今世紀の雑誌販売動向(「出版月報」編)(2014年)(最新)
2014/03/18 11:30
総務省統計局が収録、公開している各種データのうち、【総合統計データ月報】を基に出版業界の動向を推し量ることが出来る値についてグラフ化を行い、状況判断を試みる記事として、先に【今世紀の書籍販売動向】で書籍版を展開した。今回はそれに続く形で、雑誌について状況の確認をしていくことにする。
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月刊誌……少しずつ、しかし確実に
「総合統計データ月報」に収録されているのは、「月刊誌」「週刊誌」の2種類のみ。【文言の定義解説ページ】で確認すると、
・週刊誌:週1回定期刊行される雑誌。
とある。「月刊誌」の項目は実質的に「週刊誌以外の雑誌」と見なしてよい。
まずは月刊誌。販売部数(実際に売れた部数)と販売金額をグラフ化したのが次の図。書籍が「販売部数は2009年以降減少」「販売金額は2007年から減少」と、直近の不景気の動きに合わせて値を減らしているのに対し、雑誌は少なくとも今世紀に入ってからは継続的に部数・金額共に減少しているのが確認できる。
↑ 月刊誌販売動向(推定)(-2011年)(出版月報)
下降カーブがキツくなる2005年-2006年は、インターネットや携帯電話などのデジタルメディアが本格的に普及し始める時期と一致している。他に要因を見つけにくいこともあり、これらの台頭が、雑誌の販売動向に影響を与えたこと自体は間違いなさそう(少なくとも相関関係はある)。それと同時に、元々雑誌は市場規模が減少していくさなかであったことも再確認できる。
「今世紀に入ってから雑誌市場は縮小化」がよく分かるのが次のグラフ。販売部数を発行部数(売れた部数では無く、刷った部数)で割った「推定販売率」と、1誌あたりの推定販売部数の動きを示したもの。後者は実質計算値をそのまま載せると雑多になるので、公開されている中では一番古い計測値の2001年のものを基準値1.00とし、再計算している。
↑ 月刊誌推定販売率
↑ 1誌あたり推定販売部数(月刊誌)(2001年の値を1.00とした時)
「推定販売数」とは、要は「刷った雑誌に対してどれだけ売れたか」。返本して再配送などもあるので、おおよそではあるが、100%からこの値を引いたものが、いわゆる「返本率」になる。2008年が最低の63.3%を示し、それ以降はやや回復して2010年では64.7%をつけた。しかし2011年では再び下落してしまっている。直近の2011年では63.9%。単純試算だが、月刊誌の1/3強は売れずに返本される。週刊誌と比べれば専門誌・業界誌が多い状況としては、やや厳しい値。
一方で一誌あたりの販売部数は、不景気云々を問わず、継続的に漸減。2011年の月刊誌の平均販売部数は、2001時年の2/3強ほどでしかない。
週刊誌……ダイナミックに、ワイルドに下落
週刊誌は月刊誌と比べ、さらに厳しい状況にある。
↑ 週刊誌販売動向(推定)(-2011年)(出版月報)
2002-2003年時の不況や2007年夏以降の金融不況とは関係なく、一方的に減少しているのは月刊誌と変わらず。しかし下げ方のカーブ、特に販売部数の下がり方が尋常でないのは一目瞭然。2001年から2011年の間に、販売金額は38%、部数にいたっては48%もの下落ぶりを見せている。また、販売部数の下げ率に比べ、販売金額の下げが大人しい動きから、雑誌が平均的には値上げで売上の減退を、少しでも補おうとしていたことが推測できる。
続いて月刊誌と同様に、販売部数を発行部数で割った「推定販売率」と、1誌あたりの推定販売部数の動きを示したもの。後者は実質計算値をそのまま載せると雑多になるので、こちらも一番古い計測値である2001年のものを基準値1.00としたものを再計算している。
↑ 週刊誌推定販売率
↑ 1誌あたり推定販売部数(週刊誌)(2001年の値を1.00とした時)
販売率の低下、表現の切り口を変えれば返本率の増加は、21世紀中はずっと継続中。直近の不景気における大きな下げ幅からはこの1、2年やや戻しを見せているが、そして月刊誌と比べればややマシなものの、それでも3割近くが売れない計算になる。
もっとも驚くべきなのは平均販売部数推移。2005-2006年の景気回復期には幾分戻しているが、全体的には下げる一方。2001年から2011年までの間に、5割近くも落ちてしまっている(ちなみに発行種類数は100前後で2001-2011年の間はほぼ変わらず)。「あくまでも平均で」ということだが、それでも雑誌の販売数がここまで急速に落ち込んでいる結果を見ると、週刊誌の需要が急速に低下していることを再認識させられてしまう。
雑誌の販売動向は四半期単位で印刷証明付き部数について【定期更新記事:雑誌印刷証明付部数動向(日本雑誌協会)】などで追いかけているが、やはり厳しい状況にある。今件はそれを裏付けた形となる。
今回の元データ「総合統計データ月報」は名前の通り月次データが毎月、年次が年一回のペースで更新されていた。しかしながら書籍版の解説記事で伝えた通り、「総合統計データ月報」が2012年3月付でデータの更新を終了してしまったため、2012年以降の数字を追いかける事が不可能な状態にある。震災以降の出版業界の大きな変動の精査が公的機関発の公開データで出来ないのは、極めて残念でならない。
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