ピークは1997年…戦中からの新聞の発行部数動向(最新)
2024/01/17 02:48
先に【新聞の発行部数動向(最新)】で社団法人 日本新聞協会発表による1997年以降の日本国内における新聞発行部数の動向を精査した。それより以前の値について、総務省統計局に収録されている【日本の長期統計系列】や【日本統計年鑑】から、1942年以降の各値を取得することができた。そこですでに入手している値と併せ、1942年から2023年まで連なる形によるグラフを構成し、中長期的な動向を精査することにした。
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まずは新聞発行部数。朝刊と夕刊をともに取っている家庭においてはそれを併せて「1部」として換算している件は、先行記事と変わらない。また総務省統計局発のデータと日本新聞協会を比較したところ、前者はスポーツ紙込みでカウントしていることが確認できたので、スポーツ紙と一般紙を合わせたものとしてグラフを構築する。
↑ 新聞発行部数(種類別、万部)(積み上げグラフ)
戦中から終戦にかけて、情報統制や紙そのものの不足などで新聞発行部数は漸減。戦後は一転して順調な伸びを見せている。1956年に総数が一度大きく減るが、集計方法の変更(1956年以降は「朝夕刊セット」の場合は1部とカウントしている。それ以前はそれぞれ別途に数えていたものと思われる)によるところが大きい。
ともあれ新聞の発行部数は順調な伸びを見せたものの、1980年代後半から成長率は鈍化。1997年(奇しくも定期更新記事のデータでは、一番古い年数)にピークを迎えた後、漸減を続けている。グラフの色合いから見て分かるように、特に「朝夕刊セット」の部数の減り方が激しい。
この動きをもう少し分かりやすくするため、「朝夕刊のみ」「朝刊」「夕刊」それぞれについて、折れ線グラフで示したのが次の図。
↑ 新聞発行部数(種類別、万部)(各項目折れ線グラフ)
1956年の大きな動きは直上で説明した通り、カウント方法の変更によるもの。それ以外では「夕刊のみ」が1980年代前半から早くも漸減、「朝夕刊セット」が1990年にピークを迎え、後は減少を続ける一方。「朝刊のみ」は引き続き伸びていることから、夕刊の存在意義が薄れ、対価価値が疑問視されてきたのがこの時期(1990年代)と推定される。
「朝刊のみ」の伸びも1990年代後半には緩やかなものとなり、後半になるとほぼ横ばい。それでもわずかながらずつプラスを続けていたものの、2008-2009年にはピークを迎え、以降は漸減傾向を見せる。
日本の人口は漸減を続けているが、世帯数は増加の一途をたどっている。そして新聞は世帯単位で購買する事例が圧倒的多数を占めている。「人口が減っているので購買数も減る」との説明は、新聞発行部数減少を説明するには、言葉が足りない。そして夕刊は急速に部数を減らしているが、朝刊はまだ本格的な減少には至っていないことから(朝刊だけでも新聞購読であり、購読世帯が新聞を必要としている事実には違いない)、「新聞全体としての発行部数の観点からの勢い(≒「新聞そのものがいる・いらない」で「いる」の声の大きさ)は、20世紀末にはアクセルを緩めた程度」「21世紀に入ってからはほぼ惰性状態」「(朝刊がピークを迎えた)2009年以降は漸減」と見ることができよう。ただしこの数年は減少度合いが加速化している感があるのは気になるところ。
今後は「朝刊のみ」の世帯の動き、具体的には新聞そのものからの離反世帯の動向に注目したい。ここ数年の減少度合いは急降下の様相を呈している。引き続き年ベースでの発表値を精査していきたい。
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