「ブリタニカ百科事典」、書籍版出版終了で需要急増
2012/04/10 12:10


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↑ ブリタニカ百科事典・2010年版(紙媒体としては最終版)
2012年3月14日に「現在発売している2010年度版で、書籍版として『ブリタニカ百科事典』は最後になる」と公式に発表した時点で、エンサイクロペディア・ブリタニカには約4000セットが在庫として保管されていた(1セット1395ドル)。そして発表後に(これまでと比べて)猛烈な勢いで在庫がさばけており、4月5日時点で残り800セットを切っているという。
同社の社長であるJorge Cauz氏は「この売れ行きは驚くべきスピード。あと数週間で在庫はすべてはけてしまうだろう」と言及。2010年の出版当時は1万2000セットほど印刷され、約2年をかけてようやく4000セットにまで在庫を減らしたことを考えれば、同氏が驚くのも無理は無い。そして当然のごとく、Amazon.comやebayなどで高値で転売されているようすが確認されている。これについては同氏も認識しているようで「再販業者がいるのは確認している。そしてまだ当社から定価で買えることを知らない人が多いので、そのような業者が示す高値でも飛び付く人がいるのだろう」とコメントしている。
「ブリタニカ百科事典」は1768年に出版を開始した百科事典で、1990年には年間12万部を販売したものの、「百科事典を所有する」というライフスタイルが廃れていく中で、追い打ちをかけるように進行したデジタル化の流れには勝てず、1996年には4万部、そして2009年には8000部(年ベース)にまで売上を落としていた。今回の「駆け込み需要」は特筆すべきものだが、同社長は「それでも書籍版終了決定を再考するつもりは無い」と、増刷や書籍版再開の可能性を否定。
同社のビジネスは現在オンライン版「ブリタニカ百科事典」や教育用教材が支えているが、オンライン版では70ドルで1年間完全版のフリーアクセスができる。すでに50万人の会員がおり、先日無料オンラインのお試し版をスタートさせたところ、1日あたり1000人ほどの登録者増加の動きも見られるなど、比較的堅調な様子。
それでもなお、同社長は語る。「私はどんな時でも、書籍版の『ブリタニカ百科事典』が好きでした。良い記念品になるので、一つ自宅に持ち帰りますよ」。兄弟のためにもう一つ、合わせて2セットを購入して。
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