70年近くにわたる雑誌の販売間隔別出版点数動向(最新)
2023/12/28 04:53
総務省統計局が独自調査や他省庁、民間などによる調査結果をもとに収集した数々の統計データのうち、年単位で更新される【日本統計年鑑】内で提供されている出版関連データ(「出版・マスコミュニケーション」の項目)を基に、出版業界などの中期的な動向を推し量り、今後の状況推測を行っている。今回は戦後における雑誌の販売間隔(月刊、週刊、季刊など)別出版点数の、中期的な動向を見ていくことにする。
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雑誌の出版点数(部数ではないことに注意)は直近では、2005年をピークに低迷を続けている。この時期以降の動向は、「日本統計年鑑」同様に年ベースでデータ更新が行われ出版されている、日本出版販売の「出版物販売額の実態」をベースにした記事(【定期更新記事:出版物販売額の実態(日販)】)でも分析している。
↑ 出版物分類別売上(推計、億円)(再録)
それでは雑誌の発売間隔(月刊や季刊、隔週刊など、定期発刊雑誌の発売時期)別に区分した場合、どのペースで発売している雑誌が(種類数的に)多いのだろうか。それを知るために、積上げグラフと各項目別の折れ線グラフで示したのが次の図。
なお先行記事【戦後の雑誌と書籍の発行点数(「出版年鑑」など編)(最新)】で解説の通り、日本統計年鑑では2020年版(2019年発行)以降、該当データの参照資料が従来の出版ニュース社「出版年鑑」から、公益社団法人全国出版協会・出版科学研究所の「出版指標年報」に変わってしまった。これは出版ニュース社発行の「出版年鑑」が2018年版で休刊になったことによるもの。従って2015年分以降のデータ(「出版指標年報」が取得元でもっとも古いのが2015年分)は「出版指標年報」の値がベースとなっている。2014年分までと2015年分以降との間には連続性は無いか、この際仕方がない。
実際データを参照すると2014年分と2015年分との間では大きな開きがあり、カウント方法が異なっていることが推測される。「総数」「月刊」「隔月」「季刊」が大きく減り、「その他」が増えている。また「旬刊」(10日おきの発売)は項目そのものが無くなっているため値はゼロとして扱うことになる。グラフでは2014年と2015年との間にイレギュラーな動きが多々見られるが、これはデータ取得元の変更によるもので、該当ジャンルに大きな変化があったわけではないことに注意されたい。また「その他」には「隔週」や「不定期」などが該当する。
↑ 雑誌出版点数(「出版年鑑」ベース・2015年以降は「出版指標年報」ベース、発売間隔別)(積み上げグラフ)
↑ 雑誌出版点数(「出版年鑑」ベース・2015年以降は「出版指標年報」ベース、発売間隔別)(2001年以降)(積み上げグラフ)
↑ 雑誌出版点数(「出版年鑑」ベース・2015年以降は「出版指標年報」ベース、発売間隔別)
↑ 雑誌出版点数(「出版指標年報」ベース、発売間隔別)(2022年)
コンビニの雑誌コーナーでは週刊誌が売り場面積の多くを占めているが、雑誌全体数に対する割合では、月刊誌が圧倒的多数なのが分かる(種類数であり、発行部数・印刷部数ではないことに注意)。専門誌、業界関係誌の多数が月刊ペースでの発売なのを思い返せば、当然の結果といえる。
全体的な経年の流れとしては1960年代前半に大きな飛躍があり、その後はやや失速の後に漸増。そして20世紀末にピークを迎え、2004-2005年以降は漸減状態にある。月刊誌だけに限れば、ピークは1990年代後半に到達、以後は規模の縮小を継続中。
1960年代の「跳ね上がるような伸び」だが、【新刊書籍・雑誌出版点数や返本率推移】内で取り上げた「日本雑誌協会 日本書籍出版協会 50年史」内に次のような言及がある。
要は1960年代の伸びは、1940年代末期に到来した出版ブームに続く、戦後第二期の出版ブームの結果といえる。現在でも継続して販売されている大手雑誌が相次いで創刊されたのもこの時期で、いかに勢いがあったかがうかがえる。
なおこれらの発売間隔別の動きのうち、月刊誌があまりにも多数を占めて他の発売間隔の動きが分かりにくくなっているために、月刊誌と「その他」を除いて再構築し、他の発売間隔の動向を確認できるようにしたのが次のグラフ。
↑ 雑誌出版点数(「出版年鑑」ベース・2015年以降は「出版指標年報」ベース、月刊誌と「その他」以外、発売間隔別)(折れ線グラフ)
隔月刊誌は漸増中だったが2006-2007年をピークに失速、季刊誌は1980年代で頭打ち。週刊誌や月2回刊誌は20世紀末で頭打ちとなり、以後は横ばいから漸減。旬刊は1970年代以降は少しずつ減少の傾向を継続しているのが分かる(2014年分でデータは途切れているが)。
今件データは2022年までのものだが、「出版指標年報」がデータの取得元となった2015年分以降に限っても、どの発売間隔区分もあまり調子はよくない。また昨今の雑誌休刊ラッシュから、この「調子低迷感」が2022年も続いていることは容易に想像ができよう。
今件データで注意してほしいのは、あくまでも「出版点数」であり、「印刷証明部数」や「販売部数」ではない点。雑誌の点数が増えても1点あたりの販売数が伸び悩んだのでは、業界の拡大とは言えない。
コンビニからの雑誌の撤収や規模縮小、交通機関での時間潰しの役割をスマートフォンに奪われるなど、雑誌業界は出版業界全体の中でもひときわ厳しい状態にある。その動向に関しては、ややタイミングが遅れる形になるが今件「日本統計年鑑」と、「出版物販売額の実態」から、随時見て行くことにしよう。
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