雑誌2482点・書籍6万6885点、いずれも漸減中…戦後の雑誌と書籍の発行点数(「出版年鑑」など編)(最新)
2023/12/28 04:19
当サイトでは出版業界の動向に関して、毎年日本出版販売が発行している「出版物販売額の実態」をベースに継続分析を行っている。それとは別に総務省統計局の「日本の長期統計系列」「日本統計年鑑」でも、日本の出版事情を推し量れる公開値を得ることができた。そこで何回かに分け、その値を基に日本の出版業界動向を見ていくことにする。今回は「戦後における雑誌と書籍の発行点数の推移」の確認を行う。
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掲載場所は総務省統計局。まずは過去の長期時系列データだが、これは【日本の長期統計系列】内の「第26章 文化・レジャー」内に、出版ニュース社「出版年鑑」から取得した値として、1945-2005年までの書籍・雑誌の発行点数や平均単価、総発行部数、実発行部数、実売上などが掲載されている(金額など一部は2000年まで)。残念ながら「日本の長期統計系列」は2012年3月で更新作業を終了、現在では公開も終了してしまったので、今後のデータ追加は望めない。
2005年分以降は、今回スポットライトを当てたもう一つの資料【日本統計年鑑】を用いる。ここでは同様に出版ニュース社「出版年鑑」から取得した値を確認できるのだが、発行点数「のみ」で、残念ながら実売額・発行部数などは一切未掲載。
歴史的な動向を知るには2005年までのものでも十分なのだが、今後のことを考えると、むしろインターネットや携帯電話が普及し始める2005年以降も含めた、継続的なデータによるグラフが精査の上では望ましい。そこで雑誌と書籍の発行点数のみを検証対象とすることにした。
しかし日本統計年鑑では2020年版(2019年発行)から該当データの参照資料が公益社団法人全国出版協会・出版科学研究所の「出版指標年報」に代わってしまった。これは出版ニュース社発行の「出版年鑑」が2018年版で休刊になったことによるもの。従って2015年分以降のデータ(「出版指標年報」が取得元でもっとも古いのが2015年分)は「出版指標年報」の値がベースとなっている。2014年分までと2015年分以降との間には連続性は無いが、この際仕方がない(実際データを参照すると2014年分と2015年分との間では大きな開きがあり、カウント方法が異なっていることが推測される)。
↑ 雑雑誌出版点数(「出版年鑑」ベース・2015年以降は「出版指標年報」ベース)
↑ 雑誌出版点数(「出版年鑑」ベース・2015年以降は「出版指標年報」ベース)(2001年以降)
↑ 書籍出版点数(「出版年鑑」ベース・2015年以降は「出版指標年報」ベース)
↑ 書籍出版点数(「出版年鑑」ベース・2015年以降は「出版指標年報」ベース)(2001年以降)
雑誌は最近では2005年(4581点)をピークに減少。書籍は2005年以降はやや落ち込みを見せたものの、2008年以降は堅調な流れだった。しかし2013年がピークで、その後は減少に転じている。「出版不況が書籍にも到来した」とは表現が安易だが、数字として落ちているのは事実であり、注目に値する。
グラフ全体を見直して目にとまるのは、1947-1948年における大きな伸び。特に雑誌は1947年に直近2021年の2倍を超える、7249点もの雑誌が出版されている。これについては【新刊書籍・雑誌出版点数や返本率推移】内で取り上げた「日本雑誌協会 日本書籍出版協会 50年史」内に次のような言及がある。
終戦で各種統制が解除されて、出版が比較的自由にできるようになり、また書物の需要も急増するに伴い、1940年代後半には未曾有の出版ブームが到来している。「人びとは活字に飢えていたので、出版物であればなんでも売れるといわれるような状況が生まれ」、その結果が数字となって表れている。まるで任天堂の家庭用据置型ゲーム機・ファミリーコンピュータの展開当初における、ゲームタイトルの販売時期と同じ状況である。上記グラフにおける雑誌・書籍の急増も、これを反映したものとなる。
雑誌は2005年をピークに減少を続けている。直近の2022年分でも減少の動きは止まっていない。書籍は上記にある通り漸増する挙動を見せていたが、2014年以降では下落に転じている。
雑誌や書籍のような、印刷出版物界隈は、電子書籍の浸透、デジタル配信の一般化でその相対的社会価値観がゆらぐ一方、販売ルートとして重要視されながらも敬遠化が進んでいたコンビニで、その存在意義の見直しの動きが見られるなど、多様な環境変化が見受けられる。新型コロナウイルスの流行という社会の大きな変化に、雑誌や書籍の出版がどのような影響を受けたのかも気になるところではある。
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