直近では婚姻率0.41%・離婚率0.147%…婚姻率・離婚率推移(1899年以降版)(最新)

2023/10/27 02:42

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2023-1012先行記事【乳児・新生児の死亡率推移(1899年以降版)】で、先日発表された人口動態調査の記録などを基に、1世紀強にわたる乳児・新生児の死亡率変移のグラフ化を行い、医療技術や生活環境の進歩を一側面から精査した。今回はそれと同じ人口動態調査の値を基に、婚姻率・離婚率の動向について、中期的な視点から確認し、状況の精査を行うことにする(【令和4年(2022)人口動態統計(確定数)の概況】)。

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高度成長期から漸減傾向の婚姻率


データの取得元やそれに関する時代背景は、先の「乳児・新生児の死亡率推移をグラフ化してみる-」と同じ。人口動態調査の各公開値を基に必要な値を算出し、グラフを作成する。また言葉の定義だが、「婚姻件数」「離婚件数」はそのまま、その年に結婚した・離婚した人の数(「結婚している人の数」ではないことに注意)。比率は「%」表記の無い限り、基本的に日本における日本人人口の1000人比。

まずは婚姻件数・婚姻率の推移。これを1899年以降継続して直近の2022年分まで、そして戦後と今世紀に限って再構築したもの、計3つをグラフ化した。

↑ 婚姻件数・婚姻率
↑ 婚姻件数・婚姻率

↑ 婚姻件数・婚姻率(戦後限定)
↑ 婚姻件数・婚姻率(戦後限定)

↑ 婚姻件数・婚姻率(今世紀限定)
↑ 婚姻件数・婚姻率(今世紀限定)

戦前は婚姻率はほぼ横ばい。人口が増加していることもあり、婚姻件数も漸増傾向を示している。そして太平洋戦争中は半ば形式的な、戦時状態を鑑みた上での見合い結婚などもあり増加。そして戦後は各種束縛から解放され、あるいは戦時下で延期していた婚姻を取り行うなどで急増(第一次結婚ブーム)、そして団塊の世代が誕生する。

以後婚姻率はしばらく横ばいを見せたあと、団塊の世代の成人化による第二次結婚ブームが起きる。同年齢階層の行動様式が同じなら、約20年後に再び第三次結婚ブームが起きるはずだが、結婚のする・しない、結婚時期の分散のため、1980年代後半以降に見られる婚姻率の上昇はさほど大きくなく、期間も分散している。結婚に対する価値観の変化も少なからず影響しているものと考えられる。

また昨今における婚姻数・婚姻率の低下は、社会的価値観の変化(見合い結婚比率の減少含む)だけでなく、経済面などにおける結婚そのものの難しさ、そして若年層人口の減少、さらに婚姻率の低下に限れば人口に占める婚姻適齢期層の比率低下が要因として挙げられる。

ちなみに直近、2022年においては婚姻件数は50万4930件、婚姻率は4.1(/1000人)である。【改元と出生数の関係への考察(推定編)】にもある通り、改元が影響したことによる増加の反動と、新型コロナウイルスの流行で婚姻機会が減ったために、2020年は前年から大幅減となったが、2021年では通常の減少ぶりに戻り、そして直近2022年ではそれら減少の反動による影響か、多少ながらも増加している。

寿命増加か社会観の変化か、漸増していた離婚率


一方離婚率は婚姻率とはやや異なる動きを見せる。

↑ 離婚件数・離婚率</i>
↑ 離婚件数・離婚率

↑ 離婚件数・離婚率(戦後限定)
↑ 離婚件数・離婚率(戦後限定)

↑ 離婚件数・離婚率(今世紀限定)
↑ 離婚件数・離婚率(今世紀限定)

19世紀末の離婚率が比較的高く、太平洋戦争の終戦に向けて漸減しているのが意外に思える人も多いだろう。これは江戸から明治に時代が変わり、さまざまな法令が定められ、その中の家制度(1898年制定の民法で規定された家族制度)の概念が浸透していったことが原因。見方を変えれば、江戸時代は離婚に関してもある程度緩やかな考えだったことが分かる。

太平洋戦争が終わると、婚姻率の上昇と合わせる形で離婚率も上昇したあと、1960年代までは漸減。その後ゆっくりと上昇に転じる。1980年代後半には婚姻数・率の減少に影響される形でやや凹みを見せるも、上昇を再開。2000年代初頭にピークを迎えた後は、婚姻率の低下に連動する形で、再び漸減傾向を見せている(婚姻しなければ離婚はできない。離婚率は「人口比」のため、婚姻している人が少なくなれば離婚の可能性も少なくなる)。

ちなみに直近2022年における離婚件数は17万9099件、離婚率は1.47(/1000人)である。

「離婚件数/結婚件数」の掲載を取りやめた理由


離婚件数と結婚件数の推移を精査したよい機会でもあり、ややトリビア的な話を。定期的に更新している【日本の婚姻率・離婚率・初婚年齢の推移】などにおいて、以前の更新記事では「離婚件数/結婚件数(結婚件数に対し離婚件数がどれだけ多いか)」を掲載していたが、現在では取り止めている。これは平均寿命の伸び、初婚年齢の上昇、結婚や離婚に対する意識の変化などを受け、「婚姻件数」と「離婚件数」、言い換えれば「婚姻率」と「離婚率」の連動性が低下しているからに他ならない。

同居期間別にみた離婚の構成割合の年次推移
↑ 同居期間別にみた離婚の構成割合の年次推移(【平成21年度「離婚に関する統計」の概況(厚生労働省)】から抜粋)

特に上のグラフにある通り、価値観の変化を受け、20年以上同居した夫婦の離婚率が増加している。これが離婚率上昇の一因ともいえる。この「離婚に関する統計」は10年おきに統計が取られているようで、直近となる2020年に実施された調査結果(【令和4年度 離婚に関する統計の概況】)でも、同様の結果が出ている。報告書にも「同居期間が「20年以上」の割合は、昭和25年以降、上昇傾向にあり、令和2年には21.5%となっている」との特記事項があるほどだ。



婚姻率や離婚率は少子化、高齢化社会、さらには単身世帯に絡むさまざまな問題とも浅からぬ関係を有している。100余年にわたる変移の中で、どのような社会・周辺環境が影響を及ぼしあっていた・いるのか。今後の動向を推測し、対策を練るのにも、今件のような時系列データは必要不可欠となる。細かい部分はともかく、大まかな流れだけでも覚えておくことをお勧めしたい。


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