「社会に貢献する企業」への就労意識、日本は最消極姿勢。でもお金が絡むと…?

2012/03/30 12:00

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企業の市民活動ニールセン ジャパンが2012年3月28日に発表した、企業の市民活動(企業は利益の追及のみならず、社会の公器としての立場から、社会的責任、特に地域社会への貢献を果たす必要があるとの考え方を具象化するための各種行動)に関する、世界規模での調査結果によると、日本は他の諸外国と比べ、「企業市民活動」を行う企業に対する就職意欲が低い傾向にあることが分かった。一方でそのような企業への就労を検討する際に「賃金が低くても良い」とする意見は、日本は世界平均よりもやや拒絶感が強いが、北米やヨーロッパ、ラテンアメリカはそれ以上に大きな拒否反応を示していることが明らかにされている(【発表リリース、PDF】)。



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今調査は2011年8月31日から9月16日にわたり、アジア太平洋や欧州、ラテンアメリカ、中東、アフリカ、北米などの世界56か国、15歳以上の消費者に対して行われた。有効回答数は総計で2万8000人以上。各国の世代・性別構成別に割り当てられ、インターネットを利用する消費者を代表するように、各種ウェイトバックがかけられている。

「企業市民活動」を実施するには多かれ少なかれそれなりのコストが生じるため、当然企業としては利益(売上では無い)が減少する可能性がある。そこでまずは、「企業市民活動」(の一環として「社会還元プログラム」)を実施している企業の製品やサービスを、そうでない企業商品と比べて、より購入したくなるか否かを尋ねた結果が、以前【「社会に貢献する企業」の商品、少々高くても買う? 日本は消極姿勢】でも記した次のグラフ。青系統が肯定派、赤系統が否定派だが、どの地域も多分に肯定派が多い結果が出ている。

↑ 社会還元プログラムを実施している企業の製品やサービスを購入したいか
↑ 社会還元プログラムを実施している企業の製品やサービスを購入したいか(再録)

ただし日本は他地域と比べると、やや尻込みしている感は否めない。

それでは消費者の立場ではなく、就労者の立場として「企業市民活動」を行う企業はどのように見られているのか。まずはそのような企業で働きたいか否かを示したものだが、購入性向と同様に「全地域で好意的」「日本は多少控えめ」「新興国で強い肯定感」などの傾向が確認できる。

↑ 社会還元プログラムを実施している企業で働きたいか
↑ 社会還元プログラムを実施している企業で働きたいか

↑ 社会還元プログラムを実施している企業で働きたいか・就職希望指数(強い肯定=2・肯定=1・どちらともいえない=0・否定=-1・強い否定=-2の係数を割り振って指数を算出)
↑ 社会還元プログラムを実施している企業で働きたいか・就職希望指数(強い肯定=2・肯定=1・どちらともいえない=0・否定=-1・強い否定=-2の係数を割り振って指数を算出)

特に日本の場合「非常にそう思う」が1ケタ台でしかなく、「どちらともいえない」が過半数を超えている。就労の選択肢として「企業市民活動」の有無は大きな影響を与えていないことが分かる。裏返せば、先「「社会に貢献する企業」の商品、少々高くても買う? 日本は消極姿勢」でも触れているが、日本では企業の「企業市民活動」があまり伝えられる機会が無く、その意義を実感できないこと、さらに「たとえその企業でそのような活動に従事しても、世間一般から認識されないのでは虚しいばかり」との思惑すらあるのかもしれない。

一方、これにお金が絡んでくると、少々事情が異なってくる。

↑ 社会還元プログラムを実施している企業で働くために低めの賃金でも受け入れる
↑ 社会還元プログラムを実施している企業で働くために低めの賃金でも受け入れる

↑ 社会還元プログラムを実施している企業で働くために低めの賃金でも受け入れる・許容指数
↑ 社会還元プログラムを実施している企業で働くために低めの賃金でも受け入れる・許容指数

日本は元々就労そのものに無関心なところが強いため、低めの賃金という設定でも「どちらとも言えない」の回答率が高く、必然的に許容指数もゼロに近くなる(それでも世界平均よりは否定的)。ところが就労そのものでは日本より肯定的なヨーロッパ、ラテンアメリカ、北米では、日本以上に強い拒否反応を示している。社会的に意義がある行動と、自分自身のお金周りとは別口で判断をする、ということなのだろう。

以前の記事や今件の一つ目の項目で共通していた「新興国では先進国以上に、『企業市民活動』へ強い肯定意識を持つ」傾向だが、この項目では「中東・アフリカ・パキスタン」が許容する向きが強いのに対し、「ラテンアメリカ」では明確な拒否反応を示している。詳細な事由はレポート上には無いが、金銭が絡むと国・地域毎の事情が深くかかわってくる良い事例と考えることができよう。



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