相談件数わずかに減少だが年間で12万件台…警察庁、2018年のサイバー犯罪の検挙状況などを発表
2019/03/26 10:45
警察庁は2019年3月7日、2018年中のサイバー犯罪(コンピュータ技術及び電気通信技術を悪用した犯罪。ハイテク犯罪と同義)に関する検挙状況をはじめとした脅威に関する情勢の情報を発表した。それによると2018年中に各都道府県警察の相談窓口で受理した、サイバー犯罪などに関する相談件数は12万6815件となり、前年比で3196件の減少となったことが明らかになった。前年比で迷惑メールに関する相談は4954件増え1万6465件に、詐欺・悪質商法に関する相談は8791件減少し5万8477件となった。不正アクセスに関する相談件数は前年比で1.5%増、違法・有害情報関連の相談は3.6%減となっている(【発表リリース:平成30年中におけるサイバー空間をめぐる脅威の情勢等について】)。
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今報告書によれば、2018年のネットワーク利用(サイバー)犯罪検挙数は9040件で前年比26件のプラスとなり過去最高値。各都道府県警察の相談窓口で受理した、サイバー犯罪などに関する相談件数は12万6815件となり、前年比で3196件・2.5%の減少。冒頭にもあるように迷惑メール関連の相談は増え、不正アクセス・コンピュータウイルスに関する相談も増加しており、昨今のインターネットを対象としたトラブル、犯罪の実情を表す動向を示している。
↑ サイバー犯罪などに関する相談件数(件)
↑ サイバー犯罪などに関する相談件数(前年比)(2018年)
推移グラフでは2005年以降を対象に生成したが、2006年の相談総数が前年比でマイナス27.0%と大きく減っている。これは当時の資料【平成18年のサイバー犯罪の検挙及び相談状況について、PDF】なども併せて確認すると、大きな減少を見せた項目は「ワンクリック請求を中心とする、詐欺・悪質商法」に対する相談であり、一方で警察庁の【インターネット安全・安心相談システム】へのアクセス数が急増、同サービスのうち「料金請求」項目ヘのアクセスが過半数を占めている。同サービスは2005年6月16日に運用を開始していることから、通常の相談窓口を利用する層の多くが、公知によってその存在を知ることとなった、よりハードルの低い「インターネット安全・安心相談システム」へ移行した結果といえる。
詐欺・悪質商法の件数が多いことから、その項目を別分けした上で、主要項目別に経年の相談件数変移を折れ線グラフ化すると次の通りとなる。
↑ サイバー犯罪などに関する相談状況(詐欺・悪質商法限定、件)
↑ サイバー犯罪などに関する相談状況(詐欺・悪質商法以外、件)
高齢者や若年層が被害を受けやすい架空・不当請求メールを含む詐欺・悪質商法は法整備や各種対策でこの数年漸減傾向にあったが、2013年では大きく増加に転じ、2009年とあまり変わらない水準にまで戻してしまった。以降2015年まで増加を続け、その後は高止まりを見せ、2018年でようやく減少に転じたものの、その減り方はまだ限定的。
単純な迷惑メールの件数は2013年に減少したものの、2014年では再び増加に転じ、2016年以降でようやく減少に転じた。しかし直近年の2018年では再び増加してしまう。報告書ではばらまき型による攻撃が増加していること、添付ファイルの形式としてはWord文書やExcelファイルを装ったものが増えていることなどが指摘されている。
かつて問題視されていたインターネットオークション関連の相談は、詐欺・悪質商法から別個項目分けされていることからも分かるように、社会問題化していたが、この数年は漸減。しかし2013年以降は減少にストップがかかり、以後は横ばいの動きにある。詐欺・悪質商法の増加も併せ、金銭に絡んだインターネットに関する相談(をせざるを得ない案件)が増加したことになる。より具体的、悪質な方向にインターネット関連の犯罪性向が変化する兆しなのかもしれない。
リリースでは昨今の脅威情勢について
2.仮想通貨交換業者などへの不正アクセスなどによる不正送信事犯が顕著化。認知した169件のうち108件の利用者は、ID・パスワードを他のインターネット上のサービスと同一にしていた。主な被害として、国内の仮想通貨交換業者から、2018年1月に約580億円相当、9月に約70億円相当の仮想通貨が不正に送信されたとみられる事案が発生している。
3.不正指令電磁的記録に関する罪は減少中だが68件。手口としては、サイトに接続したパソコンに不当な料金請求画面を繰り返し表示させる不正プログラムを使用したものがみられた。検挙補導された対象は10-58歳と幅広い年齢層。
4.著作権法違反の検挙件数は691件と、2017年と比べて大きく増加。
などを挙げている。
報告書では検挙事例などを挙げているが、例えば
会社員の男(39)は、2018年5月、他人のID・パスワードを使用してスマートフォン用オンラインゲームのデータ引継機能に不正アクセスし、他人のゲームデータを乗っ取った。30年11月、男を不正アクセス禁止法違反(不正アクセス行為)、私電磁的記録不正作出・同供用等で検挙した。(福島)
●著作権法違反
会社員の女(23)は、2018年1月、著作権者の許可を受けないで著作物である漫画をインターネット上で公衆送信し得るようにして、著作権を侵害した。2018年1月、女を著作権法違反で検挙した。(島根)
などのように身近なサービスに関するもの、ニュースなどで見聞きしたことがあるような話も確認できる。
今件のグラフのあくまでも「相談件数」の推移(具体例には検挙事案も挙げている)。相談に至らなくとも同様の事象が発生している可能性は多分にあり、また実際に検挙が行われた件数とも別物。とはいえ、デジタル界隈における多種多様な問題の動向を推し量るには、十分役立つデータといえる。
例えば【いわゆる「レイバンアタック」に本物のレイバンも注意喚起】などで解説した、ツイッターのアカウント乗っ取り事案や、以前大いに問題視されたLINEのアカウント乗っ取りと詐取者によるプリペイドカード購入依頼、【とりあえず楽天とAmazonとLINEのパスは変更しておいた方がよさそうだ、という話】にもある通り、主要通販サイトのアカウント・パスワードのセキュリティ問題のように、インターネット上の犯罪に係わる問題は、すでに他人事では無くなっている。
さらに昨今ではデジタルカメラ機能付きのスマートフォンの有用性・普及率を逆手に取り、カメラと連動する形で利用者の写真を撮り、あるいは撮るかのような挙動を見せ、脅しの効力を強化する事例まで登場している。インターネット上における犯罪・攻撃は、技術とともに確実に進歩している。また不正要求の手段として仮想通貨を用いるケースも増えている。
情報が単なる文字データでは無く、多様な方面で自らのプライバシー、実生活に大きな影響を与えることを利用者一人一人が十分以上に気を付けるとともに、関係各方面には一層の努力配慮を願いたいところだ。
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