医師が気にするのは「ネット上の評価」以上に「人づて口コミ」
2012/03/04 06:30
医師・医療従事者向け情報サービスサイト「ケアネット」を運営するケアネットは2012年3月2日、医師会員に対する医療広告への規制やインターネット上の口コミ評価に関する意識調査結果を発表した。それによると調査母体の医師においては、病院の情報公知の手段として医療広告やウェブサイトを利用している人は、8割近くに達していることが分かった。掲載情報としては「専門資格」がもっとも多く5割強、次いで「施設・機器・設備」「専門診療の内容」の順となっている。また、インターネット上の書き込みや口コミ評価については、気になる人が約1/3に達していたが、気にしない医師は6割強と多数派であることも分かった(【ケアネット公式サイト】)。
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今調査は2012年2月22日から24日にかけて、「ケアネット」医師会員のうち開業医に対してインターネット経由で行われたもので、有効回答数は1000人。世代構成は20代0.2%・30代4.7%・40代34.3%・50代45.3%・60代11.7%・70代以上3.8%。
ウェブサイト上での表記も含め、医療広告での掲載可能範囲については、2007年4月より施行された改正医療法にて大幅に緩和され、患者の平均待ち時間、医療機器設備・施設の写真、セカンドオピニオン対応、医師以外のスタッフの氏名などの項目が追加された。しかし、現在のところ治療の成功率・改善率、治療前後の写真や患者の体験談などの掲載は禁じられている。これは複数の医療機関のデータを比べるための客観性を保つことが難しく、医療機関を選択する患者に間違った認識を与えかねないとの考慮からのものである。
今調査では回答医師に対し、医療広告やウェブサイトを用いて自分の情報を開示しているかを尋ねているが、79.9%が何らかの情報を披露していると答えている。広告・ウェブサイトを使っていない医師は20.1%。
↑ 医療広告・ウェブサイトでの開示項目(複数回答)
今件がインターネット経由のもので、回答医師自身はそれなりにネットに精通していることが前提となるが、それでも2割強は「広告」と「インターネット」双方での情報開示をしていない。もう少し多いのではないかという点で、少々意外な気はする。
一方、具体的に開示している内容を見ると、一番多いのが「専門資格」で55.5%。次いで「施設・機器・設備」の47.0%。さらに「専門診療の内容」が41.3%、「医師の略歴」が40.8%で、ここまでが4割超の回答。それ以下は10ポイント以上下がり、「予約制の有無」「連携している医療機関」「URL・メールアドレス」までが20%以上となる。
医療広告やインターネット上での情報公開、特に後者を行うと、やはりネット上での口コミが気になるところだが、これについては「気になる」という意見を持つ医師は少数派で1/3程度でしかなかった。
↑ 「ネット上の」書き込み・口コミ評価について
「ネット上の」書き込みの内容を気にする医師はそれなりに心惑わされるところもあるが、多くは「あんまり気にしない」「別にどうでもよい」的な思いを抱いているようである。
●「業者」は医師の元にも続々と
直上で「ネット上の」とわざわざカギカッコを用いたのは、具体的な数字こそ挙げられていないが、「ネット上の書き込み内容や口コミ」よりも「本当の(リアルの、という意味)口コミ」の強力さを身を持って体験しているとの意見が、回答医師から多数見受けられることによるもの。
元々医療行為は最終的に患者自身が病院に来院しないと出来ないこともあり、医者・病院が対応できる患者は、基本的にその病院の周囲に限られる。当然地域性が強いものとなり、リアルな口コミが有効な手立てとなるのも理解はできる(コンビニやデパートのような「共通ブランド」が無く、品質が個々の病院・医師の個性によるところも大きい)。
このような状況は賛否両論あるだろうが、「患者さんの口コミが何にも勝る宣伝になると思うので一人一人の診察を丁寧に大事にしたい」「広告より診療が評価されているかが大切だと思った」など、リアルな口コミを得るには結局「口コミされるだけの良いサービスを提供していく」「診療内容や接遇態度が集患に結びついているので、それらを大切にする」という、ある意味当たり前、そして商売の上では基本かつ大切な結論に導かれている点で、非常に心強いものがある(今件は「インターネット経由」での調査という点に注意すること)。
一方、昨今話題に登った「ステマ」(ステルスマーケティング)や「やらせ」、「問題のある口コミを削除する」などの行為を有料で請け負うという勧誘があったとの意見も多数寄せられている。単なるスパムでたまたま着信したのか、それとも医療関係者であることを知った上での勧誘なのかまでは不明だが、概して回答医師からの反応は悪い。また、そのような業者の存在を自分達へのアプローチで知ったため、ネット上の口コミに対する不信感・価値の低さをますます募らせている雰囲気もある。
医療行為の結果、それに伴う感想は患者本人の主観によるところが大きく、必然的に口コミも「アク」が強いものとなる。人から人への「リアル」な口コミは、話した人・聞いた人のバックボーンも大きく影響するので、内容への裏付けも確からさに「厚み」が増す。ところがネットの場合は概してその「厚み」が得られす、感情論に走りやすくなったり、上記にある「やらせ」的なものがはびこりやすい環境が出来上がる。
医療行為は地域社会と密着性が高いという点も合わせ、リリース内でも言及されている「医療機関・医師のネット上の情報開示は、客観視できる情報、基本的項目のみで十分」という言葉も理解できるというものだ。
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