米主要メディアにおける視聴者数の動きなど
2012/03/26 12:10
アメリカ合衆国の調査機関【Pew Research Center】は2012年3月19日にデジタルと非デジタル双方におけるアメリカでのニュースメディアの動向、そして展望に関するレポート【State of the News Media 2012】を発表した。現状と将来展望をPew Research社の調査結果、公的情報や他調査機関のデータを合わせてまとめ上げた「米デジタルニュース白書」のようなものだ。そこで先日から【タブレット機でニュースを読む人は約1割…アメリカのニュース取得状況】のように、いくつかの項目に関して抽出やグラフの再構築などを行い、現状を少しでも把握すると共に、今後の記事展開の資料構築も兼ねるようにしている。今回は主なニュース配信媒体の「勢い」を概要的に知れるデータのうち、「視聴者数」「売上」の変移を見て行くことにする。
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調査対象母集団の詳細などは2012年3月の記事【タブレット機でニュースを読む人は約1割…アメリカのニュース取得状況】などで確認してほしい。
まずは2010年から2011年における、主要ニュース媒体の視聴者数の伸び率。
↑ 媒体別ニュース部門での視聴者数変移率(米、2010-2011年)
「視聴者」では多種多様な質、企業にとってプラスの度合いの違いを考慮しないカウントとなるため、一概に多ければ良いわけではない。無料視聴者100人よりも有料会員1人の方がプラスになる、と判断するニュース媒体もある。
さて2011年は金融危機の口火が開いた2007年以降、そしてリーマンショック後の大きな動き(【アメリカの新聞広告の売上推移(2011年3Qまで・四半期単位版)】参照のこと)からはいくぶん復調を見せ、前年比ではかろうじてプラスを示す媒体が多い。しかしそのような環境下でも「雑誌」「新聞」などの紙媒体は厳しい状況がうかがえる。特に新聞はこの数年伝えられているように、(少なくとも紙媒体としては)凋落スピードが加速化するばかり。レポートでも「半年で平日版は4%、日曜版は1%読者が減った」「これでもまだ2009年から2010年の下落率と比べれば半分で済んでいる」と伝える一方、「新聞社の公式ウェブサイトには人気があり、確実に増加を見せている」との期待も寄せている。
オンラインは17%プラスと大きな伸びを示している。レポートでは「アメリカは今やデジタル時代真っ盛り。2/3以上のアメリカの大人はパソコンを持ち、44%がスマートフォンを持ち、タブレットマシン保有率は2011年夏の11%から現時点で18%にまでアップした」と伝え、デジタル経由でのニュース媒体利用のハードルが、ますます低くなる状況を説明している。
続いて「売上」。経費云々を差し引いた「利益」とはまた別物だが、経済活動の主体たる企業としては、「視聴者」以上に大切なもの。こちらも2010年から2011年にかけての伸び率。
↑ 媒体別ニュース部門での売上変移率(米、2010-2011年)
単純な視聴者数と動向がやや異なるのは、やはり収益構造の違いが大きい。紙媒体は「新聞」「雑誌」共にマイナス圏なのは仕方ないとしても、「全国局TV」や「地方局TV」までマイナス化しており、広告収益の悪化が予想される。レポートによればすべての「全国局TV」の収益が悪化しているのではなく、一部のTV局はむしろ広告収入の増加の恩恵を受けているとのこと。しかし全体的にはネガティブな局が多く、総計としてはマイナスとなってしまう。
オンラインの売上は大きく伸びており、これは検索連動広告やプレート型広告双方で健闘している。またモバイル広告でも従来テキストメッセージ型が主流だったが、2011年には検索連動広告が主流になりつつあり、またプレート型もリッチメディア広告などで伸びが確認できる。他方、広告の取得企業・サイトが上位5社で68%(2011年時点)を占めるなど、寡占化が進んでいることも懸念されている。
以上はあくまでもアメリカにおけるニュース周りのメディア動向だが、日本でもそう大きな違いは無い。多分に数年の遅れは実感できるが、そして文化やこれまでの歴史の流れを受けて少々の変化は生じるだろうが、ほぼ同じ道を歩んでいくことだろう。
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