検索エンジンによる保全履歴を元にした「個別検索結果」、米では反対派が2/3

2012/03/26 06:40

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プライバシーアメリカの調査機関【Pew Research Center】は2012年3月9日、アメリカ国内における検索エンジンの利用状況に関する調査結果を発表した。それによると調査母体内インターネット利用者の91%にあたる「検索エンジン利用経験者」においては、検索エンジンによる「利用履歴を元にした検索結果の調整」について、「検索結果の観点から」否定的な意見を持つ人が約2/3いることが分かった。肯定派は3割に留まっている。一方「プライバシーの観点」では3/4近くが反対を示しており、いずれの観点でも利用者の視点では否定的な意見を持つ人が多いことが分かる(【発表リリース】)。



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今調査は2012年1月20日から2月19日にかけて、18歳以上のアメリカ在住の人にRDD方式で選ばれた電話番号に対し、口頭調査(英語とスペイン語)で行われたもので、有効回答数は2253人。うち1352人は固定電話で、901人は携帯電話で回答した(携帯電話回答者において440人は固定電話が世帯内に無い人)。回答者のうちインターネット利用者は1729人(全体比76.7%)。統計結果は2011年分の国勢調査結果によるウェイトバックがかけられている。

検索エンジンの技術は日々進化しており、精度の向上を多くの人が実感していることは、すでに【「検索エンジンって精度上がってる?」米利用者の52%は「その通り」】で伝えた通り。そして新しい技術として提起されているのが、利用者側の各種履歴などを利用した検索。利用者の過去の検索内容やページの来訪履歴を元に、より関心度の高そうな検索結果を選んで表示するというもの(検索履歴によるカスタマイズなどと呼ばれている)。

例えばペット関連の検索をしても、過去に犬のページばかり見ていれば犬関係の、猫のページばかりをチェックしていると猫関連のページか優先的に表示される。また旅行に関係のある検索が相次いでいた場合、「ペットも一緒に泊まれるホテル」「旅行中にペットを預けてもらえる預り所」の結果の優先順位が高まるという次第(※あくまでも概念を分かりやすく説明するための事例で、必ずしもこうなるとは限らない)。便利ではあるが、同時にプライバシーの問題や、検索結果が偏りやすくなるとの懸念もある。

この手法について、検索結果の精度の観点からは2/3近い人が否定的な見解を示している。便利になるのは良いが、情報の取捨選択の点では視野が狭まるとの意見だ。

↑ 検索エンジンが利用者の検索履歴を保全し、それを今後の利用者自身の検索結果に活かすとしたら、どのような想いを抱くか(検索結果の観点)(米、検索エンジン利用者限定、2012年1-2月)
↑ 検索エンジンが利用者の検索履歴を保全し、それを今後の利用者自身の検索結果に活かすとしたら、どのような想いを抱くか(検索結果の観点)(米、検索エンジン利用者限定、2012年1-2月)

要は高級デパートで自分専属の店員とやりとりをしながら品定めをするのか、普通のスーパーのように自分で色々と探して買い物をしていくのかの違いで、「手取り足取り」では選択が制限されかねないと考えているわけだ。

これを主要世代別に見ると、高齢層・高年収層ほど強い拒否反応を示している。

↑ 検索エンジンが利用者の検索履歴を保全し、それを今後の利用者自身の検索結果に活かすとしたら、どのような想いを抱くか(検索結果の観点)(属性別)(米、検索エンジン利用者限定、2012年1-2月)
↑ 検索エンジンが利用者の検索履歴を保全し、それを今後の利用者自身の検索結果に活かすとしたら、どのような想いを抱くか(検索結果の観点)(属性別)(米、検索エンジン利用者限定、2012年1-2月)

世代別事由は慎重さや強いコントロールを受けることへの漠然とした不安、年収差事由は検索結果が自分の過去の履歴でぶれることに対する懸念からだろう。

これが検索結果ではなく、プライバシーの観点で判断が行われると、拒否感はさらに強くなる。

↑ 検索エンジンが利用者の検索履歴を保全し、それを今後の利用者自身の検索結果に活かすとしたら、どのような想いを抱くか(プライバシーの観点)(属性別)(米、検索エンジン利用者限定、2012年1-2月)
↑ 検索エンジンが利用者の検索履歴を保全し、それを今後の利用者自身の検索結果に活かすとしたら、どのような想いを抱くか(プライバシーの観点)(属性別)(米、検索エンジン利用者限定、2012年1-2月)

拒否は8ポイント上昇し、約3/4に達する。特に高齢層の拒否感は強く、8割を超える値が出ている。「検索」という行為は多分に自分自身の趣味趣向をはじめとしたプライバシーが反映されるもの。検索結果でより良いものが出るためと理解していても、その内容を用いられるのは気分が良くない人が多数に登るのが見て取れる。

日本でも昨今、ウェブ上の類似案件として「提供サービスの内容改善」と「プライバシー」を両天秤にかけるような、さらには利用者側にはメリットが(事実上)無く、「サービス提供側の間接的利益」のみが得られるような情報取得絡みの問題が相次ぎ発覚し、問題化している。個別で状況は異なるが、概してルールが画一化していないことによる「黙っていれば分からない」「線引きが無いので『ここまでは良いだろう』という一方的・独自判断」による場合が多々ある。

今後この問題は検索エンジンはもちろんだが、むしろウェブサービス全般に渡り、小さからぬ問題となるに違いない。日本では今回の調査結果と同レベルの反応が起きるか否かは不明だが、そう大きな違いは出ないものと考えた方が間違いはあるまい。



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