2000万円以上なら半数近くが「仕事をしていない」…預貯金額で変わるシニアの就労状態
2012/03/24 12:00
厚生労働省は2012年2月22日、中高年齢者に対する継続的な調査「中高年者縦断調査(中高年者の生活に関する継続調査)」の第6回調査結果を発表した。それによると60-64歳の高齢者においては、5年前の預貯金額によって現在の就労状況に大きな違いがあることが分かった。預貯金額が大きい人ほど「仕事をしていない」人の割合が大きくなる。また「会社・団体などの役員」の比率も高めとなり、会社役員などの立場にある人の多くは資産をそれなりに有し、さらに60歳を過ぎても働き続けている様子がうかがえる(【発表リリース】)。
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今調査は2005年10月末時点で50-59歳だった日本全国の男女を対象に、その時点以後継続的(毎年1回・11月第一水曜日)に同一人物を対象に行われているもの。今回第6回における対象者年齢は55-64歳、2010年11月3日に実施している。調査方法は調査票郵送・被調査者自己記入・郵送返送。回答数は2万6220人、そのうち第1回-第6回まで集計可能な2万5157人分を集計客体としている。調査母体全体では55-64歳であるが、今件項目ではその中から60-64歳の者を対象とし、集計している。
【60代前半の就業率は6割強・女性の5人に1人はパートやアルバイトに】などにもある通り、60-64歳の就労率は62.0%。1/3強は仕事に従事していない。
↑ 調査時点での就労状態(2010年11月3日、60-64歳、択一)(再録)
そして【60過ぎて働く理由、トップは「今の生活費として」】で解説した通り、仕事をする理由の多くは、生活を支えるため。
↑ 仕事をしている理由(複数回答)(2010年11月3日、60-64歳、「仕事をしている」回答者)(各属性総数が100%)(上位項目のみ)(再録)
それではあらかじめ、ある程度金銭的余力を持っていれば、働く人の割合も減るのだろうか。蓄財があるか否かを示す指標の一つとして「預貯金」に注目し、50-59歳時点での預貯金額別に、現在の就労状況を尋ねた結果が次のグラフ。預貯金額が高くなるほど、「仕事をしていない」率が上がり、「会社・団体等の役員」以外の各種就労状態が減るのが分かる。
↑ 調査時点での就労状態(2010年11月3日、60-64歳)(2005年時点(50-59歳)での預貯金額別)
今件はあくまでも「預貯金」との表記だが、定義を見ると貯金・預金以外に保険や各種有価証券なども該当する。一方で家賃収入を発生しうる不動産などは該当しない。「預貯金」は概して「換金性の高い資産」と見れば良いだろう。そして今件からはやはり預貯金額が多い人ほど「取崩しをする、手持ちの資産をうまく使いこなせば生活していけるので、働く必要は無い」と判断する人が多いことが分かる。
他の就労方法はほぼ「預貯金が増えるほど、就労率は減る」状態にある。ただし「自営業・家族従業者」は横ばい、「会社・団体等の役員」は漸増を示している。前者は「預貯金と就労の有無はあまり関係が無い」、後者は「その立場にある人ほど預貯金を積上げる余力が大きい」ことを示唆するものとなっている。
気になるのは「預貯金無し」の人が就労状態でいくぶん少ない値を示し、「仕事をしていない」率が高いこと。「預貯金は無いが不動産収入ならある」「配偶者にまかせっきり」「子供に食べさせてもらっている」の事例が考えられる。今調査母体では単独世帯(一人身)は7.5%に過ぎず、夫婦のみが約3割、三世代世帯が2割近くに及んでおり、「預貯金は無く、仕事もしていない」人でも生活は不可能で無い事は理解できるというものだ。
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