書籍購読者の割合
2012/04/27 07:10
アメリカの調査機関【Pew Research Center】は2012年4月4日、電子書籍を中心に、アメリカの読書性向に関する調査報告書【The Rise of E-Reading】を発表した。モバイル端末、特に電子書籍リーダーの登場・普及で大きな変化をとげている、アメリカの読書の現状をかいまみられる貴重なデータが、多数盛り込まれている。今回はその中から「電子書籍を読んだことがある人の割合」にチェックを入れることにする。
スポンサードリンク
調査要項の詳細は先行して掲載した記事【テクノロジーは読書のアプローチに…デジタル機器と米の読書性向との関係】で解説している。詳しくはそちらを参考のこと。
先に【非保有者の「今後欲しい」は1-2割、要らない理由は「そもそも欲しくない」…米電子書籍リーダーとタブレット機「非」保有者の思惑】などで触れているが、電子書籍リーダーやタブレット機の保有比率は2割足らず。
↑ 直近調査におけるデジタル機器保有率(米、18歳以上、2011年5月-2012年2月)(再録)
一方、電子書籍リーダー以外にも電子書籍を読む機会はある(例えばパソコンやタブレット機)。そしてデジタル化した文章・書面は電子書籍以外に、電子新聞や雑誌なども存在する。2011年12月の時点ではアメリカの16歳以上の大人の43%が、デジタル形式の書籍・新聞・雑誌などに目を落としているとしている。
今件では電子書籍(e-books)に限定し、過去1年間に読んだことがあるか否かを尋ねている。これには電子書籍リーダーに限らず、タブレット機やパソコン経由によるものも含まれる。
↑ 過去1年間に電子書籍を読んだ人の割合(米、2012年1-2月、18歳以上、各属性内比率)
全体では29%。男女間でほとんど差異は無い。そして「世代」別だが、50歳で大きな区切りが生じているのが分かる。以前【去年の年末年始に大上昇…米電子書籍リーダーの保有率推移の詳細】でも記したが、電子書籍リーダーの保有率は世代間格差があるものの、50歳を区分としたものではない。
↑ 電子書籍リーダー保有率(各属性内、米)(再録)
18-29歳は多分にお財布事情から別途電子書籍リーダーを購入する余裕はないものの、電子書籍への注意関心度は高く、パソコンなどで積極的に目を通しており、結果として18-29・30-49歳における電子書籍利用率が同列に並んだものと思われる。
似たような現象は「学歴」での大学と高校間、「年収」の年収5万ドルのラインでも確認できる。やはりそれなりに各属性区分で高い部分にある層は、電子書籍リーダを持っていなくても他の媒体で代用し、積極的に読み進めているのだろう。
また、見方を変えると、(新聞や雑誌は含まないが)電子書籍を読んだことの有る人は3割程度しかいない。これからさらに「開拓」が望める市場ともいえる。
レポートでは他にもいくつか興味深い話に触れている。
・電子書籍リーダーを持っている人は、そのリーダーでの読書に注力する傾向がある。
・また電子書籍を読んだ経験のある人は、電子書籍だけでなく、電子新聞なども良く読む。電子書籍読者の65%は電子ニュースや電子新聞を読んでおり、そのうち77%は「自分の電子書籍リーダーやタブレット機」で読む。
・電子書籍読者の60%は電子書籍雑誌や専門誌を読み、うち53%は自分の電子書籍リーダーやタブレットなどで読む。
電子書籍の購読者、リーダー持ちは、読書に対して積極姿勢を見せる。これは逆に「読書行為に対して積極的だからこそ、電子書籍・リーダーを購入している」可能性をも示唆している。むしろそちらの方が納得はしやすい。
また電子書籍は紙媒体の書籍と比べて、物理的な購入感に乏しい。紙媒体を求める際に、借りるより買う方を望むのは、電子書籍の利用で逆に、保有意欲が高まっているのかもしれない。
スポンサードリンク