被災地で望まれる優先事項、「雇用」「原発事故関連の収束」そして「住宅」
2012/02/12 06:40
【セルコホーム】は2012年1月30日、東日本大地震・震災の被災地における、生活や防災に関する意識調査結果を発表した。それによると調査母体において、今後被災地の復興に関して優先順位を挙げてほしい・先行して対策をしてほしい事柄の最上位には「雇用」がついた。全体の8割近くが同意を示している。次いで「原発事故関連の収束」「住宅」が続いている。男女別では女性は多くの項目で男性以上に強い要望を抱き、特に精神的な面でのサポートを求めていることがうかがえる(【発表リリース】)。
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今調査は2012年1月6日から11日にかけて、青森県・岩手県・宮城県・福島県・茨城県在住の15-69歳の男女に対して携帯電話を用いたインターネット調査によって行われたもので、有効回答数は2000人。男女比は1対1、年齢階層比は男性15-19歳223名・20代262名・30代265名・40代以上250名、女性15-19歳238名・20代268名・30代266名・40代以上228名。調査実施機関はネットエイジア。
「千年に一度」との表現すら行われることもある規模の地震・震災であったことや、復旧指示の管理統括をする行政機関そのものが押し流された場所も多く、組織の再構築からスタートしなければならない場面もあること、戦略的な視点から指揮すべき上層行政機関がその役割を果たしていない面が多いなどの問題点から、「震災」による被災地の復興は決して順調とはいえない。今項目ではこれから被災地の復興を成すにあたり、何を優先すべきかについて聞いているが、最上位には「雇用」がついた。全体の8割近く、78.8%の人が「雇用問題を早期解決してほしい」と望んでいる。
↑ 「これからの被災地の復興」で何を優先すべきか(複数回答)
この傾向は昨年11月に連合が公開した、被災地での意識調査の結果(【雇用周りで被災三県が望むこと、正規で長期安定的な雇用の確保】)でも描かれている。安定かつ正当な条件における雇用の、必要な分だけの確保こそが、地域の総合的な安定と復興への最短距離となることを、被災地自身が十分以上に認識している。
第二位の「原発事故関連の収束」は事象が現在もなお進行中であること、特に国周りの対応が後手後手に回っていること、情報の錯綜やそれに乗じた二次的被害が収まりを見せないことなど、優先すべきと判断する材料には事欠かない。直接的な影響は当然だが、間接的な影響が多分に、そして余分に存在・増加していることに、現地、あるいは周辺地域でも苦々しさを覚える部分もあろう。
第三位は先に【「住まい」の重要度アップ8割弱、家族間のつながり強化6割…被災地の震災後の生活スタイルの変化】などても触れている、生活、そして家族とのコミュニケーションの基軸となる「住まい」を意味する「住宅」。そして(物理的な形として出にくいがため)あまり報じられていないが、深刻な問題となりつつある「メンタルケア」が続いている。
これを男女別に見ると、総じて女性の回答率が高い。復興に関する不安、その不安を解消するための手立てへの、強い想いが確認できる。
↑ 「これからの被災地の復興」で何を優先すべきか(複数回答)(男女別)
これは【震災後の不安要素、最上位は「福島原発」】など震災絡みの数多くの調査結果からも明らかにされている傾向で、全般的に女性の方が男性よりも心理的に不安を覚える傾向が強く、その状態からの回復を望む意志も強いことが分かる。特に「メンタルケア」への回答率が極めて高く、女性に限れば「雇用」に次ぎ第2位についている点に着目したい。
さらに男女に加え、それぞれに「就業状態にある」の条件を加味した区分を再集計した結果を反映したのが次のグラフ。単なる「男性」「女性」は「非就業」を意味しないので注意。
↑ 「これからの被災地の復興」で何を優先すべきか(複数回答)(男女就業別)
お金周りで大きな影響がある「雇用」「被災者の二重ローン救済」「産業」の点で、個々の性別全体よりも、就業者の方が高い値が出ている。自らに直結しうる事でもあり、切実な問題であるのが分かる。
働く場があれば給金を得られ、生活を安定させることができる。また地元でその給金から支払いが行われれば、当然地域社会・経済の活性化にもつながる。短期間では無く、中長期の雇用確保は、働き手本人だけでなく、その家族、そして住まう地域全体を安定させる役割を果たす。「安定的な雇用」が「経済、地域社会の安定」につながり、日常生活の根幹を成す以上、多くの人が「雇用」への対策を切実に望んでいるのは当然といえる。
以前からの繰り返しになるが、このような状況下の場合、被災地「外」からのリソースを大量に投入すると同時に、明確で正しい見通しが立つ健全な指針(計画そのものの促進意欲と、現場での「夢」による士気向上が期待できる)と、責任を伴う強力な指導力が必要になる。それらを元に経済を、事業を興し、雇用を確保し、地域社会全体を復興させねばならない。
しかし現状では用意されたリソースは十分とはいえず、それらですら有効活用はあまり成されていない。現地での雇用の確保供給は、地域の復興・活性化を相乗効果的に生み出すことを、改めて認識してほしいものだ。
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